上 下
153 / 179

物理系魔法少女、これはアカツキクオリティ?

しおりを挟む
 鉱山を移動していると、それっぽい鉱石を発見した。

 「これで間違いないと思いますわ」

 「これで一歩、この後は極わずかの運って事だね。ロックドレイク、出ると良いなぁ」

 『ここまでは順調、さぁアカツキクオリティはどうなる?』
 『ロックドレイクじゃなくてアンデッドだったりしてな』
 『アカツキならまじでありえる』

 『身体が金属のスケルトンとか? 反射攻撃あるなら厄介そう』
 『骨だけなら軽い可能性もあるから、落下攻撃は難しい?』
 『投げ技で十分だろう』

 『いやいや。魔法を使うタイプのロックドレイクたろ』
 『魔法を跳ね返して倒すの、最近見てねぇや』
 『そろそろ魔法を使ってもええんやで、もちろん敵さんがな?』

 『期待を裏切るのもアカツキさんだから』
 『とりあえず周囲を探索して、いなさそうなら移動だな』
 『何も無いってのも普通にありえるんたよなぁ』

 ホログラム映像として流れるコメントを凝視しているシロエさん。

 「どうしたの?」

 「いえ。信用されているなっと」

 「煽りかな?」

 これらのコメントを見て、一体何を信用されていると言うのだろうか?

 魔法を使うロックドレイクは普通にありえるかもしれないし、何も無いもありえる。

 だが、アンデッドは無いだろ。まじでさ。

 どれだけ俺とアンデッドはセットのように結びつけたいんだよ。

 しかも、それを確信して前提のコメントばかりだ。

 「信用されておりますわね」

 「押し通すな」

 「バレました?」

 てへって感じで舌を少しだけ出す。

 俺もニコニコ笑顔を返しておく。

 『アカツキちゃんが笑顔の怒りを覚えた』
 『殴り技以外にもこんな技を⋯⋯』
 『成長だなw』

 なんだうちの視聴者共は。

 周囲を歩いているが、特に変化はなかった。

 レアな鉱石を発見できたんだ。せっかくなのでこれは回収して行こう。

 俺は鉱石の周囲を手刀で削って行き、細かい所はステッキを採掘道具に切り替えて行う。

 ツルハシを使うと鉱石ごと、破壊しそうなのでそこは調節だ。

 「よしっ」

 「ん?」

 シロエさんが俺に軽く断りを入れてから、鉱石を手に持って空に掲げる。

 光に透き通り、くっきりと見える金色の筋に目を見開く。

 「これは、違いますわ! アカツキさんお急ぎでここから逃げますわよ!」

 「え?」

 その叫びとほぼ同時だった、大地が揺れて地割れが起き、そこから真っ赤なドラゴンが飛来した。

 ロックドレイク⋯⋯では無いのだろう。

 赤色じゃないからな。

 「これはドラゴニウムですわ。パンニウムよりも希少で、それを捕食するのは、この鉱山に眠るとされるレッドドラゴン」

 「はは、まさかこうなるとは」

 『アカツキクオリティ!』
 『アンデッドやないやん』
 『普通にドラゴンかよ!』

 『アンデッドと期待した人多すぎやろ! わいもや!』
 『殴って終わりだな』
 『ふぁいとぉ』

 レッドドラゴンは金色の角膜に縦線の真っ黒な瞳孔、そんな目で俺はしっかりと睨まれた。

 「グゴアアアアアア!」

 腹の奥底まで響くその咆哮は俺を絶対に逃がさないと言う強い意志を感じる。

 俺だって、本能的に分かる、これは逃げれる戦いじゃないってね。

 リュックを置く。それだけの猶予はくれるらしい。

 シロエさんはその中にドラゴニウムを入れる。

 「逃げても良いんだよ?」

 「助っ人ホワイトマジックガールですわよ? もちろん、お助けいたしますわ」

 「そりゃあ頼もしいな」

 俺が前に出る。

 空を飛ぶドラゴンが戦闘開始のコングと言わんばかりに、巨大な火球を飛ばして来る。

 「防ぎますわ!」

 「防御など不要!」

 俺は走って、ステッキをバットにしてジャンプする。

 「攻撃こそ最大の防御! これがアカツキちゃんの、ホームランバッティングだ!」

 自分よりも何倍も大きな巨大な火球を、打ち返す。

 高速で打ち返された火球をひらりと翼を動かして回避するドラゴン。

 「自分の魔法はちゃんとくらうんだな」

 ファイヤードラゴンではなくレッドドラゴン、赤いだけのドラゴン。

 一レベル上のダンジョンに生息する巨大な魔物⋯⋯だけど臆する心は俺に無い。

 「さぁ、魔法少女の力を見せてやるぜ」

 「アカツキさん!」

 シロエさんが白い闇の円盤を俺に向かって投擲するので、ありがたくそれを足場にしてドラゴンに接近する。

 間合いに入れば、強くバットをスイング。

 空中戦では相手の方が有利であり、簡単に回避されてブレスが飛んで来る。

 「ブレスは苦手じゃ!」

 俺はステッキに見た目を戻して、ドラゴンの顔目掛けてぶん投げた。

 おかげでブレスは中断され、中途半端なブレスはパンチの風圧で飛ばす。

 「闇の根!」

 巨大な根っこのような白い闇がドラゴンに襲いかかるが、それも高速飛行で躱して行く。

 だけど、それらは俺の足場ともなれる。

 「飛ぶよりも走った方が速いんじゃ!」

 「わたくしの拘束魔法が足場に使われてますわ!」

 『しかも走った場所を破壊しているおまけ付き』
 『なんて迷惑なファイターなんだ』
 『沈まないの?』

 ドラゴンに接近して、拳を放つ。

 回避され、その勢いも利用されての尻尾の攻撃。

 「ぬあっ」

 防御したが、地面に向かって一直線に落とされる。

 「トランポリン!」

 柔らかい闇によって支えられた。ありがたい。

 「もっかい!」

 「わたくしの闇は壊されなければ継続して使えますのに⋯⋯」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...