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第17話グダグダ感が激しいと思うが気の所為であると言い続ける

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 昼食をとにかく安いのを選ぼうとしたら西園寺が「食べたい物を頼んでください」と言ってくれた。
 俺達の食べたい物。安ければ良い。よし、安いのを頼もう。

「⋯⋯最低でも5000円超、だと。温泉なんてやばいんだ」

「まぁ、ここは有名な温泉ですからね」

「雪姫さん。もし訳ないです」

「良いんですよ。私が拓海君と来たかったので」

 そう言ってメニュー表で口元を隠す西園寺。
 その姿にちょっぴり、ドキンとした。本当にちょっぴりだぞ! 本当だかんな!

 でも、折角来たし、最近胸糞悪い事も多かったし、奥さんも違う所で羽を伸ばしているし、錯角の初めての温泉だし、愛海達にも良い思い出にして欲しい訳だし、折角だし、贅沢しよう。

「お兄ちゃん。そんなに悩まなくても私達は安いのにするから」

 愛海⋯⋯ダメだ!
 折角の温泉なんだ!
 贅沢しよう。そう決めた。今!

「好きな物、頼もう」

 と、言う訳で好きな物を頼んだ。

 頼んだ物を食べていると目の前からスプーンが差し出された。
 ビビンバを頼んだ西園寺からビビンバのおすそ分けらしい。

「た、拓海、君。あ、アーン」

「パクっ!」

「愛海さん! 何するんですか!」

「えー雪姫さんが私に対して差し出していると思ったんだですーすみませんー(棒)」

「貴女はどうして私達の親睦を邪魔するんですかねー」

「体が勝手に動くんですよー」

「へぇーでは良い精神病院を紹介しましょうかー?」

「結構ですー」

 2人の間に火花が花火のように舞い散る。

「お兄ちゃま、2人はどうしていつも喧嘩するの?」

「分からん」

 俺一生の謎。
 俺は自分の頼んだオムライスをスプーンで掬い、海華の口元に持って行く。

「1口食べる?」

「うん! あーん」

「どう?」

「美味しいよ。はい、私もお返し」

 海華が頼んだのはカツカレー、カツを1口サイズに切ってカレーライスと一緒に差し出してくれる。
 それを俺はパクリと食べて「美味い」と笑顔で応える。
 海華も笑顔を見せてくれ、俺もほっこりする。

 再びオムライスに目を戻すと、視界の前と右から圧を感じた。
 それがなんかのモヤとなって見える程には強い圧だ。

 見ると、西園寺と愛海が口を開けてこっちに見せて来ていた。
 西園寺は少し恥ずかしいようだった。はしたないのではないだろうか?

 愛海、西園寺の順で海華にやった用にする。
 愛海と西園寺も海華の真似(?)をしてお返しをしてくれる。

「私が最後。間接キスですね」

 西園寺がボソリと呟いた何かを聴き逃した俺はオムライスにスプーンを伸ばす。
 だが、手が滑りスプーンを床に落としてしまう。

「しまった」

「えぇ~」

 スプーンを交換して貰った。

 昼食を終えて食休みをしていると、聞いた事のある声が聞こえた。

「い、伊集院君!」

「おや、これは良いネタが」

「おい待て流石に勝手に撮られるのはプライバシー侵害だ」

 そこに居たのは桜色の髪色で似たような顔をした双子、愛桜と凛桜である。
 何故ここに居ると言う疑問もあるが、土曜日だし家族で来ているんだろう。
 俺も家族総出だしな。

「お兄ちゃん、この人達は?」

「おやおや伊集院さん三股ですか?」

「い、伊集院君はそんな人じゃないよ!」

「お兄ちゃん本当にこの人達誰?」

「分からん」

 同級生か、クラスメイトか、分からない。
 相手は俺の名前を知っているようだが、俺は知らない。
 2人の会話を聞いて名前を知った程だ。

「(わぁ。たまたまチケットが手に入って、興味なかったけど勿体ない気がして来たらこんなラッキーが起こるなんてぇ! もう最っ高! チケットくれたメイドに感謝! あぁ。伊集院君がこんな近くでしかも浴衣だぁ。他の四人《モブ》が居なかったら完璧だったのに)」

「姉貴、なんか最低な事考えてへん?」

「よく分かんなーい」

 そう言って俺の前に座る凛桜。
 あからさまに西園寺が嫌な顔をする。愛海も西園寺と同じような威圧を放つ。
 それを諸共しない凛桜。

 西園寺は冷たい圧、愛海は深い形容しにくい圧を放っている。

「お兄ちゃま。お姉ちゃんと雪姫お姉ちゃんがこひゃい」

「俺もだ」

 凛桜も桜のような温かみのあるオーラで圧を押し返している。
 その三角形に挟まれている俺と海華。
 海華はその間をトテトテと抜け出し、愛海の横に座った。

「君、なんてお名前ですか?」

「⋯⋯」

「あの、聞こえてますか?」

「怪しい人には言葉を聞いてちゃダメだから」

「うちは姉貴と違って怪しくないよ。ほんとだよ。うちは愛桜って言うねん。よろしゅな」

「⋯⋯」

「お兄ちゃんとは同級生、色々話聞きたくない?」

「聞きたい!」

「(可愛らしい)」

 さて、海華は上手く逃げたようだが、この無言の空気どうしよう。
 他の客人も気になっているのかずっと見てくる。
 見んな! こっち見んな!
 見世物じゃねぇぞ! だが、俺でも見てしまうかもしれない。

 しかし、当事者になるとこう心臓が潰されかねない変な圧がのしかかって来て⋯⋯辛い。
 折角休みに来ているのに無言の圧が3方向からぶつかり合い三角形を作り出してその中に俺が居る。

「ふん」

「やっ」

 右側の腕に西園寺が絡みつき、反対の左側の腕に愛海が絡みつく。
 左右から感じる柔らかみを感じながら俺は冷や汗を流す。
 今、桜のような温かみのあるオーラから、般若が現れ怒りの熱をオーラに加えて、笑顔で撒き散らす。

 他にも、他の客人の人からの目が辛い。
 完全に嫉妬と怒りが混ざった目を感じる。
 男子友で来ている人達なのか、数人の男子達の集まりがあり、その人達がコショコショ話をしている。
 尚、コショコショ話と言ったが小さい声でやっているとは言っていない。

「なんだアイツ羨まけしからん場所変われ」

「俺は右の子かな~」

「どっちも可愛いが、俺は左の銀髪の子かな~。美しい。なんで1人で⋯⋯ハーレムでもしてんのか! 自慢か! 〇ね!」

「あのピンク髪の人も良いよな。あの男ファッ〇ン」

 なんか、酷くない?
 不可抗力と言うか、俺何もしてないし、左側の愛海に関しては妹ですが。
 似てませんか? そうですか? 言うな。気にしてんだよ!
 俺と愛海、海華の顔が少し違うのにはきちんと理由があんだよ。
 胸糞悪い話だが今は忘れるがな!

 あーあーこの重い空気どうにかなんねぇーかなー!
 よし、風呂行こう。そうしよう。

「あ⋯⋯」

「拓海君の事を悪く言った?」

「お兄ちゃんにそんな言葉を⋯⋯」

「伊集院君に対して⋯⋯」

 3人の目が他のお客さんに向けられる。
 西園寺からは凍えるような冷血のゴミを見るような圧が込められる冷めた目。
 愛海からは海の底に引きづり込まれそうな深い深い圧の目。
 凛桜からは怒りの業火とでも呼ぶべきか、西園寺とは対象の圧を秘めている。

 さっきまで野次馬となっていた人達が黙った。
 そして、バツが悪そうに目を逸らし話を逸らし始めた。
 さ、3人とも超怖い。
 温泉の人も来たし。
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