眠りの森

NaRu

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二つのリング

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目が覚めると見たことがある天井。
隣ではじめが不細工な顔して寝てる。
意識を失う前、頭が割れるように痛くなった。
思い出してはいけないことがそこにある。
警告のように。
だけど、本当は思い出さなきゃいけないことだと分かってる。
俺もずっと不思議だった。
何故はじめなんだろう、と。
俺の周りには男女問わず、魅力的な人間はたくさんいる。
はじめははっきりいってタイプではない。
でも何故かはじめに惹かれる。
いや、引き付けられる。
離れちゃいけないと言われてる気がする。

「お、目が覚めたか。大丈夫かお前。」

「あぁ。悪かったな。」

「お前の記憶の鍵、もうひとつ見つけたからいいよ。」

「なんでお前はあの事件にそんなにこだわるんだ?未解決事件なんていくつもあるだろ。」

「...姉貴だったんだ。殺されたの。」

「え?!でも、苗字が。」

「姉貴は親父に引き取られたからな。ちなみに血も繋がってない。」

「そうだったのか。」

「一緒になるはずだったんだ。結婚はできなくても、ひっそりと一緒に暮らしていこうって約束した。あの日、俺はちゃんとプロポーズして指輪を渡そうとしてたんだ。」

はじめの首の二つのリングが揺れた。
俺は何故か胸が苦しくなった。
あの時、愛する人の死に顔を見てはじめはどんな思いだっただろう。

「なんだよお前、何泣いてんだよ!」

俺は気がついたら涙を流してた。
不思議な感覚だ。
自分でも分からない。

「俺は泣けなかったから、お前がその分泣いてくれてんだな。」

そう言って抱き締められたとき、ふっとある風景が頭に浮かんだ。
それははじめが銃を構えている姿だった。
その傍らには遺体があった。

「お前、誰を撃とうとしてたんだ?」

俺がそう聞くとはじめは一瞬固まった。

「何か見えたのか?」

「見えた。お前が遺体の側で誰かに向けて銃を構えてる姿。」

「やっぱりか。」

「え?」

「俺、お前が目を覚ます前にお前に会ってるんだな。」

「どういう、」

「実は記憶がないんだ。あの場所に辿り着いてからお前が目覚める瞬間までの記憶が。」

「はぁ?なんだよそれ。なんで今ごろ。」

「認めるのが怖かったんだよ。俺にもお前と同じ、自分に対する疑いがあるってこと。俺もあの事件の容疑者の一人だ。」

...はぁ?!

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