上 下
32 / 179

物理系魔法少女、ロリ職員に茶化される

しおりを挟む
 メッセージにより、アオイさんが一緒にダンジョンに行けなくなった。

 コラボはかなりの盛況を見せて、互いにチャンネル登録者数を増やしていた。

 そして今日はとても不安な一日である。

 魔法少女全員で戦闘訓練と言い出したのはアオイさんだ。

 だが、アオイさんとミドリさんは補習があるらしく、なぜか親交を深めると言う名目の下、ミズノさんとダンジョンに行く事になってしまったのだ。

 不安だ。不安しかない。

 でも、不安ばかりではしかたない。

 レベルを上げて金を安定して稼げるようにならないといけないから。

 「あ、星夜さん。今日は早いね」

 「昨日は色々な物件見て、疲れてすぐに寝たからな。お陰様で良く寝れたけど腰が痛てぇ」

 「そっかそか。それじゃ、行こう!」

 腕を組まれ、柔らかな感触を感じながらギルドまで向かった。

 ギルドに到着して、紗奈ちゃんは裏口に向かった。

 俺はロビーに入る。

 「いや~紗奈っちのあの猛攻を良く耐えたモノだよ」

 ロリ職員の女性がいつの間にか、俺の隣の椅子に座っていて話しかけて来た。

 あーいや、俺じゃないかもしれない。

 つか、なんで知ってるの?

 「レベル4以上、安定収入、それまでに気がお互いに変わらなければ結婚、変な条件だけど普通かな? でも結構大変だよね~」

 「本当になんで知っているんですか?」

 怖い。

 「それまでは、互いに恋人居ないと言うステータスを維持、ね? 告白から逃げられても返事を待っていた一途な女に厳しいね~」

 「仕事は良いんですか?」

 ケラケラ笑いながら言ってくれる。だから嫌味を言ってみる。

 「大丈夫。ちゃんとしてるから」

 ん? まぁ良いや。

 紗奈ちゃんが色々と話しているのかな? 怖いし嫌だな。

 さっき行ったばかりなのに、紗奈ちゃんが話して俺に話しかけて来ている⋯⋯のか?

 色々と不思議って言うか怖い点が見えて来た。もう、無視しよう。

 「探索者の寿命は短い。年長者でも50代くらいだし、身体の事もある。急いでやんないと条件満たせなくなるし、貯金も貯まんないかもね~」

 少しだけイライラして来た。

 「紗奈ちゃんは沢山お金持ってるし、君よりも何倍も強い⋯⋯ヒモになるのが一番じゃないかな?」

 ムカッとして、言い返そうと隣を見ると⋯⋯彼女は既に居なかった。

 「なんだよ⋯⋯たくっ」

 やるしかねぇな。

 実際、紗奈ちゃん好きだし。

 重要なのは俺の想い、気持ちだ。

 後は気持ちだけじゃどうにもならない事を、全力で努力して埋めるだけだ。

 「おまたせ」

 お、おう。

 いつもよりも真っ直ぐな笑顔で対応された。

 「それで、今日はどこに行くの?」

 「仕事モード紗奈ちゃんはいずこへ?」

 「そこのゴミ箱」

 あ、そうですか。

 今日行こうとしている場所は、推奨レベル3の中では難易度が一番低い、『マナの草原』である。

 「⋯⋯まぁたパーティでぇすかぁ?」

 「怖い怖い。そうですはい」

 「浮気は許さない⋯⋯」

 「断じて違う」

 「⋯⋯そうですかそうですか。へ~。あ、ガラス瓶を持って行ってね。マナの草原にある水源の水は金に変わるから⋯⋯私の為にも、全力でサポートするから、ね」

 ⋯⋯そのサポート力は多分、今までと変わらない。それだけ日々のサポートは大きい。

 ギルドの二階に行ってガラス瓶を購入して、受付で登録して、リュックに詰め込んでゲートを通る。

 「ゴブリンと出会った森みたいだ」

 ただ気持ち空気が重めだ。

 確かゲートを通ってから北に向かって進んで、湖で待ち合わせだったよね?

 紗奈ちゃんの言っていた『水源』とやらが湖なのかな? ミズノさんに聞けたら良いな。

 お、既にミズノさんが居た。

 「お、おまたせ⋯⋯」

 「遅い」

 待ち合わせ時間、二時間後!

 早すぎだろ。

 「アオイちゃんが居ない、帰りたいけど、アオイちゃんが言ったから、一緒に探索する」

 「よろしくお願いします」

 ペコッと挨拶しておく。

 「⋯⋯ガラスの音がする。マナ水取り行く?」

 「あ、はい」

 「結構遠い。南の方、行くよ」

 ミズノさんは結構世話焼きなのかもしれない。言葉足らずの⋯⋯そう思っておこう。

 アオイちゃん信者な理由をとても聞きたいけど、そんなプライベートに踏み込む事はできない。

 俺も踏み込まれたくないし。

 「⋯⋯魔物」

 「狼か」

 「マナウルフ。ミズノの戦い見て、学べ」

 腰に帯刀していたショートソードを抜き取る。

 両手剣⋯⋯双剣かな?

 「って剣!」

 「ステッキは携帯だけで効果がある。メイン武器は別に用意するの基本、アオイちゃんは魔力が別格だから魔法寄りなだけ」

 そんな貴重な情報は早く教えて欲しかったな。

 マナウルフと呼ばれた、オーラを纏った狼がミズノさんに迫る。

 「技は心を落ち着か⋯⋯せて繰り出す剣術とか色々ある」

 なんかそれっぽい事を言おうとしたけど、難しかったから辞めた、みたいな感じ?

 ミズノさんが駆け出し、水色の閃光を残してウルフを斬殺した。

 「魔法少女は変身前でもかなりの身体能力強化がある。変身するとさらに上がる。それを自覚して使いこなす必要がある。それが基礎」

 「色々と教えてくれますね」

 ⋯⋯俺は本来の魔法少女とは違うから、変身前も身体能力が高いとか、ねぇよ!

 「アオイちゃんに個別に言われた。面倒見てと。だからする」

 「そっか。ありがとうございます」

 「⋯⋯ミズノはアオイちゃん以外に興味無い。アオイちゃんの指示なら動く。覚えておいて」

 何となく分かってる。

 ⋯⋯にしても、予想通り。

 水色の魔法少女衣装で外見の大きな変化は見られない。

 もしかして俺の魔法少女だけが姿形を自在に変えられる、のか?

 「質問良いですか?」

 「うん?」

 「ステッキを自在に変えられるのって⋯⋯」

 「それがお前の魔法の一種なんでしょ? アオイちゃんが言ってた。ミズノ興味無い」

 アオイさんはそう言う仮説を立ててたのね⋯⋯そっか。

 これ、もしかしたら俺は魔法を使えていたのかもしれない。

 「急にニコニコキモイ」

 「ごめんしゃい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

足が不自由な令嬢、ドジはいらないと捨てられたのであなたの足を貰います

あんみつ豆腐
恋愛
足が不自由であり車いす生活の令嬢アリシアは、婚約者のロドリックに呼ばれたため、頑張って彼の屋敷へ向かった。 だが、待っていたのは婚約破棄というの事実。 アリシアは悲しみのどん底に落ちていく。 そして決意した。 全ての不自由を彼に移す、と。

異世界のジャンヌダルク

牧田紗矢乃
恋愛
海辺に佇む一人の女性。彼女は城を追われ逃げる途中の姫君だった。 お題「海」の短編です。 他の小説投稿サイトにも掲載しています。

【完結】【BL】最愛の恋人

明太子
ミステリー
※BL要素ありのミステリーで、エピローグを読まないハッピーエンドルートと読んでしまうメリーバッドエンドルートの2種類があります。   新は高校の同級生である司に山の中で倒れているところを助けられた。 目覚めると、高校1年生の夏以降の記憶を失っており、そのまま司の世話になりながら、ともに暮らすことに。 その中で新は自分に男の恋人がいたこと、そして自分が記憶喪失となる寸前に誰かに監禁されていたことを思い出す。 司の冷酷な性格を覚えていた新は彼が犯人なのではないかと不安になる。 そんな中、招かれざる来客が現れて…。 彼は最愛の恋人?犯人?それとも… 結末にあるのは意外などんでん返し。

【書籍化決定】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。

あずももも
大衆娯楽
「あれがヘッドショット系ロリなハルちゃんだ」「なんであの子視界外のモンスター一撃で倒せるの……?」「僕っ子かわいい」「見た目は幼女、話し方はショタ……これだ」「3年半趣味配信して今ごろバズるおかしな子」「なんであの子、保護者から何回も脱走してるの?」「野良猫ハルちゃん」」「百合百合してる」「ヤンヤンしてる」「やべー幼女」「1人でダンジョン壊滅させる幼女」「唯一の弱点は幼女だからすぐ眠くなることくらい」「ノーネームちゃんとか言う人外に好かれる幼女」「ミサイル2発食らってぴんぴんしてる幼女」(視聴者の声より) ◆1年前に金髪幼女になった僕。でも会社は信じてくれなくてクビになったから生計のためにダンジョンに潜る生活。ソロに向いてる隠れながらのスナイパー職で。◇今日も元気に姿を隠して1撃1殺しながら稼いでたところに救助要請。有名配信者って後で知ったアイドルの子をFOE的に出て来たボスからなんとか助けた。で、逃げた。だって幼女ってバレたらやばいもん。でも僕は捕捉されて女の子になったこととか含めて助けてもらって……なぜかちょっと僕に執着してるその子とかヘンタイお姉さんとかポニテ委員長さんとか、追加で髪の毛すんすんさんと実質的に暮らすことに。 いやいや僕、男だよ? 心はまだ……え、それで良いの? あ、うん、かわいいは正義だよね。でも僕は男だから女の子な君たちはお風呂とか入って来ないで……? 別に着替えさせるのは好きにすれば良いから……。 ◆TSロリが声出しまで&フェイクの顔出しでダンジョン配信するお話。ヒロインたちや一部の熱狂的ファンからは身バレしつつも、大多数からは金髪幼女として可愛がられたり恐れられたりやべー幼女扱いされます。そして7章でこの世界での伝説に…… ◆配信要素&掲示板要素あり。他小説サイト様でも投稿しています。 ◆フォローやブクマ、レビューや評価が励みになります! ◆130話、7章で一旦完結。8章が箸休めのTS当初な場面、9章から7章の続きです。 ◆Xアカウントにたどり着くと、TSネタ、ハルちゃんのイラストや告知が見られます。

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。  今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

あなたに捧げる愛などありません

風見ゆうみ
恋愛
私は公爵である夫と彼を可愛がる義母から疎まれていた。 理由は私の癖っ毛の黒色の髪が気に入らないらしい。 ある日、私は魔法使いがいる国、マジルカ国の女王陛下専属の魔道士に、髪の毛がストレートになる魔法をかけてもらう。 これで夫に愛してもらえる! そう思った私は、夫にこの姿を見てもらいたくて予定よりも早く屋敷に戻った。 けれど、夫は私たち夫婦の寝室で浮気の真っ最中だった。 怒りとショックで打ち震える私に謝る様子もなく、馬鹿にしてきた夫だったが、ストレートの髪になった私を見て「なんて美しいんだ」と声を漏らした。 なぜかはわからない。 そんな夫を見た瞬間、私の中の彼への愛は急激に冷めてしまった。 ※史実とは異なる異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

冤罪勇者の逆転譚

狂乱の傀儡師
ファンタジー
世界を救う勇者として、仲間と共に魔王を倒したロディ。 しかし、凱旋のつもりで帰って来た彼を待ち受けていたのは、身に覚えのない罪と仲間の裏切りだった。 英雄から一転、世間から後ろ指を指されるようになってしまった彼は、名誉を取り戻すため真実を究明する。 ※小説家になろうにも投稿しています。

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。 サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。

処理中です...