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第13話・かもめが翔んだ日

【孤独なひまわり・その2】

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時は、7月5日の午後3時過ぎのことであった。

郁恵《いくえ》夫婦の家族が暮らしている家に、房江《ふさえ》と別居中の夫(49歳・超なさけない男)が突然やって来た。

超なさけない夫は、房江《ふさえ》に対して『心を入れ替えてもう一度がんばる…怒和島《しま》へ帰って、みかん農家を手伝う…』と言うたあと、一緒に怒和島《ぬわじま》(松山市)へ行こうと申し出た。

しかし、房江《ふさえ》は『イヤ!!』と言うて超なさけない夫を突き放した。

超なさけない夫は『なんで拒否するんだよ~』と房江《ふさえ》に言うた。

房江《ふさえ》は、ものすごい血相で超なさけない夫を怒鳴りつけた。

「イヤ!!お断りよ!!」
「なんで拒否するのだよ~」
「うちはあんたのことがイヤなのよ!!」
「オレは房江《ふさえ》とやり直したいんだよ…」
「はぐいたらしいチンピラね!!」
「オレのどこがチンピラなんだよぅ~オレは、チンピラから足を洗ったばかりなんだよ…」
「あんたのいう事は信用できん!!」
「オレは、まっとうな人生を歩むと決意したんだよ…」
「ほんなら刑務所《ローヤ》へ行きなさいよ!!」

この時、友代《ともよ》が房江《ふさえ》をなだめるために割って入った。

「房江《ふさえ》さん、落ちついて話し合いをしてよ~ダンナさんの気持ちをくみ取ってよ~」

房江《ふさえ》は、よりし烈な怒りを込めて言うた。

「イヤ!!チンピラのダンナの気持ちなんかくみ取れないわよ!!」
「どうしてくみ取らないのですか…ダンナさんは、必死に土下座してわびているのよ…」
「ますますはぐいたらしいわね!!」

ブチ切れた房江《ふさえ》は、隠し持っていた刃渡りのするどいナイフを取り出したあと、超なさけない夫の右肩を切り裂いた。

「ギャー!!」
「ふざけるな!!」
「ああ、イヤだ…死にたくない…」
「死ねや!!」
「房江《ふさえ》さんやめて!!逃げて!!」

友代《ともよ》は、必死になって房江《ふさえ》を押さえつけた。

その間に、超なさけない夫は家から逃げ出した。

(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ドザー!!ドザ!!)

この時、外では雷を伴った非常に激しい雨が断続的に降っていた。

超なさけない夫は、橋を越えて国道317号線へ向かおうとした。

しかし…

川にかかる橋のところでヤクザの男ふたりに見つかってしまった。

「アニキ!!」
「なんや!!」
「大南《おおみなみ》のクソガキがみつけやした!!」
「オドレよくも上納金《くみのゼニ》と情婦《くみちょうのレコ》をドロボーしたな!!」
「ワアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「オドレクソガキャ!!」

超なさけない夫は、ふたりの男からボコボコにどつき回されながらも必死に喰らいついた。

「ワアアアアアアアアアアアア!!」

(ドボーン!!)

超なさけない夫は、仲間のひとりの男を橋から突き落とした。

増水した川へ堕《お》ちた男は、川に流された。

そして、超なさけない夫はもう一人の男を橋から突き落として殺した。

その後、超なさけない夫は国道へ向かって走りまくった。

この時、対面の信号機が赤であった。

その結果…

(キーッ!!ドスーン!!)

超なさけない夫は、走ってきた特大トレーラーにはねられて亡くなった。

この時、よりいびつな雨音が現場周辺に響き渡った。
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