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第9話 新たな相談ごと
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山本雄造は、ニュースに取りあげられ、正義の味方として大評判になってしまった。その上、取材にきた記者に聞かれて「これからも街の中を見回って、犯罪をふせいでみせます」と言ってしまったのだ。これでは、何もしないわけにはいかない。
口は災いの元だね。それからの山本は大変だったと思う。山本は華麗学園高校で防犯見回り隊を結成し、放課後に街中を見回りを始めたのだ。当然、そのことはテレビでニュースとして放映されてしまった。
その日は薄曇り。二時間目の休み時間に、白川さんがぼくのクラスにやってきて、笑顔でぼくをみつめた。
「高校生の山本さんが、見回りをしてくれていますので、私たちが行っていた見回りは終りにいたしますわ」
「ええ、そうですか。そうですね。わかりました」と言って、ぼくは笑顔になっていた。これで、のんびりした生活に戻れると思ったからだ。
さらに半月後、授業が終わり、ぼくが学校をでていくと山本が校門の前に立っていた。
「あれ、どうかしたの? 高校はまだ授業をしている時間だよね」
「そうだね。でも今日は特別なわけがあるんだ。腹が痛いと言って、早退届けをだしてきているよ」
「え、どうしてですか?」
「ともかく、たけしくんの力を借りたいと思ったからね」
「一体、何があったんですか?」
「ここで話をするのは、まずい。人に聞かれてしまう。そうだ。学校近くにある小公園きずなに行って話をさせてもらうよ」
そう言われたので、ぼくは山本について行くしかなかった。きずなにあるベンチに、ぼくが山本といっしょにすわると、すぐに山本は話し始めた。
「昨日のゆうぐれ、街中の見回りに行った時のことなんだ。ビルとビルとの間に、かくれて顔を突き合わせている怪しげな二人を見つけたので、そこに入っていくと、二人は左右に分かれて逃げていったんだよ。その時にクマのぬいぐるみを落としていったので、それを家にもって帰り背中を開けると、ビニール袋に錠剤のような物が入っていた。すぐに麻薬だと思ったよ。だから、それを警察に届けようと思っていたんだけど、その前に家に電話があった。妹のめぐみをつかまえていると言われたんだよ。たしかに、暗くなっているのに、めぐみは帰ってきてはいなかった」
そこまで話をした山本は顔をしかめた。
「めぐみを返してほしければ、今日クマのぬいぐるみを大橋の下に持って来いと言われた。もちろん、警察にこのことを言わずに、ぬいぐるみを持ってこなければ、めぐみの命はないとも言われたんだよ」
「やはり、これは警察に知らせた方がいいですよ」
山本さんは、首を左右にふっていた。
「そんなことをしたら、妹の命がなくなる」
ぼくは思わず腕を組み、首をかしげてしまった。背後には、小学生が相手にすべきではない悪の組織が隠れていることを感じたからだ。
「ともかく、めぐみの命を救うことが第一なんだ。それをできるのは、たけしくん、きみしかいない。大橋の下にいく時間は、午後三時なんだ。時間があまりないんだよ」
これじゃ、たしかに断る理由を考える時間もない。
「でも、悪い人たちに顔を知られたくないな」
「そう言うだろうと思って、マスクを買ってきたよ」
「どんなマスク?」
「タイガーマスクだよ」
そう言った山本さんは、風呂敷につつんだ物をぼくに手渡した。風呂敷をひろげると黒と黄の縞模様がついている頭巾だった。
口は災いの元だね。それからの山本は大変だったと思う。山本は華麗学園高校で防犯見回り隊を結成し、放課後に街中を見回りを始めたのだ。当然、そのことはテレビでニュースとして放映されてしまった。
その日は薄曇り。二時間目の休み時間に、白川さんがぼくのクラスにやってきて、笑顔でぼくをみつめた。
「高校生の山本さんが、見回りをしてくれていますので、私たちが行っていた見回りは終りにいたしますわ」
「ええ、そうですか。そうですね。わかりました」と言って、ぼくは笑顔になっていた。これで、のんびりした生活に戻れると思ったからだ。
さらに半月後、授業が終わり、ぼくが学校をでていくと山本が校門の前に立っていた。
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「そうだね。でも今日は特別なわけがあるんだ。腹が痛いと言って、早退届けをだしてきているよ」
「え、どうしてですか?」
「ともかく、たけしくんの力を借りたいと思ったからね」
「一体、何があったんですか?」
「ここで話をするのは、まずい。人に聞かれてしまう。そうだ。学校近くにある小公園きずなに行って話をさせてもらうよ」
そう言われたので、ぼくは山本について行くしかなかった。きずなにあるベンチに、ぼくが山本といっしょにすわると、すぐに山本は話し始めた。
「昨日のゆうぐれ、街中の見回りに行った時のことなんだ。ビルとビルとの間に、かくれて顔を突き合わせている怪しげな二人を見つけたので、そこに入っていくと、二人は左右に分かれて逃げていったんだよ。その時にクマのぬいぐるみを落としていったので、それを家にもって帰り背中を開けると、ビニール袋に錠剤のような物が入っていた。すぐに麻薬だと思ったよ。だから、それを警察に届けようと思っていたんだけど、その前に家に電話があった。妹のめぐみをつかまえていると言われたんだよ。たしかに、暗くなっているのに、めぐみは帰ってきてはいなかった」
そこまで話をした山本は顔をしかめた。
「めぐみを返してほしければ、今日クマのぬいぐるみを大橋の下に持って来いと言われた。もちろん、警察にこのことを言わずに、ぬいぐるみを持ってこなければ、めぐみの命はないとも言われたんだよ」
「やはり、これは警察に知らせた方がいいですよ」
山本さんは、首を左右にふっていた。
「そんなことをしたら、妹の命がなくなる」
ぼくは思わず腕を組み、首をかしげてしまった。背後には、小学生が相手にすべきではない悪の組織が隠れていることを感じたからだ。
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