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ジャックが器用だと思ったのは、強烈な突きとぶん回しでなんとなく分かる。
なぜなら、あれは刀を扱う時の動きじゃないから。
混ざりに混ざった、異質かつ異様な技術。
ジャックと言う男は『戦闘』に関して、とても優れている。
「日向よ、お前の秘めている全力を見せろ!」
「どう言う事ですか?」
「リイアがスピードタイプと言うなら、日向はパワータイプ。だが、そのパワータイプにブレが見える。慣れてないんだろ、その動きに。自分の慣れた動きをして見せよ!」
「何を言っているか、分かりません⋯⋯ね!」
「あくまでシラを切るか」
多分だが、昔の俺のような闘い方は絶対にダメだ。
すぐに日陰の正体に辿り着く。この男は。
ギルマスはオークションの情報などを照らし合わせて、日陰の正体、俺を発見した。
だが、ジャックはどうか?
ネットである程度の住処は特定されている。
だけど、剣術だけでどこの場所かまでは特定されてない。
表向き、霧外道場は剣道を教えるのであり、剣術を教える場所じゃない。
それでも、彼はここまで辿り着いた。
数少ないであろう情報で、あと一歩と言う所まで俺を追い詰めているんだ。
昔の俺のような技術を使ったら、この男は確実に気づく。
見た目、声、性別なんて関係ない。
この男がその目で見て、確信した時点で、確実にその人物は日陰となる。
だから絶対に、俺が日陰と思われてはダメだ。
「どうした、もっと、もっと速くなれ!」
ジャックの猛攻を防ぐ。
動きや木刀の扱いがバラバラだ。
躱すのは不可能。防ぐのも難しい。
闘っていて、ここまで気持ち悪いと思った相手は初めてだ。
「ほれ、これがパワータイプの攻撃だ!」
「くっ!」
上から振り下ろされた攻撃⋯⋯なんて重さだ。
崖から落下して来る岩を防いでいるみたいだ。
「受け流し⋯⋯させぬぞ!」
「ちぃ」
弾き飛ばされる。
受け流しからのカウンターも瞬時に見破られるか。
しゃーない。短期決戦と行こう。
「ふぅ」
「なんだ?」
俺はスクワットのような動き、スクワットモドキを行う。
ジャックからは面白そうな目を、他の人達からは頭大丈夫か、の目を向けられる。
やめて、そんな目で俺を見ないで。
と、この辺で良いだろ。
「霧外流、夜霧!」
一瞬で俺はジャックへと肉薄する。
極限まで集中力を高め、心を脳を無にする。
空気すら今の俺の感覚には入らない。
見えているのはジャックの体のみ。
大きく肉体に負荷が生じ、集中力もごっそりと減る。
だけど、この一撃が唯一無二のジャックを倒せるチャンスだ。
この技は一日一回しか物理的に使えない。
二回も使えば、骨が折れる。
さぁ、ジャック。
受けてみろ!
「面白い!」
真っ向から打ち合う。
「はああああああああ!」
「うおおおおおおあお!」
バチ、ボリン。
木刀がへし折れて、勝敗は決まった。
俺の持つ木刀は見事に、半ばから崩れ落ちた。
反対に、ジャックの木刀は俺の首を捉えている。
俺の、負けだ。
「実に面白かったぞ。最後のはなんだ?」
「運動エネルギーを溜めて、一点に集中して一気に解放して、爆発的な瞬発力を作り出す、一日一回きりの技」
誰にも見せた事の無い技を使った。それすら真っ向から打ち砕かれた。
今回のジャックは俺にとって、良い闘いをしてくれた。
先程までの闘いの中で俺はジャックの底を見抜けなかった。
まだまだ、自分の観察眼は未熟だと、教えてくれた。
「結局は目標の人物を見つける事は出来なかったか。まあ良い。チャンスまた訪れる。また時間があったら来ても良いかな?」
「もちろんだ。今度は俺と闘おう」
父がジャックと握手を交わす。
刹那、ジャックが片膝を付いて、冷や汗を流しながら薄ら笑いを浮かべる。
「それは、難しいかもしれないな。俺は今、貴方と何万回闘っても、負ける自信がある」
「そうですか?」
「ああ。貴方は化け物だ」
ジャックはそう言い残し、この場を去ろうとする。
「さらば諸君。いずれ、データ世界で会うかもしれないな」
「ジャック!」
「なんだ日向」
「次は俺が勝つ。もう、お前に負けない」
「ふ、楽しみが増えよ。アメリカに帰る前に、もう一戦は確約しよう。俺は約束を守る男だからな!」
ジャックは帰った。
アメリカ代表の探索者⋯⋯凄い人だったな。
「お、来た」
「日向くん?」
全身がめっちゃくちゃいてぇ。
さっきの反動が今、ここに来てやって来た。
本当に、徐々に来るタイプなのが辛いぜ。
晩御飯を終え、風呂も終えて、愛梨が俺の部屋とやって来ていた。
今回もノックは無しで急に入って来た。
俺がスッキリしようとしていたら、一体どうするつもりなんだか。
「ジャックさんの動画見てたの?」
「ああ。気になったからな」
俺はジャックが参加したアメリカ内で行われた大会の映像を見ていた。
一級のモンスターカードを二枚所持している。
だけど、やはり目を奪われるのがジャックだ。
データ世界で使っている武器はとても不思議な形状をしており、様々な武器に変わるツールとなっている。
スキルも当然、それに対応して使っている。
「だよな。やっぱり、あの違和感の正体はコレか」
「どうしたの?」
「見て分からなかったか?」
愛梨は分かっていないようである。
両親は分かっていたと思う。
「俺はジャックと闘って、思ったんだよ。コイツ、剣と言う武器を使っているだけで、技術は剣術じゃないって」
「どゆこと?」
「例えば最初の突き、あれは槍を使っている感じだった。下半身の動かし方は武術の何かだろうな」
「え?」
ジャックの異質さは正にそこにある。
木刀を使っているはずなのに、槍を相手しているかのように感じだ。
様々な武具の技術を取り入れ混ぜて応用する、とても器用な事だ。
俺達が今、剣以外の武器を学んでも、ジャックのようにはいかない。
器用貧乏とも言えるが、ジャックの本分は探索者であり、探索者から見たら十分、万能だ。
「あのぶん回しも、剣ってより斧を使っている感じだ。力強かった」
「凄いね。それは」
「ああ。だけど、今日と同じ条件でもう一戦やったら、俺は負けない。絶対に勝てる」
「凄い自信だね」
「異質の感じが曖昧だったが、この映像を見て確信した。異質の正体がな。だからもう勝てる。剣術だけ見たら、彼は素人が少しかじった程度の我流。そこに他の技術が加わるから強い。俺の剣はジャックに届く。後は決めるだけだ」
「そんなに上手く行く?」
「行くかは分からない。でも、負けない。いざとなったら、必殺技を使う」
「え、何それ! すごく気になる!」
「秘密だ。必殺技はおいそれと言えないんだよ」
この必殺技は現実世界でしか使えないので、あまり見せる機会はないだろうけどね。
ジャックから学べる事は多かった。
今日は負けたけど、次は絶対に負けない。
これは男しての、プライドだ。
「ふふ」
「ん?」
愛梨が軽く笑った。
「あーごめん。嬉しいなーって」
「は?」
「こんなに明るく、元気で、楽しそうな日向くんは久しぶりに見たんだもん。好敵手が現れるって、良いね」
「好敵手、か。どうなんだろうな。ジャックは俺をどう見ていたか分からんし」
アイツの考える事は分からん。分かろうとも思わん。
「そっか。でも、嬉しい。日向くんが楽しそうだと、私も楽しいから」
「なんで?」
「なんでって⋯⋯そりゃあ。す⋯⋯」
『おーい、風呂入ったか?』
「あーごめん。今から入るー。悪いな愛梨、風呂行ってくるわ」
「あ、うん」
赤面している愛梨を通過して、俺は風呂に向かった。
「そう言えば日向くん」
「ん?」
「毎回、私に手加減してた?」
「してるつもりは無い。ただ、現実だと痛いだろ? 愛梨が痛がる姿を見たくないって思ったら、寸止め意識しても、決め手までいかないんだよ。攻撃の前に止まっちゃう」
「それって⋯⋯幼馴染だから? それとも女の子だから?」
「両方じゃないか? あ、でも母さん相手なら全力で叩きのめすと思う! まだ先の話だけど!」
「一度も勝った事ないもんね。私もだけど⋯⋯」
なぜなら、あれは刀を扱う時の動きじゃないから。
混ざりに混ざった、異質かつ異様な技術。
ジャックと言う男は『戦闘』に関して、とても優れている。
「日向よ、お前の秘めている全力を見せろ!」
「どう言う事ですか?」
「リイアがスピードタイプと言うなら、日向はパワータイプ。だが、そのパワータイプにブレが見える。慣れてないんだろ、その動きに。自分の慣れた動きをして見せよ!」
「何を言っているか、分かりません⋯⋯ね!」
「あくまでシラを切るか」
多分だが、昔の俺のような闘い方は絶対にダメだ。
すぐに日陰の正体に辿り着く。この男は。
ギルマスはオークションの情報などを照らし合わせて、日陰の正体、俺を発見した。
だが、ジャックはどうか?
ネットである程度の住処は特定されている。
だけど、剣術だけでどこの場所かまでは特定されてない。
表向き、霧外道場は剣道を教えるのであり、剣術を教える場所じゃない。
それでも、彼はここまで辿り着いた。
数少ないであろう情報で、あと一歩と言う所まで俺を追い詰めているんだ。
昔の俺のような技術を使ったら、この男は確実に気づく。
見た目、声、性別なんて関係ない。
この男がその目で見て、確信した時点で、確実にその人物は日陰となる。
だから絶対に、俺が日陰と思われてはダメだ。
「どうした、もっと、もっと速くなれ!」
ジャックの猛攻を防ぐ。
動きや木刀の扱いがバラバラだ。
躱すのは不可能。防ぐのも難しい。
闘っていて、ここまで気持ち悪いと思った相手は初めてだ。
「ほれ、これがパワータイプの攻撃だ!」
「くっ!」
上から振り下ろされた攻撃⋯⋯なんて重さだ。
崖から落下して来る岩を防いでいるみたいだ。
「受け流し⋯⋯させぬぞ!」
「ちぃ」
弾き飛ばされる。
受け流しからのカウンターも瞬時に見破られるか。
しゃーない。短期決戦と行こう。
「ふぅ」
「なんだ?」
俺はスクワットのような動き、スクワットモドキを行う。
ジャックからは面白そうな目を、他の人達からは頭大丈夫か、の目を向けられる。
やめて、そんな目で俺を見ないで。
と、この辺で良いだろ。
「霧外流、夜霧!」
一瞬で俺はジャックへと肉薄する。
極限まで集中力を高め、心を脳を無にする。
空気すら今の俺の感覚には入らない。
見えているのはジャックの体のみ。
大きく肉体に負荷が生じ、集中力もごっそりと減る。
だけど、この一撃が唯一無二のジャックを倒せるチャンスだ。
この技は一日一回しか物理的に使えない。
二回も使えば、骨が折れる。
さぁ、ジャック。
受けてみろ!
「面白い!」
真っ向から打ち合う。
「はああああああああ!」
「うおおおおおおあお!」
バチ、ボリン。
木刀がへし折れて、勝敗は決まった。
俺の持つ木刀は見事に、半ばから崩れ落ちた。
反対に、ジャックの木刀は俺の首を捉えている。
俺の、負けだ。
「実に面白かったぞ。最後のはなんだ?」
「運動エネルギーを溜めて、一点に集中して一気に解放して、爆発的な瞬発力を作り出す、一日一回きりの技」
誰にも見せた事の無い技を使った。それすら真っ向から打ち砕かれた。
今回のジャックは俺にとって、良い闘いをしてくれた。
先程までの闘いの中で俺はジャックの底を見抜けなかった。
まだまだ、自分の観察眼は未熟だと、教えてくれた。
「結局は目標の人物を見つける事は出来なかったか。まあ良い。チャンスまた訪れる。また時間があったら来ても良いかな?」
「もちろんだ。今度は俺と闘おう」
父がジャックと握手を交わす。
刹那、ジャックが片膝を付いて、冷や汗を流しながら薄ら笑いを浮かべる。
「それは、難しいかもしれないな。俺は今、貴方と何万回闘っても、負ける自信がある」
「そうですか?」
「ああ。貴方は化け物だ」
ジャックはそう言い残し、この場を去ろうとする。
「さらば諸君。いずれ、データ世界で会うかもしれないな」
「ジャック!」
「なんだ日向」
「次は俺が勝つ。もう、お前に負けない」
「ふ、楽しみが増えよ。アメリカに帰る前に、もう一戦は確約しよう。俺は約束を守る男だからな!」
ジャックは帰った。
アメリカ代表の探索者⋯⋯凄い人だったな。
「お、来た」
「日向くん?」
全身がめっちゃくちゃいてぇ。
さっきの反動が今、ここに来てやって来た。
本当に、徐々に来るタイプなのが辛いぜ。
晩御飯を終え、風呂も終えて、愛梨が俺の部屋とやって来ていた。
今回もノックは無しで急に入って来た。
俺がスッキリしようとしていたら、一体どうするつもりなんだか。
「ジャックさんの動画見てたの?」
「ああ。気になったからな」
俺はジャックが参加したアメリカ内で行われた大会の映像を見ていた。
一級のモンスターカードを二枚所持している。
だけど、やはり目を奪われるのがジャックだ。
データ世界で使っている武器はとても不思議な形状をしており、様々な武器に変わるツールとなっている。
スキルも当然、それに対応して使っている。
「だよな。やっぱり、あの違和感の正体はコレか」
「どうしたの?」
「見て分からなかったか?」
愛梨は分かっていないようである。
両親は分かっていたと思う。
「俺はジャックと闘って、思ったんだよ。コイツ、剣と言う武器を使っているだけで、技術は剣術じゃないって」
「どゆこと?」
「例えば最初の突き、あれは槍を使っている感じだった。下半身の動かし方は武術の何かだろうな」
「え?」
ジャックの異質さは正にそこにある。
木刀を使っているはずなのに、槍を相手しているかのように感じだ。
様々な武具の技術を取り入れ混ぜて応用する、とても器用な事だ。
俺達が今、剣以外の武器を学んでも、ジャックのようにはいかない。
器用貧乏とも言えるが、ジャックの本分は探索者であり、探索者から見たら十分、万能だ。
「あのぶん回しも、剣ってより斧を使っている感じだ。力強かった」
「凄いね。それは」
「ああ。だけど、今日と同じ条件でもう一戦やったら、俺は負けない。絶対に勝てる」
「凄い自信だね」
「異質の感じが曖昧だったが、この映像を見て確信した。異質の正体がな。だからもう勝てる。剣術だけ見たら、彼は素人が少しかじった程度の我流。そこに他の技術が加わるから強い。俺の剣はジャックに届く。後は決めるだけだ」
「そんなに上手く行く?」
「行くかは分からない。でも、負けない。いざとなったら、必殺技を使う」
「え、何それ! すごく気になる!」
「秘密だ。必殺技はおいそれと言えないんだよ」
この必殺技は現実世界でしか使えないので、あまり見せる機会はないだろうけどね。
ジャックから学べる事は多かった。
今日は負けたけど、次は絶対に負けない。
これは男しての、プライドだ。
「ふふ」
「ん?」
愛梨が軽く笑った。
「あーごめん。嬉しいなーって」
「は?」
「こんなに明るく、元気で、楽しそうな日向くんは久しぶりに見たんだもん。好敵手が現れるって、良いね」
「好敵手、か。どうなんだろうな。ジャックは俺をどう見ていたか分からんし」
アイツの考える事は分からん。分かろうとも思わん。
「そっか。でも、嬉しい。日向くんが楽しそうだと、私も楽しいから」
「なんで?」
「なんでって⋯⋯そりゃあ。す⋯⋯」
『おーい、風呂入ったか?』
「あーごめん。今から入るー。悪いな愛梨、風呂行ってくるわ」
「あ、うん」
赤面している愛梨を通過して、俺は風呂に向かった。
「そう言えば日向くん」
「ん?」
「毎回、私に手加減してた?」
「してるつもりは無い。ただ、現実だと痛いだろ? 愛梨が痛がる姿を見たくないって思ったら、寸止め意識しても、決め手までいかないんだよ。攻撃の前に止まっちゃう」
「それって⋯⋯幼馴染だから? それとも女の子だから?」
「両方じゃないか? あ、でも母さん相手なら全力で叩きのめすと思う! まだ先の話だけど!」
「一度も勝った事ないもんね。私もだけど⋯⋯」
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