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5. 第三王子殿下とエンカウント

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「そういえば、ティアフレア様。私に敬語は不要ですよ」

 思い出したようなエリカさんの言葉にハッとする。普通の公爵令嬢は侍女に敬語なんて使わない。侍女と話したことなどほとんどなかったから、うっかりミスをしてしまった。

 いや、外で初めて会った男性に縋り付いて泣いて寝落ちしている時点で今更ではあるのだけど……。

「わかったわ。よろしくね、エリカ。私のことはティアと呼んでちょうだい」
「かしこまりました」

 エリカがいい人でよかった。この容姿を見ても何も言わずによくしてくれることにも、心の底からホッとする。

「今日は何をしますか?」
「そうね……。そういえば、図書館って見ても平気かしら?」

 聞かれて、ふと、前に帝国の図書館について何かの本で読んだことを思い出す。気になって聞いてみると、エリカは頷いた。

「大丈夫です。案内致しましょうか?」
「お願い」

 本はいい。ずっと一人だった私にとって唯一の救い。王国にいた時も、家から出られないから、よく家にある本を読んで1日を過ごしていた。

 案内してもらいながらそんなことを思い出していると、不意に背後から怒鳴られる。

「貴様! なぜ部屋から出ている!?」

 後ろを振り返ると、そこにいたのはレイフォーン殿下だった。そういえば、昨日部屋から必要以上に出るなと言われたいたのをすっかり忘れていた。

 ずんずんと大股で近づいてくる様子に恐怖を覚えながらも、頭を下げる。

「レイフォーン殿下ご機嫌よう。図書館に行こうとしていまして……」
「言い訳はいい! 部屋から出るなと言っただろう!」

 怒鳴り声に身を縮める。手を振り上げた気配がした。

 ーー叩かれるっ。

 そう思ってぎゅっと目を瞑る。

 だが、衝撃は一向に来なかった。
 恐る恐る目を開けるとそこには……。

「ヴァン様!?」

 彼が、いた。
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