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第1話・どこへ帰る

【どこへ帰る】

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私が乗っているバスは、どんどびのスクランブル交差点を右折して旧国道へ向かう予定であったが、違うルートを走行していた。

バスは、宝来通《ほうらいどお》りのバス停を通過したあと小学校前の(信号機のある)交差点を右折~蔵敷町《くらしきちょう》の線路沿いの通り~大坪通《おおつぼどお》り~榎橋《えのきばし》~立花町~郷《ごう》~辻堂《つじどう》から跨線橋《はし》を越えたあと、五軒屋《ごけんや》のバス停ヘ向かった。

喜田村交差点にバスが到着したのは、11時20分頃であった。

バスの通り道で非常事態がふたつ発生したので、危険を避けるために大廻《おおまわ》りして運行された。

そのために、ダイヤが大きく乱れた…

一つは、鳥生《とりゅう》~五軒屋《ごけんや》の沿線で道路が冠水《かんすい》したので通行止めになった…

(この付近で1時間に80ミリ前後の猛烈な雨が降ったので、浸水が発生した)

もう一つは、少年が例のどら息子を殺したあと周辺の地区で刃物をふりまわして暴れていた…

事件が発生した建材店から半径1キロ圏内の道路が警察によって封鎖されていた…

事件が発生した建材店のキンリンの地区は、今も危険な状態におちいっているようだ…

(ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン…)

ところ変わって、建材店の裏側にある一時停止の交差点にて…

どら息子を殺した少年は、刃物をふりまわしながら暴れていた。

愛媛県警のパトカー10台が刃物をふりまわして暴れている少年に対してサイレン音でイカクしながら追跡していた。

『コラー!!刃物をふりまわして暴れている少年《クソガキャ》!!』
『オドレ少年《クソガキャ》!!ぶっ殺すゾ!!』

パトカーのスピーカーから警察官の怒号が響いた。

「ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

刃物をふりまわして暴れている少年は、奇声をあげながらパトカーに向かった。

少年は、背中に入れていたバールでパトカーのボンネットを殴りつけた。

それから30分後であった。

奇声をあげて刃物をふりまわして暴れていた少年は、その場に刃物をすてたあと逃走した。

その後、警察官たちがパトカーからいっせいに降りた。

警察官たちは、大急ぎで少年が持っていた凶器をすべて回収した。

例の少年は、事件現場《げんば》から逃走したあと行方不明になった。

さて、その頃であった。

私が乗っているバスは、桜井の国道沿いにある(ニッサン)プリンス付近の交差点に到着した。

バスは、赤信号で停車していた。

バスに乗っている乗客は、私ひとりだけであった。

その時であった。

(ゴロゴロ…ドスーン!!…ザーーーーーーーーーーーー!!)

近くで、規模の大きな雷がおちたようだ…

同時に、70ミリに相当するし烈な雨が降り出した。

信号が青に変わった。

バスが交差点から発進《はっしん》した。

バスは、東桜井~孫兵衛作《まごべえさく》~河原津《かわらづ》~楠浜《くすはま》~壬生川《にゅうがわ》の中心部~中山川橋…を通って小松町役場へ向かった。

小松町役場にバスが到着したのは、午後12時半過ぎであった。

バスは、小松町役場を出発したあと国道11号線を通って西条市中心部へ向かった。

この時、非常に激しい雨がまた降り出した。

バスは、加茂川橋を越えて常心交差点《じょうしんこうさてん》を左折したあと、JR予讃本線《よさんせん》の下にあるアンダーパスへ向かった。

アンダーパスには、雨水が少したまっていた。

バスは、そのまま水たまりを通過した。

バスが通過した勢いで、激しい水しぶきがあがった。

バスに乗っている私は、ぼんやりとした表情で西条市中心部の街並みをながめていた。

バスは、西条登り道~西条駅前~横黒~西条車庫(西条済生会病院前)~住友病院前(新居浜西バスターミナル)~西原町3丁目~登り道~元塚~市役所前…を通って終点・JR新居浜駅へ向かった。

バスが終点・JR新居浜駅に到着したのは、午後1時50分頃であった。

それからまた20分後であった。

私は、川之江営業所行きのバスに乗り換えた。

バスは、新居浜駅を出発したあと東城交差点を左折して再び国道11号線に入った。

それから数分後であった。

(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ドザーッ、ドザーッ…ゴーッ、ゴーッ)

この時、規模の大きな雷鳴が再びとどろいた。

同時に、1時間に100ミリを超すし烈な雨が降りだした。

さらにそのまた上に、非常に強いやまじ風が吹き付けた。

バスは、やまじ風を受けたことにより横転しそうになった。

非常に激しい雨音《あまおと》と猛烈な風の音を聞いた私は、ひどくおびえた。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

この時、バスに乗っている数人の女性客が強烈な悲鳴をあげていた。

時は、夕方4時55分頃であった。

私が乗っているバスは、大王製紙の工場群が建ち並んでいる通りを走行していた。

この時、朝から降り続いていた雨はやんでいた。

灰色の雲のすき間から陽《ひ》の光りがさしていた。

道路のアスファルトは、朝から降り続いていた雨でべっとりと濡れていた。

バスが金生川《きんせいがわ》にかかる橋を通りかかった時であった。

川は、ドカ雨が降り続いたことによって水が増水していた。

こんなに雨がたくさん降ったのか…

夕方5時過ぎであった。

バスは、川之江の中心部にある港通りのバス停に着いた。

ショルダーバックを持ってバスを降りた私は、雨で濡れた歩道をトボトボと歩いた。

そのわきで、松山や高松方面へ向かうたくさんの自動車《くるま》がせわしく往来《おうらい》していた。

夕方5時半頃であった。

私は、川之江駅付近にある栄町商店街にやって来た。

私は、とぼとぼした足取りでアーケード街を歩いていた。

この時、通りのスピーカーから五木ひろしさんの歌で『どこへ帰る』が流れていた。

私は…

どこへ帰ればいいのか…

私が帰る家は…

どこにあるのか?

そう思った私は、思わず泣きそうになった。

そんなことよりも、建材店から逃げ出したあとの人生設計を考えないと…

せやけど…

保証人を頼める人がいない…

履歴書《しょめん》を書けと言われても、書けない…

…って言うか、履歴書《しょめん》書くのがイヤや…

…って言うか…

会社づとめそのものがイヤや!!

私の人生が大きく狂った原因はなんやねん…

その原因は…

私が3歳9ヶ月頃に発生したあの事件にあったのだ…

あの夏の日がなかったらと思うと…

非常にくやしい…
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