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第4話 100円ショップにて
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色鉛筆を買うために100円ショップに向かって、ぼくは歩いていた。
100円ショップは、けっこう大きな店で、その前が駐車場になっていて、すでに何台もの車がとまっている。そんな駐車場のわきを通り、白いかまぼこのような建物に、ぼくは入ろうとした。
すると、チヨちゃんが走ってきたのだ。彼女の目はぼくの方に向けられていたけど、ぼくはチヨちゃんとなんの約束をしていた訳でもないので、思わず後ろを見てしまった。だけど、そこには誰もいなかった。
「たけしくん、お願いがあるの」
「ぼくね。これから、100円ショップに行って、買い物をしなければならないんだ」
ぼくは、その時、父さんがいつも口にしていた家訓を思い出していた。
目立たず、よけいなことには関わらず、いつも静かに目をふせている。
そこで、ぼくは目をおとし、地面を見ながら、チヨちゃんのわきを通り過ぎようとした。だが、それができなかった。チヨちゃんはぼくより背が低く、下からぼくを見あげてきたからだ。
「私、こまっているのよ。どうして、助けてくれないの?」
「ぼくでなくても、いいんじゃないかな。 大人の人がいると思うよ」
そう言って、まわりをみまわしたのだが、近くには誰もいない。
「急いでいるのよ。助けて!」
「何があったのさ?」
「静香ちゃんといっしょにここに買い物にきたんだけど。高校生と思える人たちに連れていかれたの」
「静香ちゃんって、ぼく知らないけど」
「隣のクラスの女の子じゃない。知らないなんて言わせないわ」
ぼくは黙ってしまう。隣のクラスの女の子の顔まで覚えようとしたことがない。
「店の後ろに連れて行かれたのよ。きっと、持っているお金をとりあげるつもりだわ」
「早く大人の人に連絡をしたほうが」と言っているぼくの手をがっしりと掴むと、ひっぱりだしていた。ぼくはついて行くしかなかった。
たしかに、店の後ろには、ぼくよりは年上の男たちが三人、お下げの女の子を囲んでいた。男の一人はキティちゃんの絵のついた財布から札をぬきだそうとしていた。
ぼくらが近づいていくと、男たちはするどい視線をむけてきた。
「何やっているんですか?」と、ぼくは声をかける。
「なに、少しお金を貸してもらおうと思ってね。この子も、いいですよと言ってくれている」
さすが、高校生。まずは自分が悪い立場にならない理屈を並べている。年上を相手に、言い合いをするきはない。
「それ、ぼくの財布なんです。ひろってくれたんですか。返してもらっていいですね」
そう言ったぼくは、男のそばにいき、札が抜かれる前にすばやく男の手から財布をとりあげていた。
いっとき、三人の男はあぜんとした顔で口をあけていたが、すぐに怒りの表情を顔に浮かべ、ぼくにむかってくる。ぼくは静香ちゃんに財布をなげてやり、「ここから、はやく出ていってよ」と言ってやった。こういう時は、ちゃんとぼくの言うことをきいてくれるんだね。静香ちゃんは、チヨちゃんと手をつなぐと走りだしていった。
「ふざけたまねをしやがって」
三人の男たちはぼくをかこんで、拳をふりあげ、足払いをかけてきた。ぼくは両腕を交差させ、男たちの手が顔にあたらないようにし、足蹴りにたいしては、蹴ってきた足をぼくの方から蹴りあげてやった。
三十分もすると、男たちの足ははれあむり、ぼくを叩いていたこぶしに血がにじみ、手首の骨がおれていた。
やがて、男たちは、いくら攻撃をしても、ぼくが平然としていることに気がついた。
「くそっ」と、叫ぶと男たちは逃げだしていったのだ。
ぼくが建物の陰から出ていくと、チヨちゃんと静香ちゃんに連れられて、正夫がやってきた。正夫がここにいるのは、三人の男たちが逃げだすのを見たからだと思う。
それなのに、静香ちゃんは、正夫が男たちを追い払ったように、「正雄くん、ありがとう」とお礼を言っていた。
100円ショップは、けっこう大きな店で、その前が駐車場になっていて、すでに何台もの車がとまっている。そんな駐車場のわきを通り、白いかまぼこのような建物に、ぼくは入ろうとした。
すると、チヨちゃんが走ってきたのだ。彼女の目はぼくの方に向けられていたけど、ぼくはチヨちゃんとなんの約束をしていた訳でもないので、思わず後ろを見てしまった。だけど、そこには誰もいなかった。
「たけしくん、お願いがあるの」
「ぼくね。これから、100円ショップに行って、買い物をしなければならないんだ」
ぼくは、その時、父さんがいつも口にしていた家訓を思い出していた。
目立たず、よけいなことには関わらず、いつも静かに目をふせている。
そこで、ぼくは目をおとし、地面を見ながら、チヨちゃんのわきを通り過ぎようとした。だが、それができなかった。チヨちゃんはぼくより背が低く、下からぼくを見あげてきたからだ。
「私、こまっているのよ。どうして、助けてくれないの?」
「ぼくでなくても、いいんじゃないかな。 大人の人がいると思うよ」
そう言って、まわりをみまわしたのだが、近くには誰もいない。
「急いでいるのよ。助けて!」
「何があったのさ?」
「静香ちゃんといっしょにここに買い物にきたんだけど。高校生と思える人たちに連れていかれたの」
「静香ちゃんって、ぼく知らないけど」
「隣のクラスの女の子じゃない。知らないなんて言わせないわ」
ぼくは黙ってしまう。隣のクラスの女の子の顔まで覚えようとしたことがない。
「店の後ろに連れて行かれたのよ。きっと、持っているお金をとりあげるつもりだわ」
「早く大人の人に連絡をしたほうが」と言っているぼくの手をがっしりと掴むと、ひっぱりだしていた。ぼくはついて行くしかなかった。
たしかに、店の後ろには、ぼくよりは年上の男たちが三人、お下げの女の子を囲んでいた。男の一人はキティちゃんの絵のついた財布から札をぬきだそうとしていた。
ぼくらが近づいていくと、男たちはするどい視線をむけてきた。
「何やっているんですか?」と、ぼくは声をかける。
「なに、少しお金を貸してもらおうと思ってね。この子も、いいですよと言ってくれている」
さすが、高校生。まずは自分が悪い立場にならない理屈を並べている。年上を相手に、言い合いをするきはない。
「それ、ぼくの財布なんです。ひろってくれたんですか。返してもらっていいですね」
そう言ったぼくは、男のそばにいき、札が抜かれる前にすばやく男の手から財布をとりあげていた。
いっとき、三人の男はあぜんとした顔で口をあけていたが、すぐに怒りの表情を顔に浮かべ、ぼくにむかってくる。ぼくは静香ちゃんに財布をなげてやり、「ここから、はやく出ていってよ」と言ってやった。こういう時は、ちゃんとぼくの言うことをきいてくれるんだね。静香ちゃんは、チヨちゃんと手をつなぐと走りだしていった。
「ふざけたまねをしやがって」
三人の男たちはぼくをかこんで、拳をふりあげ、足払いをかけてきた。ぼくは両腕を交差させ、男たちの手が顔にあたらないようにし、足蹴りにたいしては、蹴ってきた足をぼくの方から蹴りあげてやった。
三十分もすると、男たちの足ははれあむり、ぼくを叩いていたこぶしに血がにじみ、手首の骨がおれていた。
やがて、男たちは、いくら攻撃をしても、ぼくが平然としていることに気がついた。
「くそっ」と、叫ぶと男たちは逃げだしていったのだ。
ぼくが建物の陰から出ていくと、チヨちゃんと静香ちゃんに連れられて、正夫がやってきた。正夫がここにいるのは、三人の男たちが逃げだすのを見たからだと思う。
それなのに、静香ちゃんは、正夫が男たちを追い払ったように、「正雄くん、ありがとう」とお礼を言っていた。
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