上 下
20 / 47

【番外編】辺境の村にいい装備がある理由

しおりを挟む
注:今回は実世界ではなく、ゲーム的RPG世界の話です。

 俺の名前は奥洲天成。
 ちょっとしたトラブルに巻き込まれた俺は、スライム酸の中につけられて骨も溶けるという最期を遂げたが、転生して鉄砲玉(勇者)となった。

「勇者テンセーよ。おまえには期待している」
「任せてください、おやっさん。交わした盃にそぐわぬ働きをしてみせますので」
「お、おやっさん?」
「間違えました。国王様」

 親父……じゃなくて国王によって魔王(対立組織のボス)討伐を任された俺は早速装備を整えるために武器屋に向かった。
 しかし、そこで俺は驚くべきものを見る。

「何じゃあ! この情けない販売リストは? おどれは、ワシにひのきの棒でカチコミせいっちゅうんか!? トカレフくらいはあるやろ!」
 武器屋は俺を余所者と舐めよった。この王都の武器商人でありながら、鉄砲玉の俺にろくでもない武器しか提供しようとしなかったんや。
 これは俺を馬鹿にするだけやない。親父《こくおう》まで馬鹿にするということや。俺は示しをつけるために、武器屋の建物をボコボコにして、再度問い詰めたった。
「と、トカレフなるものはありませんが、AKD-47あきやまきよはらですとらーでとくどうON砲ブイナイン砲は遥か先のサイハテ村なら売っています!」
「何やと、こらぁ!? 何で王都にロクなもんがなくて、サイハテ村のようなド田舎に最新装備が売っておるんじゃあ!? ワレェ、舐めとったら、ドタマかち割ってまうど!」
「お、お許し下さい!」

 武器屋のアホ商人め、中々口を割らんかったが、娘をスライムに売ると言ったらようやく白状しよった。

「我々は装備の上でも、魔王軍に圧倒的に劣っているのです」
 武器屋が言うには、我々人間界は圧倒的に不利で武器工場もほとんど制圧されたということやった。つまり、人間界はもうひのきの棒とか銅の剣くらいしか武器がないっちゅうことや。
 それじゃ、どうしようもないいう話があるが、世の中はうまいこと出来ておる。
 魔王軍の補給担当が金儲けをしたくて、人間達にいい武器を横流ししているっちゅうことや。奴らにしてみれば魔王軍の兵士に武器を配っても一文の得にもならんが、人間に売ればごっそり金になるからなぁ。
 だから、最前線に近い辺境の町や村にいい武器が売っているということやった。

 もう一つ理由がある。
「それに、辺境の村なら、魔王軍の幹部が直接武器を販売できますので」
 なるほど。
 確かに、辺境の村は激戦区やから兵士達や勇者達は出入りに加えられることになる。つまり、警備や治安部隊はおらんということや。魔王軍の幹部がこっそり武器を販売するには、ちょうどいいということや。
「そういうことか」
「は、はい。ですので、どうかこれ以上のご無体は……」
「しゃあない。とりあえず店中のひのきの棒と銅の剣で勘弁したるわ」
「ひ、ひぃぃぃ」

 やはり世の中はゼニや。
 魔王軍でも、人間でもそれは変わらん。
 ワシはこの棒と剣を独占して、今後やってくる新たなる勇者達に売りさばいて一山当てて、辺境の魔王軍幹部に取り入るんや。そうして、互いに独占的な販売ルートを築いて、WIN-WINの関係を築く。

 その日が楽しみや。

"神様の一言"
 最前線で武器が活発に取引されるというのは、近代戦の一つの特徴でもあるが、当然、昔のファンタジー世界だって行われていたのだろう(棒読み)

 ゲームによっては、時々スタート地点から別ルートで回ると急に敵が強くなるなんてことがあるが、これは前線の味方が突破されて、この方面から敵の精鋭が攻撃していると考えれば、解決するということだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

処理中です...