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忍者の真実?
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拙者の名前は奥洲天成。
いつもと一人称が違うって?
いつもが何を言うのか分からぬが、拙者は忍者が大好きでござる。服部半蔵や猿飛佐助といった存在にあこがれるなぁ。
『……で、年甲斐もなく用水路を飛び越えようとして、うっかり落ちて当たり所が悪くて死んでしまったわけね……』
「うぅ、女神殿、拙者、自分が情けないでござる」
『はいはい。そんなになりたいなら忍者に転生させてあげるわよ』
「話が早くて助かるでござる」
ということで、拙者、忍者として転生したでござるよ!
さて、拙者、細川家に採用されている忍者となったでござるが……
同僚達があまり仕事をしていないように感じられるでござる。
「伊助。隣の家の偵察に行くでござるよ」
「ハァ? 何言ってんの? 今時の忍者は足なんか使わねーって。ダサイこと言うんじゃないよ」
だ、ダサい……?
「団長! 柳河からの密使が来たよ!」
柳河というと、立花家でごさるな。
なるほど。既に現地に派遣していたので、二重に派遣する必要はないということでござるか。拙者、早とちりしていたようでござる。
柳河からの密使の手紙は、伊助を通じて団長の次郎長が読んでいるでござる。
「ふむふむ。家老の十時連貞《ととき つれさだ》は巳の刻(午前十時)に連れションに行くことが多い」
すさまじくどうでもいいことでござるな。
「さて、こちらの家老の情報はどうしたものか」
家老の情報?
一体、何のことでござろう。
確認しているととんでもないことが発覚した。
何と、団長の次郎長は、柳河お抱えの忍者と示し合わせて、お互いの情報を交換しているというではないか!
「それは職務放棄なうえに、背任ではござらぬか!」
「何を言っているんだ。太平の世の中、報酬も下がったし、真面目に仕事していたら大赤字だ。こうやって、ケチれるところをケチっていかないといけないんだ」
「ぬぅぅぅ……」
何という悪徳忍者。
拙者、こいつらを斬り捨てたく思うでござるよ。
しかし、太平の世に無駄な仕事をしたくないというのが主流であった。拙者の運動は功を奏さず、むしろ窓際に追いやられてしまったでござる。トホホ……
時が流れて、島原で切支丹と農民が組んで大規模な一揆を始めたでござる。島原の乱として知られる反乱でござるな。
久しぶりの戦でござる。今こそ、忍者としての矜持を示す時。
「ぶ、ブルブル。石垣の下なんぞ怖くて近づけるか……」
「本当だよ。殿は俺達のことを捨て石か何かと勘違いしているのではないか?」
クソ忍者共、自分達の任務をしないどころか、殿の悪口を言っているでござる。
「こういう時に活躍して、殿に『忍者は役に立つなぁ』と思わせなければならないでござろう!」
拙者、憤慨して進言したのでござるが、奴らも逆ギレしたでござる。
「馬鹿を言うな! たった一つしかない命をどうして粗末にできるのだ!?」
「そうだ! そこまで言うならおまえだけ行ってこいよ!」
くぅぅぅ。
何とも情けない話でござる。
忍者たちは全員物陰に隠れるだけ。
拙者一人で石垣に近づくことになってしまったでござる。
うぅむ、これは上から狙われたら即死でござる。拙者、味方の陰謀に嵌って死ぬという悲しい事態に陥るのでござろうか。
「う、うぅぅ……」
む? 草むらからうめき声のようなものが聞こえたでござる。
「誰かいるのでござるか?」
声の方に行くと、老年に差し掛かろうという武士が一人、膝をついて倒れていたでござる。甲冑を見ると、何と我が熊本の者ではござらぬか!
「大丈夫でござるか?」
「お主は……?」
「拙者、細川様の抱える忍者でござる。さ、さ、薬でござる」
拙者は負傷した老人の膝に薬を塗り付ける。
「すまぬ。天下無双の剣士と知られたわしが、このような無様な姿をさらすとはな」
「はぁ……」
この老人、大口叩いているでござる。
忍者は臆病者ばかりで、武士はホラ吹きばかりということであろうか。
これでは熊本の先行きが不安でござる。
負傷者を置いていくわけにもいかないのと、石垣にとりついても犬死確定なので、拙者、老人を殿の下に連れていくことにいたした。
「おぉ! 宮本先生! いかがなされた!?」
宮本先生?
この武士、そんなにたいした御仁だったのでござるか。
「うむ。石垣の下に向かったところ、敵から一斉掃射があってのう。わしも二刀をもって弾を打ち返そうとしたが、衆寡敵せず膝に一発食らってしまい、瀕死に陥ったところをこの忍者が助けてくれたのだ」
この老人……吹くなぁ。
しかし、殿は完全に真に受けている。
「忍び、でかしたぞ。宮本先生を失っては大変なところであった」
「はぁ。いえ、味方を救うのは当然のことでありますれば」
「しかし、宮本先生もやられるような銃弾の中を飛び込むとは、見事な忍びもいたものよ」
「いえ、まぁ……」
そうか。俺は銃弾飛び交う中、宮本何某を助けたことになっているのか。
「城の情報は何も分からずで申し訳なくござる」
「何を言う。宮本先生を救っただけで十分だ。城の情報は他の忍者共が持ってくるだろう」
「いやぁ、あいつらは怖がって隠れてましたんで、無理じゃないかと」
「何ぃ!?」
殿は激怒した。
必ずや、あの不要な忍者達を取り除かなければならないと決意したようだ。
殿には忍者の流儀は分からぬ。忍者同士で情報交換したり、物陰に隠れて「敵は強いです」などという報告などあってもなくても同じではないかと思っていた。
結局、次郎長も伊助もクビになった。
ざまあみろ。
「もはや、細川家に忍者はいらん! しかし、天成。そなたは別だ。よって、そなたを武士として召し抱えようと思う」
「はぁ、ありがとうございます」
宮本さんも嬉しそうだ。
「うむ。この宮本武蔵の後継者となれるのは、天成。おぬししかおらぬ」
えっ、宮本武蔵?
この爺さん、宮本武蔵だったの!?
"女神の一言"
島原の乱における細川家絡みのエピソードは何故か忍者関係のものもあれば、宮本武蔵が討死寸前に陥ったようなものもあったりします。
忍者についてはその実態が明らかではありません。
ですので、今回のような話が実際であるという証明はありませんが、有能な人もいた反面、ダメな人もいたでしょうから、お互いに情報を融通したりしたことはあったのではないでしょうか。
近現代のスパイについても、かっこいい活躍やおどろおどろしい話などもある反面、結構情けない話もあったのではないかと思います。
いつもと一人称が違うって?
いつもが何を言うのか分からぬが、拙者は忍者が大好きでござる。服部半蔵や猿飛佐助といった存在にあこがれるなぁ。
『……で、年甲斐もなく用水路を飛び越えようとして、うっかり落ちて当たり所が悪くて死んでしまったわけね……』
「うぅ、女神殿、拙者、自分が情けないでござる」
『はいはい。そんなになりたいなら忍者に転生させてあげるわよ』
「話が早くて助かるでござる」
ということで、拙者、忍者として転生したでござるよ!
さて、拙者、細川家に採用されている忍者となったでござるが……
同僚達があまり仕事をしていないように感じられるでござる。
「伊助。隣の家の偵察に行くでござるよ」
「ハァ? 何言ってんの? 今時の忍者は足なんか使わねーって。ダサイこと言うんじゃないよ」
だ、ダサい……?
「団長! 柳河からの密使が来たよ!」
柳河というと、立花家でごさるな。
なるほど。既に現地に派遣していたので、二重に派遣する必要はないということでござるか。拙者、早とちりしていたようでござる。
柳河からの密使の手紙は、伊助を通じて団長の次郎長が読んでいるでござる。
「ふむふむ。家老の十時連貞《ととき つれさだ》は巳の刻(午前十時)に連れションに行くことが多い」
すさまじくどうでもいいことでござるな。
「さて、こちらの家老の情報はどうしたものか」
家老の情報?
一体、何のことでござろう。
確認しているととんでもないことが発覚した。
何と、団長の次郎長は、柳河お抱えの忍者と示し合わせて、お互いの情報を交換しているというではないか!
「それは職務放棄なうえに、背任ではござらぬか!」
「何を言っているんだ。太平の世の中、報酬も下がったし、真面目に仕事していたら大赤字だ。こうやって、ケチれるところをケチっていかないといけないんだ」
「ぬぅぅぅ……」
何という悪徳忍者。
拙者、こいつらを斬り捨てたく思うでござるよ。
しかし、太平の世に無駄な仕事をしたくないというのが主流であった。拙者の運動は功を奏さず、むしろ窓際に追いやられてしまったでござる。トホホ……
時が流れて、島原で切支丹と農民が組んで大規模な一揆を始めたでござる。島原の乱として知られる反乱でござるな。
久しぶりの戦でござる。今こそ、忍者としての矜持を示す時。
「ぶ、ブルブル。石垣の下なんぞ怖くて近づけるか……」
「本当だよ。殿は俺達のことを捨て石か何かと勘違いしているのではないか?」
クソ忍者共、自分達の任務をしないどころか、殿の悪口を言っているでござる。
「こういう時に活躍して、殿に『忍者は役に立つなぁ』と思わせなければならないでござろう!」
拙者、憤慨して進言したのでござるが、奴らも逆ギレしたでござる。
「馬鹿を言うな! たった一つしかない命をどうして粗末にできるのだ!?」
「そうだ! そこまで言うならおまえだけ行ってこいよ!」
くぅぅぅ。
何とも情けない話でござる。
忍者たちは全員物陰に隠れるだけ。
拙者一人で石垣に近づくことになってしまったでござる。
うぅむ、これは上から狙われたら即死でござる。拙者、味方の陰謀に嵌って死ぬという悲しい事態に陥るのでござろうか。
「う、うぅぅ……」
む? 草むらからうめき声のようなものが聞こえたでござる。
「誰かいるのでござるか?」
声の方に行くと、老年に差し掛かろうという武士が一人、膝をついて倒れていたでござる。甲冑を見ると、何と我が熊本の者ではござらぬか!
「大丈夫でござるか?」
「お主は……?」
「拙者、細川様の抱える忍者でござる。さ、さ、薬でござる」
拙者は負傷した老人の膝に薬を塗り付ける。
「すまぬ。天下無双の剣士と知られたわしが、このような無様な姿をさらすとはな」
「はぁ……」
この老人、大口叩いているでござる。
忍者は臆病者ばかりで、武士はホラ吹きばかりということであろうか。
これでは熊本の先行きが不安でござる。
負傷者を置いていくわけにもいかないのと、石垣にとりついても犬死確定なので、拙者、老人を殿の下に連れていくことにいたした。
「おぉ! 宮本先生! いかがなされた!?」
宮本先生?
この武士、そんなにたいした御仁だったのでござるか。
「うむ。石垣の下に向かったところ、敵から一斉掃射があってのう。わしも二刀をもって弾を打ち返そうとしたが、衆寡敵せず膝に一発食らってしまい、瀕死に陥ったところをこの忍者が助けてくれたのだ」
この老人……吹くなぁ。
しかし、殿は完全に真に受けている。
「忍び、でかしたぞ。宮本先生を失っては大変なところであった」
「はぁ。いえ、味方を救うのは当然のことでありますれば」
「しかし、宮本先生もやられるような銃弾の中を飛び込むとは、見事な忍びもいたものよ」
「いえ、まぁ……」
そうか。俺は銃弾飛び交う中、宮本何某を助けたことになっているのか。
「城の情報は何も分からずで申し訳なくござる」
「何を言う。宮本先生を救っただけで十分だ。城の情報は他の忍者共が持ってくるだろう」
「いやぁ、あいつらは怖がって隠れてましたんで、無理じゃないかと」
「何ぃ!?」
殿は激怒した。
必ずや、あの不要な忍者達を取り除かなければならないと決意したようだ。
殿には忍者の流儀は分からぬ。忍者同士で情報交換したり、物陰に隠れて「敵は強いです」などという報告などあってもなくても同じではないかと思っていた。
結局、次郎長も伊助もクビになった。
ざまあみろ。
「もはや、細川家に忍者はいらん! しかし、天成。そなたは別だ。よって、そなたを武士として召し抱えようと思う」
「はぁ、ありがとうございます」
宮本さんも嬉しそうだ。
「うむ。この宮本武蔵の後継者となれるのは、天成。おぬししかおらぬ」
えっ、宮本武蔵?
この爺さん、宮本武蔵だったの!?
"女神の一言"
島原の乱における細川家絡みのエピソードは何故か忍者関係のものもあれば、宮本武蔵が討死寸前に陥ったようなものもあったりします。
忍者についてはその実態が明らかではありません。
ですので、今回のような話が実際であるという証明はありませんが、有能な人もいた反面、ダメな人もいたでしょうから、お互いに情報を融通したりしたことはあったのではないでしょうか。
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