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大っきらい……?

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 ふるえる俺の手を、ディゼの手が引いた。

 ぼふりと、ディゼの腕のなかに倒れ込む。


「よく、わかんねーんだけど。
 リユィのなかには、別の世界で暮らした記憶があって、その記憶が蘇ったから、別の魔族みたいになったってこと?」

 俺は、こくりと頷いた。

 さすがディー。
 優秀だ。


「別の世界にも、俺がいた?」

 俺は頷く。


「ゲームって言ってね、シナリオが決まってて、ディーとの会話で、ディーのこのみの通りに選んでゆくと、ディーと仲良くなれたり、えっちしたりできる」

「はあ!?」

 仰け反るディーに、俺は笑う。


「ディーは、画面の向こうにいるんだ。
 ええと、お伽噺のなかの人、みたいな感じ。
 だから、実際にえっちしたり、触ったりはできないけど。
 めちゃくちゃかっこよくて、やさしくて、可愛くて、大すきだった」


「過去形かよ」

 ぶっすりふくれるディゼに、目を見開いた俺は、きらわれていることも忘れて、とろけて笑った。


「今も、大すき」

 緋色の瞳が、見開かれて、止まる。

 ディゼの尖った耳の先まで、真っ赤になった。


「その顔、反則だろ……」

 つぶやくディゼに、首を傾げる。


「ぶさいく?」

「な……っ!
 か、……っわいー……んだよ…………!!」


 抱きしめられて、息が止まった。


 ディゼの胸に、俺の耳があたる。
 とくとく、ディゼの鼓動の音が、俺の肌を揺らす。


「…………大きらいな俺を、たすけてくれて、ありがとう」


 そっと、ディゼの胸に、熱い頬を押しあてて、ささやいた。



 ディゼの腕が、抱きしめてくれる。

 ぎゅうぎゅう、大きらいな俺を、抱きしめてくれる。



「…………最初、見た時、何だこのかわいーの、と思った。
 俺にひっついて離れないのも、俺と離れると泣くのも、すげー、可愛かった。
 おっきくなって、喋るようになっても、俺にべったりで。
 わがままも、俺にひっつきたいって、そればっかだし。
 めちゃくちゃ、可愛かった」

「…………えぇ!?」

 仰け反る俺を、ディゼの腕が押し込める。

 ディゼの胸に顔を埋めた俺は、燃える頬を、押しつけた。

 ディゼの香りが、胸に満ちる。
 とろけてしまいそうな香りのなかで、ディゼの鼓動が、指先まで響いてく。


「ちゅうしろとか、成人になったから尻いじれとか、ねだる癖に、嵌めろとは言わねえし。
 折角俺が魔界から来てやったのに、帰っていいとか言うし。
 俺のこと、掴んで離さなかった癖に、突然、もういいとか言うし。
 即行で、顔のいい王子たらし込んでるし。
 回されようとしてんのに、ギリギリまで俺の名前呼ばねえし」


 ぎゅうぎゅう、俺を抱きしめるディゼの尖った耳の先が、ほんのり赤い。



「そーゆーリユィは、大っきらい」


 俺は、ぽかんと、口を開けた。


「…………だ、だって、最初から、大っきらいって……」


「俺は魔族でも特等の力を誇るんだ!
 なのに俺の最大の任務は、お前をくっつけて、お前の求めに応じて、ちゅうすることなんだぞ!?
 ふざけんな!!」


「ご、ごめんなさい!!」

 あわあわ謝る俺の髪に、ディゼがちいさな顔をうずめる。


「って、思ってるのに。
 …………リユィの可愛さに、めろめろになって。
 リユィくっつけて、リユィにちゅうできたら、後は何でもいーな、と思う俺が、一番きらい」









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