ねがい星、かない星

矢野 零時

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 ヒトデを助けた後、カモメは大きく羽をはばたたかせ、港町に向かって飛んでいきました。カモメは一日に一回、丘に飛んでいくことを決めていたからです。それは、いつも気になっている娘にあうためでした。
 丘の上にある大きな家の窓から、娘はいつも海をみつめていました。娘は、だんだんやせていきます。食べる物も娘ののどを通らないのでしょう。

 そのわけはカモメにはわかっていました。

 今では、だいぶ前のことです。娘は港町に住む若者が好きになり、町中のカフェテラスで二人がよりそっているのを、カモメは何度もみかけていました。
 でも、若者は漁師だったのです。大きな魚をとるために黒潮丸という船にのり南の海にいってしまいました。
 そして、まだ船も若者も、もどって来ていなかったのです。

 丘の家から、黒いカバンを下げて医者がでてきました。医者は、しばらく心配そうに窓の娘をみあげていました。それから、大きなため息を一つつくと、トボトボと坂道をおりていきました。
 カモメは、いつもより以上に娘に近づき、窓の前を飛びました。娘の瞳は、涙で光っています。娘はいつもやってくるカモメに気づきました。
 「カモメさん、できるなら、あの人をつれて帰ってきて!」
 娘は、カモメに向かって叫びました。
 
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