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王者の資質

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 俺の名前は奥洲天成。

 突風で倒れた電柱がちぎった高圧線に触れて感電死してしまい、ここに来た。

「君が……、奥洲天成か」
 現れたのは、メガネをかけたキリッとした男だ。
「あれ、女神が転生させるんじゃないのか?」
「女神は職場でずっとテレビを観ていたことが発覚したので、半年間の職務停止処分を受けた」

 何だって、女神の奴、サボったのがバレて処分されてやがんの。m9(^Д^)プギャー
「その間、この私が転生を司ることになったわけだが、奥洲天成。貴様は何に転生したい?」
「何と言われると困りますが、できれば、国王とか偉い役職に転生したいですね。領地とか経営したいです」
「分かった。いいだろう。国王候補に転生させてやろう」
 おお、こいつは話が分かる奴じゃないか。
「だが、国王というものは奪い取るものだ。うまくいかない場合のことまでは、知らん」
 何だか不穏なことを言い渡されて、俺は転生した。

 東洋と西洋の境界コンスタンティノープル。
 俺はビザンツ皇帝の息子に転生していた。つまり、次の皇帝ということだ。
 あの神様、本当にすごい奴だな。

「テンセー様、皇帝就任の暁にはこの私を取り立ててください」
 というような連中もひっきりなしに来る。
 当然、手ぶらで来るはずもないから、俺は左うちわだ。
 ハハハハ、高い地位はいいのう、皇帝万歳。

 ……そんなに甘くはなかった。
 ある朝、目覚めると俺の屋敷の周りは包囲されていた。
「こ、これは一体……?」
 兵士達の代表が入ってきた。
「皇帝は専横を極め、民を虐げたので暗殺した」
 な、何だってー!?
 そうなると、皇帝の地位は?
 俺はどうなるんだ?
「皇帝の地位には、我らが指揮官が就任した。貴様を殺す必要はないということだが、皇帝のライバルになりうる存在ゆえ、資格を奪い取る」
 資格を奪い取る……?
「すなわち、貴様を五体満足のまま置くわけにはいかないということだ。だから目をくりぬくことにする」
「な、何だって!? うわー! やめてくれー!」

 それから何が起きたのか、正直、よく分かっていない。
「やはり負けてしまったか」
 声がした。こ、この声はもしかして。
「そうだ、貴様をこの世界に転生させた神だ。無様に敗れてしまったようだな」
「うう、皇帝争い、ぱねぇっす。負けたから速攻目潰しとは……」
「皇帝の条件に五体満足があるからな。失明した者は皇帝にはなれないということだ。厳しい規定だが、これがなければ本当に殺すしかないわけだし、仕方ないのかもしれないな」
「すんません。もうちょっと楽に生きられるようなところに再転生させていただけないでしょうか?」
「何だと? ……仕方ない。アッバース朝のカリフにでも転生させてやろう」
「おぉ、カリフ? 千夜一夜の世界だな?」
 今度は楽しく過ごせそうだ。


"神の一言"
 五体満足についてはイスラームのカリフも同じような決まりがあった。
 だから、カリフ権力が弱まってきたり、内部抗争が激しくなると、失明させられるカリフが相次いだ。
 同時期に、失明させられたカリフが三人生きていた、というような笑えない話もある。
 今回はうまくやれるといいのだが、な。

 西欧の王については何とも言えないが、デンマークのクリスチャン4世は30年戦争で片目を失明したが、そのまま国王位についていたし、特に決まりはなかったのだろう。
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