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ネコと人間

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 私の名前は奥洲天成。
 私は『HELLSING』の大佐の名言を、ネコで言えるほどネコが好きだ。
 そんなネコを愛する私は、子猫の動画を眺めているうちにうっかり道路に出てしまい、トラックに轢かれて死んでしまった。

『今回は偉く死因がはっきりしているな。一人称もいつもと違うようだし』
 お、切れ者神様ではないか。
「私はネコに生き、ネコに斃れた。フフフ、悔いはない……」
『ノリノリだな。まあいい、転生先に希望はあるか?』
「もちろん、ネコカフェの店員になりたい」
『中世にネコカフェはないだろう。ネコ関係の仕事ならあるが……』
「ならば、それがいい」

 ということで、転生した私は教会で働く下僕となった。
 毎日、神に祈り、可愛いネコと会えるのを楽しみにする日々を過ごしている。
 しかし、ネコにまつわる仕事とは何だろう?
「司教様、ネコにまつわる仕事ができると聞いたのですが?」
「おぉ、テンセー。確かにそろそろ祭りが近いですね。それではネコを集めてもらいましょう」
 ネコを集める?
 一体何に使うのだ?
 祭りで使うということは、ネコがワーワー騒ぐような話なのだろうか?

 俺はネコを二十匹ほど集めてきた。
 と、教会にはその十倍くらいのネコがいる。
「こ、こんなにネコを集めてどうするんですか?」
 これなら、可愛いのを厳選してネコカフェも開けるのではないか?
 中世にネコカフェ、ありではないか?
「ええ、燃やします」

 ……えっ?
「し、司教様? 今、何と?」
「燃やすのですよ」
「ネコをですか?」
 司教はもちろんと、頷いた。
 俺は混乱した。
「な、何故、ネコを燃やす必要があるのです!?」
「何故って、お祭りだからですよ。邪悪なネコを燃やして、町民が喜ぶのです。当たり前のことではないですか」
 そんな当たり前があって溜まるかー!
 た、確かに黒猫などは魔女の使い魔で使われていることもある。だから、沢山集めてまとめて焼き殺すのだそうだ。
「私が以前赴任していたデンマーク地方では、ネコを樽に入れてみんなで嬉々として樽ごと壊すという儀式もありましたよ」
 司教がニコリと笑う。
 こ、こいつは……悪いことをしているという意識がない。本当にいいことをしていると確信している顔だ。

「か、神よー!」
『何だ?』
「こんなのはあんまりだー! 俺は死にたい!」
『自殺は大罪だ。地獄行きになるぞ』
「……だったら俺を殺してくれ! こんな地獄のような世界で生きていたくはない」
『ふむ、ダッコロか。しかし、天成よ、よく考えてみろ』
「何を考えるんだよ?」
『この時代に愛されないネコが排除されたから、おまえのいた21世紀には可愛いネコばかりになったのだと思わんか?』
「な、何だと……?」
『進化の過程で、不要なものは淘汰される。その過程の中に、おまえはいるのだよ。さあ、天成よ、可愛いネコのために心を鬼にして戦うのだ』

 そう言い残し、神の奴はマンチカンの子猫を撫でながら天へと消えて行った。


"神の一言"
 中世は娯楽がどうしても少ない。
 遊具の数も少ないし、余暇も少ない。
 となると、余った命を弄ぶくらいしか娯楽がなかったわけだ。
 何せパンと見世物ということで、見世物というのが闘技場だったわけだからな。
 公開処刑も娯楽的な要素があったと言っていいだろう。

 人間に関しては理由がないと処刑できないが、動物は別だ。家畜は別として、人間生活に不安をもたらす存在も多かったからな。
 中世のスポーツについて記された『キツネ潰し』という書籍があるが、今なら間違いなく動物虐待にあたるようなスポーツばかり書かれている。

 それを考えれば21世紀の世界は大分良くなったと言えるだろうな。
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