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第8話 これが見回りなの?
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放課後、白川さんに待っているように言われたけれど、ぼくは一回家に帰った。ランドセルを置き、顔を隠せる物はないかと父さんに聞くと、マスクとサングラスを手渡された。なぜそんな物が必要なのかと父さんは聞いてこなかった。
外出前にきたジャンバーのポケットにマスクとサングラスを入れると、ぼくは学校の門の前に戻った。
生徒会の打ち合わせが終ったのか、正夫が出てきたので、ぼくの方から声をかけた。
「正夫くん、見回りいかないの?」
「ぼく、呼ばれていないんだ。そうだ。今日ピアノのレッスンがあったんだ」
と、正夫は話をずらして帰っていった。どうも逃げ出したとしか思えない。やがて、白川さんがでてきた。
「お待たせ、今日は西銀座商店街に行きましょう」
言われるままに、ぼくは白川さんの後に続いた。
やがて、繁華街にあるコンビニ・ハローにやってきた。場所がいいだけに、多くの人がその前をとおっていく。白川さんは通りの端にたたずんだので、ぼくは隣にたった。
「玲子ちゃん、来てくれたのね」
声がしたので、ふり返ると、白川さんと同じくらい、いやそれ以上美人の女性がやってきた。それも華麗学園高校のセラー服をきていたのだ。隣に背の高い男性がついていた。背の高さは百八十センチはありそうだ。
「あんたが妹の玲子さんかい。洋子さんから、話を聞いているよ。勝気なんだってね。でも、今回のことは俺にまかせてくれよ」
「あんたは、誰よ?」
「あんたはないだろう。俺は洋子さんの同級生。山本雄造だよ」
「あっそう。お姉ちゃん、今日こそ。ちゃんとしないとだめよ。いつまでも、こんなことを続けさせるなんて」
「わかっているわよ」
「私の方も、頼りになる人を連れてきたわよ。たけしくん」
そう言われたので、ぼくは洋子さんに頭をさげた。
何も考えたくないぼくでも、事態を理解し始めた。白川さんのお姉さん、洋子さんは脅かされてお金を盗られているのだ。大人なら、かつあげと言っていたところだ。
思ったとおり、男たちがやってきた。のっぽ、小太り、それにあごがごつい、あご男の三人だ。
「洋子さん、お金持ってきてくれたかい?」と、あご男が洋子さんに声をかけてきた。
「三万円持ってきましたから、私の学生証を返してください」
「いつでも、返せるように持ってきているよ」
あご男は胸ポケットから学生証を出してみせた。すぐに洋子さんは金魚の絵のついたサイフから万札三枚をとりだすと、それをあご男に手渡していた。だが、あご男は学生証を洋子さんに返さずに、また胸ポケットに戻したのだ。
「あんたら、いつまで、こんなことをやるつもりなんだ」
そう言って、山本はあご男の手をつかんで三万円をとりあげた。すると、あご男の隣にいた小太りが山本の腹を蹴りあげたのだ。山本は苦痛で前に倒れ、ひざをついていた。そして、手に持っていた三万円を地面の上におとしたのだ。待っていたようにのっぽが山本の顔面をこぶしで殴り、顔にはたんこぶができ、赤くはれあがっていた。
このままでは、山本は三人にボコボコにされてしまう。そう思ったぼくは白川さんの後ろでマスクをしてサングラスをかけると、白川さんの前にすばやくおどりでた。山本の顔をもう一発殴ろうとしていたのっぽの右手をつかんで、ぼくは握りしめた。こぶしの骨はこまく砕け、もうその手で人を殴ることができない。今度は、回し蹴りで小太りの顔を蹴りあげた。ほほの骨はくだけ、顔は変形していった。ふりおろした足であご男の足を蹴ってやった。ひざから下の足の骨はおれ、倒れていった。
三人は、悲鳴とも言えない大声をあげて地面の上をはい回っている。
「あくどい真似をするから、こんなことになるんだ!」
山本は荒い息を突きながら、たちあがり大声をあげていた。
白川さんは、のたうち回っている男たちの間に入り、三万円をひろい、あご男に近づき胸ポケットに手を入れて学生証をつかみだすと、それらを持って洋子さんのところにいき「はい」と言って渡していた。
「このままにしておく訳には、いかないな」と、山本はスマホを出して警察に電話をしていた。
やがて、サイレンがなり、パトカーがやってきた。車からおりてきた警察官の一人は恐喝していた男たちがひどい怪我をしているのを見て、すぐに救急車を呼んでいた。
山本は、警察官たちを前に事件の経過を話しだし、まるで三人組を相手に一人で戦ったような話をしていた。やがて、警察官たちは、洋子さんにも事情聴取を始めた。
「せっかく、ここまで来たのだから、街の中を見て回りましょう」と言って白川さんは歩き始めた。しかたなく、ぼくはマスクをはずしサングラスをとって後について行くしかない。白川さんはタバコをすっている高校生たちをみつけると、大胆にも注意をしていた。そんな白川さんを見ていて、ぼくはひやひやし続けていたのだった。
外出前にきたジャンバーのポケットにマスクとサングラスを入れると、ぼくは学校の門の前に戻った。
生徒会の打ち合わせが終ったのか、正夫が出てきたので、ぼくの方から声をかけた。
「正夫くん、見回りいかないの?」
「ぼく、呼ばれていないんだ。そうだ。今日ピアノのレッスンがあったんだ」
と、正夫は話をずらして帰っていった。どうも逃げ出したとしか思えない。やがて、白川さんがでてきた。
「お待たせ、今日は西銀座商店街に行きましょう」
言われるままに、ぼくは白川さんの後に続いた。
やがて、繁華街にあるコンビニ・ハローにやってきた。場所がいいだけに、多くの人がその前をとおっていく。白川さんは通りの端にたたずんだので、ぼくは隣にたった。
「玲子ちゃん、来てくれたのね」
声がしたので、ふり返ると、白川さんと同じくらい、いやそれ以上美人の女性がやってきた。それも華麗学園高校のセラー服をきていたのだ。隣に背の高い男性がついていた。背の高さは百八十センチはありそうだ。
「あんたが妹の玲子さんかい。洋子さんから、話を聞いているよ。勝気なんだってね。でも、今回のことは俺にまかせてくれよ」
「あんたは、誰よ?」
「あんたはないだろう。俺は洋子さんの同級生。山本雄造だよ」
「あっそう。お姉ちゃん、今日こそ。ちゃんとしないとだめよ。いつまでも、こんなことを続けさせるなんて」
「わかっているわよ」
「私の方も、頼りになる人を連れてきたわよ。たけしくん」
そう言われたので、ぼくは洋子さんに頭をさげた。
何も考えたくないぼくでも、事態を理解し始めた。白川さんのお姉さん、洋子さんは脅かされてお金を盗られているのだ。大人なら、かつあげと言っていたところだ。
思ったとおり、男たちがやってきた。のっぽ、小太り、それにあごがごつい、あご男の三人だ。
「洋子さん、お金持ってきてくれたかい?」と、あご男が洋子さんに声をかけてきた。
「三万円持ってきましたから、私の学生証を返してください」
「いつでも、返せるように持ってきているよ」
あご男は胸ポケットから学生証を出してみせた。すぐに洋子さんは金魚の絵のついたサイフから万札三枚をとりだすと、それをあご男に手渡していた。だが、あご男は学生証を洋子さんに返さずに、また胸ポケットに戻したのだ。
「あんたら、いつまで、こんなことをやるつもりなんだ」
そう言って、山本はあご男の手をつかんで三万円をとりあげた。すると、あご男の隣にいた小太りが山本の腹を蹴りあげたのだ。山本は苦痛で前に倒れ、ひざをついていた。そして、手に持っていた三万円を地面の上におとしたのだ。待っていたようにのっぽが山本の顔面をこぶしで殴り、顔にはたんこぶができ、赤くはれあがっていた。
このままでは、山本は三人にボコボコにされてしまう。そう思ったぼくは白川さんの後ろでマスクをしてサングラスをかけると、白川さんの前にすばやくおどりでた。山本の顔をもう一発殴ろうとしていたのっぽの右手をつかんで、ぼくは握りしめた。こぶしの骨はこまく砕け、もうその手で人を殴ることができない。今度は、回し蹴りで小太りの顔を蹴りあげた。ほほの骨はくだけ、顔は変形していった。ふりおろした足であご男の足を蹴ってやった。ひざから下の足の骨はおれ、倒れていった。
三人は、悲鳴とも言えない大声をあげて地面の上をはい回っている。
「あくどい真似をするから、こんなことになるんだ!」
山本は荒い息を突きながら、たちあがり大声をあげていた。
白川さんは、のたうち回っている男たちの間に入り、三万円をひろい、あご男に近づき胸ポケットに手を入れて学生証をつかみだすと、それらを持って洋子さんのところにいき「はい」と言って渡していた。
「このままにしておく訳には、いかないな」と、山本はスマホを出して警察に電話をしていた。
やがて、サイレンがなり、パトカーがやってきた。車からおりてきた警察官の一人は恐喝していた男たちがひどい怪我をしているのを見て、すぐに救急車を呼んでいた。
山本は、警察官たちを前に事件の経過を話しだし、まるで三人組を相手に一人で戦ったような話をしていた。やがて、警察官たちは、洋子さんにも事情聴取を始めた。
「せっかく、ここまで来たのだから、街の中を見て回りましょう」と言って白川さんは歩き始めた。しかたなく、ぼくはマスクをはずしサングラスをとって後について行くしかない。白川さんはタバコをすっている高校生たちをみつけると、大胆にも注意をしていた。そんな白川さんを見ていて、ぼくはひやひやし続けていたのだった。
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