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物理系魔法少女、切り札を使う
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ギルドでは今、慌ただしい状況にあった。
オーガの里ダンジョンでレイド型の魔物が出現したと言う情報が寄せられ、その証拠としてとある配信者の生配信が出された。
ダンジョンと言う危険な場所でおかしな格好をしたその人は自称魔法少女のアカツキ。
魔法少女と自称しておきながら魔法は使わず、バカげた力だけで戦っていた。
そのライブ中にレイド型の魔物、がしゃどくろが出現した。
アカツキはがしゃどくろに向かって特攻したと見られ、日本全国のギルドは急いで討伐隊を集めていた。
しかし、突然の事態であるがために集まる人が限りなく少ない。
とあるギルドでは受付嬢が全力でそのダンジョンに行こうとしているところだった。
「お願い紗奈っち落ち着いて!」
「落ち着ける訳ないでしょ! 急いで行かないと!」
「ダメー! レベル4だからダメー!」
「紗奈ちゃん、とりあえず仕事戻ろ? 今から探索者が集まるからさ」
「私よりも強い探索者を連れてこーい!」
「うちのギルドにそんな逸材は居ないよ。支部長としてとても悲しいっ!」
ネットではがしゃどくろの出現がしっかりと映っていたライブ映像が切り抜きで拡散されていた。
拡散された動画がさらに拡散され、一時間と経過してないにも関わらず、探索者や一般人から幅広くその動画を視聴した。
たった一人でレイド魔物に挑む変な格好の少女。
注目が注目を呼び、SNSのトレンドや掲示板が持ち切りになる。
レイドと言う事で動き出す探索者もいる。
レイド魔物の危険性を理解している政治家も注目し始める。
今ここで、アカツキはどの配信者よりも注目を集めていたのだ。
◆
「し、死ぬかと思った」
土を掘りまくって、なんとか脱出した。うーん空気が不味い。
さて、どうしたもんかな。
「はは。こんちわ」
がしゃどくろが俺を見下ろしていた。瞳無き目は俺を睨んでいるように思う。
その目の裏に何を考え思っているのか俺には分からない、だけど何となく感じる。
「俺を憎んでいるのか?」
俺はお前に対して何かをした覚えがないぞ。
だけど質問したところで答えなど返って来るはずもなく、返されたのは容赦の欠けらも無い拳である。
俺は脱出して走って逃げた。
「俺に足場を提供してくれて、ありがとうよ!」
猿の気持ちになって、がしゃどくろの腕をよじ登る。
「ウホウホ~」
飛び出る魔法もなんのその、全て俺の後ろに置き去りにする。
魔法陣を通過して出て来る手も分かって入れば、躱すのは容易だ。
「やっほー」
相手の頭蓋ごつに移動したので、倍返しの拳を叩き落とすが意味は無い。
頭に着地する。同時にがくんと膝が崩れた。
「やっべ。思った以上にダメージが蓄積されているな」
咳き込むと、口から血が飛び出た。
あー結構やばい。
「なのに思考はクリアなんだよな。結構やばいのか」
周囲に大量の魔法陣が現れる。ゆっくりと立ち上がる。
放たれる魔法を砕きながら心臓に向かって、一気に跳ぶ。
懐から回復薬とナイフを取り出す。あ、ドローンさんただいま。
「残骸になってらっしゃる」
高かったのに⋯⋯お前のドロップアイテムで弁償してくれよ。
「オラッ!」
まずは回復薬をぶん投げて骨を柔らかくする。
ナイフを鞘から抜いて、力を込める。
一発だ。この一発に全てを乗せる。
一回使ったらこのナイフは多分、俺の力に耐えきれずにぶっ壊れるだろう。
「頼むぜ、アンデッドキラー!」
俺は落下しながら回転して遠心力を乗せる。最大限まで上昇させる火力。
ぶった斬れ!
「おっらあああああああ!」
骨に突き刺さり、徐々に斬り裂いて行く。やはり硬い⋯⋯ナイフで鉄を無理やり切っているかのような感覚。
バターを切るようにはいかんのか。
「だけど、それじゃ俺は止まらねぇぞ!」
腕から血が吹き出す。限界に近いようだ。
スケルトンナイトや八本手のよー分からん雑魚に寄生されたオーガ。
大量の敵をなぎ倒した。その分の攻撃も受けて来た。
その最後の一押しとしてがしゃどくろのパンチが来た。
さすがの魔法少女も限界らしい。
「だけど、そんなんじゃ止まれねぇ!」
全身全霊を賭けた俺のナイフは奴の殻を破った。⋯⋯妖艶に輝く魔石が目に入る。
とても綺麗な魔石には傷一つ無い⋯⋯ナイフが砕ける。
そのまま地面に向かって俺は落下をする。
終わるのか? あと一歩ってところで。
終わっちゃうのかよ。
あと少しだろ。あと僅かだろ。
もう少しで、もう少しでがしゃどくろを倒せるところまで行けたんだ。
何千か何万か、そのくらいの魔法をかいくぐった。
数万の兵士達も越えた。
なのにまだ、壁があると言うのか。
「オーバーキルだろ」
俺の周囲に魔法陣が現れる。もう限界だ。
手が動かない。身体が動かないんだ。
なのにどうして、魔法を使おうとするんだ。
まるでまだ、俺が生きて⋯⋯ああ、そうだ。
俺はまだ生きているんだ。死んでねぇよ。
だからまだ抗えるんだ。まだ戦えるんだ。それを危惧してんだろ。
その危惧を現実にしてやらんとな。
片手だけで良い。それだけで十分だ。
「動け、動け、動け!」
俺の右手にステッキが来る。
ラストアタックだ。
俺の最期を賭けた一撃、耐えれるもんなら耐えてみろ。
オーガの里ダンジョンでレイド型の魔物が出現したと言う情報が寄せられ、その証拠としてとある配信者の生配信が出された。
ダンジョンと言う危険な場所でおかしな格好をしたその人は自称魔法少女のアカツキ。
魔法少女と自称しておきながら魔法は使わず、バカげた力だけで戦っていた。
そのライブ中にレイド型の魔物、がしゃどくろが出現した。
アカツキはがしゃどくろに向かって特攻したと見られ、日本全国のギルドは急いで討伐隊を集めていた。
しかし、突然の事態であるがために集まる人が限りなく少ない。
とあるギルドでは受付嬢が全力でそのダンジョンに行こうとしているところだった。
「お願い紗奈っち落ち着いて!」
「落ち着ける訳ないでしょ! 急いで行かないと!」
「ダメー! レベル4だからダメー!」
「紗奈ちゃん、とりあえず仕事戻ろ? 今から探索者が集まるからさ」
「私よりも強い探索者を連れてこーい!」
「うちのギルドにそんな逸材は居ないよ。支部長としてとても悲しいっ!」
ネットではがしゃどくろの出現がしっかりと映っていたライブ映像が切り抜きで拡散されていた。
拡散された動画がさらに拡散され、一時間と経過してないにも関わらず、探索者や一般人から幅広くその動画を視聴した。
たった一人でレイド魔物に挑む変な格好の少女。
注目が注目を呼び、SNSのトレンドや掲示板が持ち切りになる。
レイドと言う事で動き出す探索者もいる。
レイド魔物の危険性を理解している政治家も注目し始める。
今ここで、アカツキはどの配信者よりも注目を集めていたのだ。
◆
「し、死ぬかと思った」
土を掘りまくって、なんとか脱出した。うーん空気が不味い。
さて、どうしたもんかな。
「はは。こんちわ」
がしゃどくろが俺を見下ろしていた。瞳無き目は俺を睨んでいるように思う。
その目の裏に何を考え思っているのか俺には分からない、だけど何となく感じる。
「俺を憎んでいるのか?」
俺はお前に対して何かをした覚えがないぞ。
だけど質問したところで答えなど返って来るはずもなく、返されたのは容赦の欠けらも無い拳である。
俺は脱出して走って逃げた。
「俺に足場を提供してくれて、ありがとうよ!」
猿の気持ちになって、がしゃどくろの腕をよじ登る。
「ウホウホ~」
飛び出る魔法もなんのその、全て俺の後ろに置き去りにする。
魔法陣を通過して出て来る手も分かって入れば、躱すのは容易だ。
「やっほー」
相手の頭蓋ごつに移動したので、倍返しの拳を叩き落とすが意味は無い。
頭に着地する。同時にがくんと膝が崩れた。
「やっべ。思った以上にダメージが蓄積されているな」
咳き込むと、口から血が飛び出た。
あー結構やばい。
「なのに思考はクリアなんだよな。結構やばいのか」
周囲に大量の魔法陣が現れる。ゆっくりと立ち上がる。
放たれる魔法を砕きながら心臓に向かって、一気に跳ぶ。
懐から回復薬とナイフを取り出す。あ、ドローンさんただいま。
「残骸になってらっしゃる」
高かったのに⋯⋯お前のドロップアイテムで弁償してくれよ。
「オラッ!」
まずは回復薬をぶん投げて骨を柔らかくする。
ナイフを鞘から抜いて、力を込める。
一発だ。この一発に全てを乗せる。
一回使ったらこのナイフは多分、俺の力に耐えきれずにぶっ壊れるだろう。
「頼むぜ、アンデッドキラー!」
俺は落下しながら回転して遠心力を乗せる。最大限まで上昇させる火力。
ぶった斬れ!
「おっらあああああああ!」
骨に突き刺さり、徐々に斬り裂いて行く。やはり硬い⋯⋯ナイフで鉄を無理やり切っているかのような感覚。
バターを切るようにはいかんのか。
「だけど、それじゃ俺は止まらねぇぞ!」
腕から血が吹き出す。限界に近いようだ。
スケルトンナイトや八本手のよー分からん雑魚に寄生されたオーガ。
大量の敵をなぎ倒した。その分の攻撃も受けて来た。
その最後の一押しとしてがしゃどくろのパンチが来た。
さすがの魔法少女も限界らしい。
「だけど、そんなんじゃ止まれねぇ!」
全身全霊を賭けた俺のナイフは奴の殻を破った。⋯⋯妖艶に輝く魔石が目に入る。
とても綺麗な魔石には傷一つ無い⋯⋯ナイフが砕ける。
そのまま地面に向かって俺は落下をする。
終わるのか? あと一歩ってところで。
終わっちゃうのかよ。
あと少しだろ。あと僅かだろ。
もう少しで、もう少しでがしゃどくろを倒せるところまで行けたんだ。
何千か何万か、そのくらいの魔法をかいくぐった。
数万の兵士達も越えた。
なのにまだ、壁があると言うのか。
「オーバーキルだろ」
俺の周囲に魔法陣が現れる。もう限界だ。
手が動かない。身体が動かないんだ。
なのにどうして、魔法を使おうとするんだ。
まるでまだ、俺が生きて⋯⋯ああ、そうだ。
俺はまだ生きているんだ。死んでねぇよ。
だからまだ抗えるんだ。まだ戦えるんだ。それを危惧してんだろ。
その危惧を現実にしてやらんとな。
片手だけで良い。それだけで十分だ。
「動け、動け、動け!」
俺の右手にステッキが来る。
ラストアタックだ。
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