ねがい星、かない星

矢野 零時

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 どのくらい、時がたったのでしょうか?
 カモメが目をあけると、白い服をきた女の人がのぞいていました。
「きがつきましたか?」
 声をかけてきた白い服の人は、看護師でした。
「はい」と、カモメは思わず声をあげました。自分のあげた声を聞いて、カモメは驚きました。その声が人間の声だったからです。それに、カモメはベッドに寝ていました。
「それでは、先生をよんできます」
 そう言って、看護師はでていきました。
 残されたカモメは、自分の羽を目の高さまであげて、ふたたび驚いていました。両方の羽には、五本の指がついた人間の手になっていたからです。カモメは体をおこして、窓にうつる自分の姿をみつめました。
 そこには娘が好きな若者がいたのです。
 カモメは若者に変わっていたのでした。

 一月後、若者になったカモメは、娘がいる北の港に帰ってくることができました。若者は黒潮丸にのっていた船長やほかの漁師たちといっしょに連絡船から港におりたちました。でも、迎えにきていた人たちの中には、娘の姿はなかったのです。手紙をだしていましたので、娘が知らないはずはありません。
 若者は、ほかの漁師たちを迎えにきていた家族の人たちに娘のことを聞きました。でも、家族の人たちは娘がどうしているのか、はっきりと教えてくれないのです。不安にかられた若者は、丘の上にある家に向かって坂道を急ぎました。
 坂道の途中に白い教会があります。そこから、結婚したばかりの二人が出てくるのがみえました。
「あっ」と、若者は声をあげました。
 ウェディングドレスをきた花嫁は若者が好きな娘だったからです。娘は顔もふっくらとして、笑顔をうかべていました。
 そして、花婿は、娘の世話をしていた医者だったのです。
 若者は、急いで木の影にかくれました。ここで、若者がでていけば、娘が不幸になることがわかっていたからです。
 若者は、本当に娘を愛していましたから・・・。
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