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夢の……!
しおりを挟むノィユは、夢かもと思ってた。
ご飯のために結ばれることになった伴侶が、理想を遥かに超えてくるなんて。
夢としか思えない。
なのに起きたら
「おはよう、ノィユ。よく、眠れた?」
輝くようなかんばせでヴィルが微笑んでくれるだなんて
しかも、あったかい抱っこつき!
さらに、腕枕!
夢の腕枕!
「きゃ──!」
燃える頬を押さえて歓喜の声をあげたら、ヴィルが跳びあがる。
「ノィユ!?」
「ご、ごめん、ヴィルがあまりにもかっこよくて」
もじもじ告げたら、真っ赤になったヴィルが、おっきな掌でちっちゃな顔を覆った。
「……ノィユが、朝から、かわいー」
もごもご呟いてくれるのが、幻聴としか思えない──!
ロダが用意してくれた朝ご飯は、ふかふかのパンと新鮮な野菜サラダ、ふわふわのオムレツに、鳥っぽいあっさりしてそうなお肉を蒸したのだった。
「朝から、お肉──!」
両親が泣いてる。
ノィユも一緒に泣いた。
ヴィルもロダも、とてつもなく可哀想な子を見る目をしてる。
「ふかふかだよ──!」
「カビが生えてないよ──!」
ロダもヴィルも、痛ましいものを見る目をしてる。
「はうー、ふかふか……!」
このパンに顔をうずめたい……!
「はむ」
もぐもぐもぐもぐもぐ。
ふかふか……!
歯がパンに刺さるよ。
刺さった瞬間に硬いパンが砕けたりしない。
ボソボソしてない。
カビの味がしない!
し、しあわせすぎる……!
泣いちゃったノィユの頭を、ヴィルのごつごつのおっきな手が、なでなでなでなでしてくれた。
「晩ご飯に朝ご飯にお肉とふかふかまでご馳走になって、もうなんとお礼を申しあげたらいいのか──!」
おかあさんが泣いてる。
「御恩は一生忘れません──!」
おとうさんが泣いてる。
「ではわたくしどもはこれで、お暇を──」
「ノィユ、がんばるんだよ! 掴んで離さないように!」
「はい!」
両親と固く握手をしてたら、後ろから声が掛かる。
「……いや……あの……帰ったら、またご飯が、食べられなく、なるんじゃ……」
ヴィルの心配そうな声に、両親は胸を張った。
「いえ、草のスープがありますので!」
「カビの生えたのや、腐りかけの品をゴミにするところを、おやさしい店主が恵んでくださるので!」
にこにこする両親に、ロダもヴィルも泣きそうになってる。
「さいわい砦は広く、お住まいになるお部屋はございます。ノィユさまはまだ幼くていらっしゃいます、ご両親とご一緒のほうが安心なさるでしょう。こちらでお住まいになる許可を、伴侶認可とともに申請してはいかがでしょう? 離れた地からでも、領地の統治はできますので」
ロダの言葉に、両親が目を瞠る。
「よ、よろしいのですか……?」
「そ、そんな夢のようなお話が……!?」
「ご両親さえ、よければ。食べるくらいなら、できる」
はにかむようにヴィルの唇がほころんだ。
「……天使さまだ──!」
「天使さまがいらっしゃる──!」
跪いた両親が拝んでる。
ノィユも一緒に拝んだ。
「ヴィル、天使──! ありがとう……!」
ぱふりと抱きついたら、ふわふわ赤い頬で笑ってくれる。
「もとから、そのつもり、だった」
「天使さまだ──!」
両親が号泣してる。
一緒に泣いてしまったノィユを抱っこしてくれたヴィルが、皆の頭をなでなでしてくれた。
真っ赤になった両親が、あわあわ頭を下げてる。
ふうわり微笑んでくれるヴィルが、天使だ!
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