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才色兼備のクール系ヒロインの作る料理は見た目と味は全く比例しないらしい

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 今日は月曜日。
 ゴールデンウィーク前の最後の登校日になる。
 妹の愛海が早起きして俺の弁当を作ってくれたようだ。
 ほんと、可愛くて自慢の妹だ。
 ただ、この弁当箱は知らない。

「どうしたのコレ?」

「この屋敷のメイドさんがゴミと勘違いして、粉砕して捨てたらしくて、謝罪として買って来てくれた物になります」

「うん。まぁ、うん。うん。分かった」

 海華と愛海を連れて学園へと向かう。
 登校の途中で海華は別れる。
 海華は集団登校の集合場所に向かうのだ。
 愛海とは途中まで一緒である。

「私、お試しでも彼女なんですけど、将来のお嫁さんなんですけど、なんで1番外側に居るんだろ⋯⋯はは」

 学園に着くと、神威を発見した。
 神威もこっちに気づいたようで茶化しながら近くに寄って来る。

「朝から一緒に登校とは、お暑ですね」

「そ、そんな。えへへ」

「そりゃあ通学路同じなんだし。あ、住所変更の手続きとかしないと」

「拓海君。大丈夫ですよ。全部終わってますから、3週間前に」

「うん。待って、何を待って良いか分からないと思うけど待って、それはそれで問題あると思うよ?」

「父様の権力があれば問題なかったです」

 凄い。社会の闇をここで垣間見た気がするよ。

 教室に入り、互いに席に着く。
 俺は窓側の1番後ろの席と言う超最高のポジションだ。
 で、隣は神威。
 西園寺は廊下側の1番前の席であり、正に真反対の席である。
 教室、なんか落ち着くな。

 授業中、気になって西園寺の方を見ると、相手もこっちを見て、顔を赤らめて手を振って来た。
 神威がニヤニヤしているのは無茶苦茶ムカつくが、俺も返しておく。
 授業に集中すべきかと思われるだろうが、国語の担任は最初は自分の話をする。
 面白おかしく話すので人気の担任の1人である。

 で、昼休み。
 この時は毎回節約して愛海が頑張って作ってくれた弁当を教室で神威とだべりながら、時に他の友達も来て食べる。
 基本は神威と2人だ。何故かって? 他の人は全員彼女持ちなんだよ。
 だが、今日は違うようだ。

 俺の前に銀髪を靡かせて凛々しく立ち、モジモジしている美少女が一人。
 その行動に教室の全ての生徒の目が釘付けになる。
 何故なら、大抵その人は教室で自分の席で弁当を食べているからだ。
 そう、西園寺雪姫は。

「あ、あの。拓海君。一緒に食べませんか?」

「⋯⋯うん」

「⋯⋯ッ! やった」

 俺の腕を引っ張り教室の外に出る。
 神威はさっきまでのニヤニヤの顔では無く、冷や汗をかいている。
 俺も分かる。教室から感じる圧が凄いんだ。
 怖い。

 場所は屋上であった。
 この学園は屋上は禁止されている場所では無い。
 だから普通に他の人も居る。
 だけど、そのリア充達も俺、そして西園寺の方を見る。
 誰とも話した所を見られた事がないと言われている(多分)西園寺が人と喋っているのだ。
 それりゃあ注目され悪目立ちするわ。

「あの。弁当をお作りしたので、どうか食べてくれませんか?」

「ごめん。愛海が作ってくれた物があるんだ」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「ごめん」

 怖い怖い。
 イライラの時のオーラが冷気となって、ゴールデンウィークが明日に控えている暖かい季節なのに、右手が震える。
 他の人も震えている。寒い。
 クール系が怒ると熱の圧では無く冷気を放つのか。

「で、でも。雪姫さんの弁当も食べてみたいな」

「⋯⋯ッ! はい!」

 はい模範解答! 流石俺!
 ラインの使い方も2時間でマスターした男だぜ。

 愛海が作ってくれた弁当は普通で、西園寺が作った弁当も普通だった。
 最初に西園寺の作ってくれた弁当の卵焼きを食べる。
 凄く期待した目で見てくるのだ。
 このキラキラとした目に俺は勝てない。

 卵焼きの見た目は綺麗だ。
 普通に美味しそうに見える。パクリと食べる。
 頭に登る熱。
 めっちゃ辛い。

「なにこれ、すごく辛い」

「はい。隠し味にデスソースを使って見たんです。パンチがあって良いと思いまして。もしかして、お口に合いませんでした?」

「いや、めっちゃ辛いけど、辛いの平気だから大丈夫。普通に美味しい。ただ、びっくりした」

 よくデスソース使って綺麗な黄色の卵焼きを作れた物だ。
 愛海の弁当の卵焼きは少し焦げ目が付いている。
 使い慣れてない道具で頑張って作ってくれたんだろう。
 普段はこうならない。
 一口食べる。さっきの辛味を打ち消してくれる甘味を感じる。
 うん。西園寺の先に食べてから愛海の食べよう。

「これは?」

「カボチャコロッケです。中身はゴーヤとピーマンです」

「カボチャとは?」

「中を見てください」

 皮を剥いで中身を見ると、確かにピーマンとゴーヤで『カボ』とあった。
 成程、カボチャのカボがあるからカボチャコロッケ、と。
 詐欺料理のレベルを限界突破していると思う。

「美味い」

 ピーマンとゴーヤの苦味を他でしっかりとカバーされて、普通に美味い。

「⋯⋯ッ! 良かったです」

 他にも、ケチャップと思われた物が青紫蘇《あおじそ》の小さなハンバーグや、はちみつを内部に仕込んだ肉団子。
 ちょっと?変わった中身だったが普通に美味かった。
 米が弁当2つ分だから腹は本当に溜まったよ。
 愛海も西園寺もどっちの弁当も美味かったなり。

 ただ、流石に目立ちすぎたな。
 西園寺は1部には絶対の人気があり、普通の人気もある。
 伊達にクール系美少女ランキング1位と言うレベルである。
 何が言いたいかと言うと、今後の学園生活がとても心配である。
 ねちっこいいじめとかがありそうで。

 だが、何よりも警戒すべきは『生徒』じゃない。
 もしも西園寺と俺が仲良くしている事が広まったら⋯⋯いやまぁ1日じゃ広まらんか。
 どっかで『弱みを握られている?』とか『なにかのお礼?』とか、そんな感じに広がってくれるだろう。
 あれ? 前者は完全に俺悪役じゃね?

「拓海君、一緒に帰りましょうね」

「部活は?」

「月曜日ですよ? それに私、部活入ってませんし」

「そうなんだ」

 この学園は部活は自由だ。
 俺の周りに部活をやっている人はいない。
 中学生である愛海は当然入っているのだが、家庭の事情で免除されている。
 理解ある教師で、三者面談で俺が号泣して困らせたのはいい思い出だ。
 三者面談、当時俺も中学生。

「よ、おかえり」

「ただいま?」

「俺は寂しく1人で食べてたよ」

「あそう。で、教室変わった事あった?」

「軽いなぁ。うん。周りを見て」

 周りを見る。
 様々な視線で睨まれる俺。
 西園寺は平然と自分の席へと戻る。
 西園寺、強いなぁ。俺は凄い気になる。
 てか、視線は殆ど俺に注がれているのに物申したい!
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