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第2章

オスマン皇帝の小姓

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 それからのトゥルサンは、主人が頭の隅で誰のことを考えているのか、心が読めるようだった。
(いっそ、メフメトさまの胸の内が、わからなければ良いのに……)
 この国では誰よりも抜きん出て美しい顔をした十二歳のこの少年は、生まれて初めて嫉妬の感情を覚えた。
 しかしメフメトはたとえ相手に興味を持っていたとしても、いかにも彼らしい、研ぎ澄まされた冷たさに満ちた交渉のやり方だった。もちろんオスマン皇帝にとって、コンスタンティノポリスに匹敵するものなどあるはずも無い。スルタンのあの街への憧れは、遥か過去、まだ皇帝の跡を継ぐ可能性すら無かった遠い昔から、その心に抱き続けてきた熱い思いなのだ。
 数日後、メフメトの街への思慕がどれほど深いのかを知る機会に、トゥルサンも居合わせることになった。
 アドリアーノポリスの宮殿を美しい月が照らす夜、メフメトは宰相ハリルを部屋に呼びつけた。「主人に召された時に何も持たずに参じてはならない」というイスラムの慣習に従って、ハリルは盆に盛られた金貨を差し出した。
「先生(ラーラ)、私には、こんな物はもう必要がない」
 スルタンは月光に吸い寄せられるように窓辺におもむき、東の方を見やった。
「金貨など、既に有り余るほど持っている。私が欲しいのはただひとつだけ……、あの街を、与えたまえ」
 メフメトがどれほどコンスタンティノポリスを手中に入れたがっているか、その真意がうかがわれる決意の言葉だった。
 ムラト二世と共に政治を行ってきたハリル・パシャにとっては、もはや東ローマ帝国との戦いが避けられないことを身に知らされる主君の宣誓である。
 部屋の隅ですべてを見ていたトゥルサンには、最後の部分……、主人がこくりと息を飲み込んだ後の、「与えたまえ」という丁寧な言葉使いは、ハリルに言っているのではないように聞こえた。
 まるで、メフメトの神への誓いのようにも響いて、いつまでもトゥルサンの耳に余韻を残すのだった。
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