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4被害者

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 生田弁護士事務所は中央区の官庁街に建てられている店舗ビルの七階にあった。このビルの近くに法務省支部庁舎や地方裁判所の建物が建っていた。

 いつものように佐川たちは、このビルの管理事務所に顔を出して、覆面パトカーを駐車場におかしてもらった。その後、エレベターにのり七階でおりた。佐川たちは、通路を歩いて左右にある部屋のドアを見て歩いた。ドアには入っている事務所の名前が書かれている。入っているのは司法書士や税理事務所など、法令関係者の事務所が多かった。

 やがて、生田弁護士事務所と書かれたドアを前にした。
 佐川は、軽いノックをしてからドアを開け中に入った。
「生田さんはおられますか?」
「いま、出かけておりますが、予約をとられておられますか?」
 ドアの出入口近くに置かれたデスクを前にすわっていた女性が立ち上がってきた。
「いや、とっておりませんが」と言いながら、佐川は警察手帳を掲げて見せた。背後で、近藤も警察手帳を出して見せていた。

 窓際に二つの机が並べられていた。その一つにすわっていた男が立ってきた。
「何か、ごようでしょうか?」
「あなたは?」
「生田弁護士の補佐をしている岸本保志ですが」
「そうですか。この写真を見ていただけますか?」
 佐川は胸ポケットから先程鑑識課が写した遺体の写真を出して岸本に見せた。写真を手に取り、しばらくの間、岸本は写真をじっと見ていた。
「これは所長だ。これは本当の写真ですか?」
「ええ、本当の写真ですよ」
「どうして、また?」
「何者かに射殺されたようです。本通りへ向かう道路の交差点近くで殺された。生田さんはどこへ行こうとしていたんですか?」
「わかりません。電話が来て出かけて行ったのですが、何も聞いてはいない」
「しかし、生田さんは動きまわっていた。いま、なんの事件をあつかっていたのですか?」
「井上光弘が起こした交通事故をご存じでしょう。ニュースで流されていた。その刑事事件を担当していたんですよ。経済未来研究所の顧問弁護士をやっておりましたので、なんとしてでも、無罪をとるように言われていたようです」
「そうでしたか。まず生田さんの遺体を正式に本人確認をしていただけませんか?」
 岸本は無言でうなずいていた。
「ちょっと、失礼をしますよ」
 佐川が警察専用携帯を出して、署の刑事課に連絡をとっていた。
「中の島警察署の霊安室に遺体を置かれることになりましたので、まことにすいませんが午後四時以降には運ばれていますので。署を訪ねて確認をお願いしたい。その頃までには、私らも署に戻るつもりでおりますので」
「分かりました。本人であるかどうかの確認は肉親の了解をもらう必要があります。その時には、生田の奥さん佳代子さんを連れて行きます」
 岸本のその言葉を聞いた佐川は、再び署に電話をして、岸本と生田の妻、佳代子が遺体確認に行くことを伝えてから、生田弁護士事務所を後にした。





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