上 下
12 / 179

物理系魔法少女、お礼がしたい

しおりを挟む
 「オーク一体の討伐数の報酬が千円、オークの魔石が一個で千円、討伐数が20で魔石も全部持ち帰れるから40000か」

 一日中動いて四万円ってそこそこ良いのでは?

 命の危険性やらなんやらが無かったら、最高の仕事かもしれん。

 ま、そんなメンタルの人が少ないから、探索者をメインでやる人は少ないんだろうな。

 「さて、帰るかな」

 ゲートを通り、体に感じる重みに目を背けたくなる。

 魔法少女になると、体とか色々と軽くなったりする。

 「早めに切り上げたかいもあるな」

 まだ列がそこまでできていないので、少し待った程度で紗奈ちゃんの受付に入る事ができた。

 「お疲れさま。どうだった?」

 第一声はプライベート紗奈ちゃんである。

 「まーうん。そこそこやれたんじゃない? 初めてで砂に足が取られたりで、ちょいとキツかった」

 「なるほど⋯⋯そろそろ武器とかの用意もしたら良いんじゃないですか?」

 「そうだけど、貯金を崩すのが怖くてね」

 武器なんて高額な物を買える勇気がない。

 探索者は歳を取ると引退する人が多い。動けないから。

 俺も沢山貯金して、さっさと辞める事を目標にしている。

 魔法少女になれば、その辺問題ない可能性もあるけどね。

 「高いからね。⋯⋯と、話は後にして仕事しますか。ステータスカードとドロップアイテムの提示をお願いします」

 「はーい」

 そろそろ新しいスキルが手に入ってもおかしくないくらいにオークをぶん殴ったつもりだけど、一向に新しいスキルが会得できる雰囲気がない。

 このままのスキル群だと、レベルが上がっても同レベルの人に負けてしまう可能性がある。

 その辺もどう解決するべきか。

 「ソロで素手で初見の場所でこれだけの成果を出せたら十分だと思いますよ。全部換金致しますか?」

 「お願いします」

 魔石ってなんか使い道あるの、一般人が?

 今の日本のエネルギーは魔石だよりなのは知っているけど、俺個人で使う用途が思いつかん。

 地球温暖化などの環境汚染も数十年前、ダンジョンができてから改善している。

 ダンジョンでの管理や魔物の討伐を怠ると、外に出て来てしまい、下手したら災害になるけど。

 「登録した口座に振込みますか? それともこの場でお受け取りしますか?」

 「受け取りで」

 「かしこまりました⋯⋯どうぞ」

 ステータスカードを出し入れしていたところから、四万円が出て来た。

 透明の強化ガラスにより見れるようになっている。

 ハイテク。

 「銀行みたいだね」

 「ここの方がハイテクですよ。色々と出て来ますからね」

 金を受け取り、紗奈ちゃんが終わるのを待つ事にする。

 この時にパソコンでも持って来ていたら、動画の編集とかができたかもしれない。

 さすがにネカフェとか人目のつかないところを使うけどね。

 見られたりでもしたら大変だ。

 魔法少女アカツキが編集を他人に任せていると広まって⋯⋯そもそも脳筋魔法少女と呼ばれているアカツキちゃんが動画編集をできるのか?

 いやまぁできるけども、なんと言うかすごいギャップがある気がする。

 「ま、少しばかり知的要素って事で」

 これで誰かにやって貰っていると疑われたら、それはそれで面白い。

 特にサポートをしてくれる場所に所属している訳では無いけど。

 「おまたせ」

 「完全プライベートモードの紗奈ちゃんだね」

 「はい。その通り。⋯⋯星夜さんは敬語の私の方が好き?」

 「いや、その方が良いかな。昔の紗奈ちゃんみたいで」

 「⋯⋯じゃあ変えようかな」

 「なんで!」

 俺は今の喋り方の方が好きだ。見た目は昔の方が好きだけど。

 クール系がタイプだ。いつからかは忘れたけど。

 ま、ぶっちゃけどうでも良いけどね。

 喋り方も外見も二の次だ。

 俺は普通に、神楽紗奈ちゃんが好きだから。

 だからこそ、俺が魔法少女だって事は絶対に、絶対にバレてはならない。

 「あ、この時間まだあそこのケーキ屋やってるだろうし、行こうよ」

 「え、今日なにかの祝い?」

 「ううん。昨日も今日も、再会してから色々してくれてるでしょ? だからそのお礼」

 「別に必要ないよ。それだったら、ケーキよりも、その⋯⋯紙とか指輪とかが⋯⋯」

 「ん~紗奈ちゃんに似合うアクセサリーを俺が買えるかいささか疑問に残るな。紙ってどんな紙? 方眼紙? 色紙? あ、髪の毛?」

 「バカのベクトルを間違えてるよ!」

 涙目を浮かべながらスネを蹴ってくる。

 正直、むちゃくちゃ痛いです。

 「めんもくない」

 「全く。星夜さんって、大学の頃、子供欲しいって言ってたよね?」

 急に話を変えてくるね。

 「そうだね。⋯⋯まぁこんな歳で安定している訳でもない探索者の冴えないおっさんにはもう、結婚もできないよ。このまま大賢者を目指すさ」

 魔法少女なので、魔女かもしれん。

 「どったの紗奈ちゃん。自分指さして。⋯⋯そうだね、紗奈ちゃんはまだ若いし可愛いから、ふさわしい相手から寄って来るよ」

 「一歳しか変わりませんよ?」

 「そんな昔話は置いておいて、どうする? 行く? 奢りよ?」

 「行く! 明日休みだからじっくり話そうね」

 掃除やら色々とやらないといけないのに、やる事が増えてしまった。

 「魔法少女アカツキちゃん」

 「俺は何にしようかな~」

 俺が好きなのはフルーツタルトなので、それがあればそれにしようかな。

 「無視かい!」

 「え、なんか言ってた?」

 「そう言えばこの人、見た目と違ってスイーツが好きだったな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない

ぐうのすけ
ファンタジー
朝起きると美人予言者が俺を訪ねて来る。 「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」 そして俺は黒服マッチョに両脇を抱えられて黒塗りの車に乗せられ、日本に1つしかないダンジョンに移動する。 『ダンジョン配信の義務さえ果たせばハーレムをお約束します』 『ダンジョン配信の義務さえ果たせば一生お金の心配はいりません』 「いや、それより自由をください!!」 俺は進化して力を手に入れるが、その力にはトラップがあった。 「吸血鬼、だと!バンパイア=エロだと相場は決まっている!」

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

処理中です...