ぼく、たけし

矢野 零時

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第11話 いそうろう 

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 次の日、ぼくは学校から帰って、売り場でたい焼きをしている父さんの脇をとおって、自分の部屋にいこうとした。
「たけし、ちょっと、まちなさい」
 そう言った父さんは、驚くくらいあわてていた。
「なにさ、どうかしたの?」
「おまえの部屋に、これから一緒に住んでもらうものがいるんだ。仲良くしてやってくれ」
「ぼくの部屋に。どんな人がいるのさ」
「人とは言えないかもしれんな。古くからの知り合いだ。まあ、会ってみれば、わかるよ」
 靴をぬいで、家の中にあがると、ぼくは恐る恐る歩き、自分の部屋のドアをあけた。ぼくは部屋の中を見廻す。すると、机のわきに、一匹の猫が上体を起こしてすわっていたのだ。ほとんどが白毛だが、頭の辺りには黒い毛が、肩のあたりには茶色の毛がある。つまり、三毛なのだ。だが、大きさが並みではない。大きくて秋田犬やシェパードほどの大きさがあるのだ。思わず、ぼくは後ろにさがり、部屋からでていこうとした。
「どうもすいません。他の所に行くことがなかったものですから」
 ぼくは「ええっ」と声をあげていた。驚いて当然だろう。ネコが人の言葉を話しだしたのだから。
「私は猫なのですが、長生きするタイプなのですよ」
「あ~、そうですか」と、ぼくは言いたくなっていた。だが、それはまずい。ぼくは大きく頭を左右にふって、「長く生きる猫さんが、どうしてぼくの部屋にいるのですか?」と言っていた。


 
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