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境界線を越えて
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ついにその時が来た!
"諸王の王"ペーローズ1世は、東方の遊牧民族エフタルを討滅する決意を固め、その準備にとりかかった。
おっと、自己紹介が遅れてしまった。
俺の名前は奥洲天成。
大家だった俺は駅前の土地購入で揉めてしまい、相手の放った刺客にやられて敢え無い最期を遂げた。どういう所有者が持っていたのか、きちんと調べないといけないということを肝に命じさせられる結果となった。
憂さ晴らしに戦士となりたかった俺は、女神によってサーサーン朝ペルシアの将軍として転生することになった。異民族を討滅するのが役割ということだ。
東方のエフタルは、盛強な異民族だ。
何を隠そう、俺達は既に二度、奴らと戦争をして二度ともやられてしまったという経緯がある。
しかし、三度目の正直と言う言葉があるではないか。
次は必ず勝つ、必勝の精神だ。
勝つしかない。
負けるなどと言う奴、負けるなどと分析する奴は全員、我が白刃をもって処断してくれよう。
エフタルは遊牧民族だから機動力がある。
正直なところ、相手の奥深くの拠点を先に奪って、有利な体勢で迎え撃ちたい。
とはいえ、前回の敗戦時の講和条約で結んだ境界線として作られた塔がある。塔の奥深くまで進軍すれば相手の偵察隊が気づくだろう。講和条約違反を責められるに違いない。
どうしたらいいか。
「テンセー! 朕は妙案を思いついたぞ!」
「妙案でございますか?」
「そうだ。塔が境界線ならば、塔を動かしてしまえばいいのだ」
「おぉ?」
陛下の考えた策は、三百人の力自慢と、五十頭の象を用意して、国境線の塔を引っ張ってしまおうというものであった。
そして、陛下や俺達主力の軍はその後ろに隠れて、接近したところで一気に敵拠点を襲うという作戦を立てたのだ。
何というファンタスティックな策だ。
歴史に燦然と輝く策略となるだろう。
かくして我が軍は国境線に移動し、一日五キロほど国境線を東に進めた。
敵は気づく様子がない。しめしめ、このまま敵地まで侵入。
そうはならなかった。
「お前達、講和条約を破ったな!」
ある日、エフタルの軍勢が現れて叫んだ。
陛下がやり返す。
「これは異なことを。我々は国境線の塔を超えていないぞ」
「アホか! おまえ達の象が何回もこちらを歩いているのを見ているぞ!」
「いや、象は我が国の民ではない!」
「毎日お前達がエサを与えていて何を言うか!」
俺達の乾坤一擲の策略は見抜かれていた。
慌てた陛下は、突撃を命じられたが、行く先に待っていたのは大きな落とし穴で、陛下はあえなく戦死を遂げ、俺は逃げ去ることを余儀なくされた。
やはり一日五キロと欲張るのではなかった。せめて二キロくらいにしておくべきだった。それと、象は目立つからよくない。力自慢千人にするか、携行可能な塔を建てるべきだった。
"女神の一言"
そういう問題でしょうか……。
中世の時代、陸続きの国家の国境概念は結構希薄でした。そんな辺境までわざわざ調べに行きたいわけでもないですし、まさか地面にチョークで線を引くわけにもいきません。
目印となる街や川があればいいのですが、そういうものもないとなると、建物なり何なりを立ててそれでOKとしたこともあったようです。
国境を画定している建物を動かすというのは前代未聞な発想でしたが、そんなことに象や力自慢の労力を使うくらいなら、最初から全力で突き進んだ方が良かったのかもしれませんね。
"諸王の王"ペーローズ1世は、東方の遊牧民族エフタルを討滅する決意を固め、その準備にとりかかった。
おっと、自己紹介が遅れてしまった。
俺の名前は奥洲天成。
大家だった俺は駅前の土地購入で揉めてしまい、相手の放った刺客にやられて敢え無い最期を遂げた。どういう所有者が持っていたのか、きちんと調べないといけないということを肝に命じさせられる結果となった。
憂さ晴らしに戦士となりたかった俺は、女神によってサーサーン朝ペルシアの将軍として転生することになった。異民族を討滅するのが役割ということだ。
東方のエフタルは、盛強な異民族だ。
何を隠そう、俺達は既に二度、奴らと戦争をして二度ともやられてしまったという経緯がある。
しかし、三度目の正直と言う言葉があるではないか。
次は必ず勝つ、必勝の精神だ。
勝つしかない。
負けるなどと言う奴、負けるなどと分析する奴は全員、我が白刃をもって処断してくれよう。
エフタルは遊牧民族だから機動力がある。
正直なところ、相手の奥深くの拠点を先に奪って、有利な体勢で迎え撃ちたい。
とはいえ、前回の敗戦時の講和条約で結んだ境界線として作られた塔がある。塔の奥深くまで進軍すれば相手の偵察隊が気づくだろう。講和条約違反を責められるに違いない。
どうしたらいいか。
「テンセー! 朕は妙案を思いついたぞ!」
「妙案でございますか?」
「そうだ。塔が境界線ならば、塔を動かしてしまえばいいのだ」
「おぉ?」
陛下の考えた策は、三百人の力自慢と、五十頭の象を用意して、国境線の塔を引っ張ってしまおうというものであった。
そして、陛下や俺達主力の軍はその後ろに隠れて、接近したところで一気に敵拠点を襲うという作戦を立てたのだ。
何というファンタスティックな策だ。
歴史に燦然と輝く策略となるだろう。
かくして我が軍は国境線に移動し、一日五キロほど国境線を東に進めた。
敵は気づく様子がない。しめしめ、このまま敵地まで侵入。
そうはならなかった。
「お前達、講和条約を破ったな!」
ある日、エフタルの軍勢が現れて叫んだ。
陛下がやり返す。
「これは異なことを。我々は国境線の塔を超えていないぞ」
「アホか! おまえ達の象が何回もこちらを歩いているのを見ているぞ!」
「いや、象は我が国の民ではない!」
「毎日お前達がエサを与えていて何を言うか!」
俺達の乾坤一擲の策略は見抜かれていた。
慌てた陛下は、突撃を命じられたが、行く先に待っていたのは大きな落とし穴で、陛下はあえなく戦死を遂げ、俺は逃げ去ることを余儀なくされた。
やはり一日五キロと欲張るのではなかった。せめて二キロくらいにしておくべきだった。それと、象は目立つからよくない。力自慢千人にするか、携行可能な塔を建てるべきだった。
"女神の一言"
そういう問題でしょうか……。
中世の時代、陸続きの国家の国境概念は結構希薄でした。そんな辺境までわざわざ調べに行きたいわけでもないですし、まさか地面にチョークで線を引くわけにもいきません。
目印となる街や川があればいいのですが、そういうものもないとなると、建物なり何なりを立ててそれでOKとしたこともあったようです。
国境を画定している建物を動かすというのは前代未聞な発想でしたが、そんなことに象や力自慢の労力を使うくらいなら、最初から全力で突き進んだ方が良かったのかもしれませんね。
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