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物理系魔法少女、あの子と再会する

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 いつもの紗奈ちゃんも可愛いが、酔っている時の紗奈ちゃんは別のベクトルで可愛いがあった。

 俺の精神力が弱かったら、責任を笑顔で取っていた事だろう。

 そんなくだらない事を考え、ゲートに近寄りながら横目で紗奈ちゃんを確認する。

 さっきの青年が紗奈ちゃんの受付を使って、営業スマイルを受けていた。

 ⋯⋯もう少し柔らかい笑みだったと思うけど、紗奈ちゃんの苦手な相手なのかな?

 ダンジョンに入る。

 「獣の草原⋯⋯どんな魔物が居るんだろうか? 配信じゃなくて、プライベートでやろうかな」

 ずっとアカツキちゃんだったので、そろそろクール系銀髪美女である俺の性癖全開の見た目になろうかな?

 「太もももう少し太くして、露出させようかな?」

 自分の性癖を自分の身体で体現する。

 ゲートから少し離れたところでやらないと、自衛隊の人に見つかってしまうので、移動する。

 足音が聞こえた。

 足音は⋯⋯上か。

 「猿か?」

 と、石を投げて来るのか。裏拳で弾く。あ、砕けた。

 うっ、欠片が目に入りそうだから避けた方が良いな。

 数は六体。本当に群れだな。

 「キキキ!」
 「キキ!」
 「キッキ!」

 猿達が会話でもしているのかな?

 ⋯⋯ん?

 一体の猿の目が下の方に動いたのが見えた。

 こ、コイツ!

 「お前、俺の胸見てんのか!」

 ⋯⋯女性目線ってこんな感じなのかな?

 すれ違いざまに目が合ったことのある女性全員に、心の中で謝罪した。

 「石を飛ばす事しか芸がないのか?」

 地を蹴って加速し、周囲の木をへし折って相手の行動範囲を制限する。

 空中に身を出した猿の身体をぶん殴って、倒す。

 「うん。ワンパンで倒せるなら問題ないな」

 それから魔物を倒して、見た目を変えてない事に気づいた。

 ま、問題ないから良いけど。

 「当分はここで活動して、配信とかもして行くか。高級なお酒貰っちゃったし、何かお礼しないとな」

 それと、俺は三時には探索を切り上げて帰る事を決めた。

 定時帰りだ。定時にしては早いけど。

 「⋯⋯紗奈ちゃんとの関係も考えないとな。今のままズルズルってのは、互いに良くない」

 ベッド、ふかふかだったな。

 まずは良い場所への引越しかな?

 「見つけたわよアカツキ!」

 「アオイ!」

 問題あったわ。

 「相変わらず身の丈に合わない低いランク帯のダンジョンに居るようですね。探すのに苦労しましたわよ」

 別に探す必要は無いんですよ?

 「それじゃ、魔法を見せて貰うわよ!」

 「耳にタコができるくらい言わないとダメなんですか? 俺は魔法が使えないんだよ」

 「そんな冗談は聞き飽きたわ」

 冗談って言いたいのはこの俺自身である。魔法使いたい。

 「蒼炎!」

 この辺は障害物も少ない平地であり、ウルフのような魔物が多い場所だった。

 故に、この自由度の高い蒼い炎は広がりながら迫って来る。

 この形無き範囲攻撃は俺にとって、とても相性が悪い。

 だけど、俺は今日ヒントを得ている。

 ギルドに貼ってあった夏祭りのチラシだ。

 「うちわ?」

 「大きなうちわさ」

 足に力を入れて地面にめり込ませ、体勢を正す。

 全身の力を利用して、うちわを振るう。

 「必殺マジカルシリーズ、本気マジカル旋風!」

 俺は全力で仰いだうちわから発生する風は相手の炎とぶつかる。

 パンチとかよりも広範囲に広がる衝撃は、相手の広範囲攻撃に有効的だ。

 「嘘っ!」

 「嘘でもなんでもねぇ! 力の強さは時に魔法を凌駕する!」

 「少し声が震えてるわよ!」

 俺も正直、驚いた。

 全力で仰いだだけで、自由度の高い魔法と互角の攻防ができるとは思ってもみなかった。

 これがレベル2の力って事だろう。

 「もう午後なんだ。定時帰りの為に、速攻で終わらせるぞ」

 「今日は祝日よ」

 「祝日は平日なんだよ!」

 学生脳か!

 とりあえず、あの掴めない魔法の対策ができるなら俺の敵にはなり得ない!

 ステッキを一度捨てて俺は突っ込んだ。

 相手が再び魔法を操る前に、一歩でも多く近づく。

 「前よりも速いっ! レベルアップしたのね。なら、自分も火力を上げるまでよ!」

 ずっと飛ぶ相手に俺はジャンプで接近する。

 弓を引く様なポーズを取るアオイさん。

 「蒼炎!」

 蒼い炎の矢が飛んで来る。

 だけど、見える!

 「来い!」

 バットをイメージしながらステッキを手元に戻し、バットを振るって矢を弾く。

 「ちぃ!」

 「さぁて、前回急に襲って来た事、謝って貰うぞ!」

 「謝ってなかったかしら⋯⋯」

 足から炎を出して上に逃げ出すアオイさん。

 悪いけど、悪く思ってないけど、空には行かせねぇぜ。

 俺が不利になるからな!

 「鞭!」

 初めて使うけど、どうにかなれ!

 先端などが磁石になっているイメージ。

 「くっ」

 「そら、落ちろ!」

 足を捕まえたアオイさんを地面に向かって落とした。

 大地を抉る炎が爆裂する。

 「別に強い衝撃を与えるつもりは無かったんだけど⋯⋯相手からはそう感じないよね」

 衝撃を和らげるために魔法を使ったんだろうが、俺は叩き着けるつもりは無かった。

 まぁ、無事ならどうでも良いんだけど。

 「もう良いよね? 戦う必要なんて最初から無いしさ。話を聞かせてくれない?」

 煙の中でゆっくりと立ち上がる影⋯⋯アオイさんだ。

 「ふっ。本当に強くなったわね。油断していたとは言え、何もできずに負けるなんて⋯⋯手加減していたとは言え!」

 負けず嫌いな気がする。

 「この短期間でレベル4になったのね」

 「いや、2だけど?」

 「⋯⋯へ? ぜ、前回はレベル3でしょ?」

 「レベル1だったが?」

 「嘘でしょ。そんな⋯⋯『手加減』していたとはいえ、新人の魔法少女のレベル1に魔法を使われずに追い込まれたの?」

 魔法少女なのに魔法を使わないって、最大限の手加減じゃないのか?

 使えないんだけどさ。

 「まぁ良いわ。そこまで隠したいのでしょう。認めてあげるわアカツキさん。確かにアナタは魔法少女。我々と同じ。歓迎するわ」

 「⋯⋯自分一人で完結しないでくれます?」
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