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第3話・良縁が逃げ出した日

【いびつな雷雨】

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時は流れて…

7月1日の午前11時頃であった。

この日の予報は、雨時々止むでところにより雷を伴う…であった。

お昼のニュースで、7月2日から数日の間にかけて梅雨前線《ぜんせん》が列島に停滞する上に活動がより活発になると伝えられた。

雨の降り方は、明け方頃までザーザーと降っていたがこの時間はシトシトとザーザーを繰り返していた。

なお、夜の予報は東予西部で夜遅くに雷を伴って非常に激しく降ると伝えられた。

あの日が刻々と近づいてきたようだ。

話は変わって…

場所は、今治市旭町《しないあさひまち》にある今治国際ホテルにて…

この日は、歌手の鈴木雅之さんのサマーディナーショーが開催される日であったので、2階の結婚披露宴場に予約客がたくさん入っていた。

それと並行して、ミニブライダルフェアが開催されていた。

かおるは、健一郎と菜水《なみ》を連れてミニブライダルフェアにやって来た。

かおるは、健一郎と菜水《なみ》の意見を聞かずに一方的に準備を進めた。

その結果、挙式披露宴は7月7日に決定した。

ハネムーンは、7月8日の朝いちに関西国際空港から出発するハワイ・ホノルル国際空港行きのアメリカン航空の往復チケットとホノルルの超豪華ホテルの予約を取った。

そのまた上にかおるは、さらに大量の費用をネンシュツした。

費用すべては、健一郎がもと暮らしていた家を売却した分とあつことてつやがちいちゃい時から貯めていたチョチク…全部を使った。

これにより、健一郎がもと暮らしていた家を売却したカネはコカツした。

ところ変わって、エントランスホールにあるカフェテリアにて…

かおると健一郎と菜水《なみ》は、お茶をのみながらお話をしていた。

健一郎は、ものすごくつらい声でかおるに言うた。

「あの~、おばさま。」
「(かおる、過度にやさしい声で言う)どうしたの健ちゃん。」
「(健一郎、ものすごくつらい声で言う)少しはぼくたちの意見を聞いてください…」
「(かおる、困った声で言う)きいてるわよぉ~」

菜水《なみ》は、ものすごくつらい声でかおるに言うた。

「あの奥さま~」
「(かおる、過度にやさしい声で言う)菜水《なみ》さん、どうしたの?」
「ブライダルフェアは、カップルさんが主人公ですよ~…なんで奥さまが一方的に進めるのですか?」

かおるは、過度にやさしい声で菜水《なみ》に言うた。

「だから、健ちゃんと菜水《なみ》さんが主人公であるのは分かっているわよ…うちは健ちゃんと菜水《なみ》さんが幸せになれるようにアレコレとセッティングしているのよ。」

健一郎は、ものすごく困った声でかおるに言うた。

「おばさまがアレコレとセッティングするのはかまいせんが、なんでもと暮らしていた家を売却《うった》のですか?~」
「だから、健ちゃんと菜水《なみ》さんが幸せになるために家を売却《ばいきゃく》したのよ。」
「それに、あつこちゃんとてつやさんが大人になった時に必要なチョチクを全部使うのも…」

かおるは、過度にやさしい声で健一郎に言いながらだまらせた。

「あつことてつやは、私立高校《メートク》を勝手にやめて家出して行方不明になったのよ…家出した子の将来なんかないのよ。」

菜水《なみ》は、ものすごくつらい声でかおるに言うた。

「それはいくらなんでもやりすぎです…」

かおるは、過度にやさしい声で菜水《なみ》に言いながらだまらせた。

「やりすぎじゃないわよ…うちは健ちゃんと菜水《なみ》さんが幸せになるためにあつことてつやのチョチクを全額使ったのよ…あつことてつやは、除籍《カンドー》したあとシッソウセンコクを出したから、うちに帰ることができなくなったのよ…うちは健ちゃんと菜水《なみ》さんが幸せになってほしいのよ…」

かおるは、かちほこった声で健一郎と菜水《なみ》に言うたあとのみかけのコーヒをひとくちのんだ。

その後、かおるはうきうきした様子でカフェテリアから出たあと公衆電話のコーナーへ向かった。

この時であった。

クリーム色のトレンチコート姿で右腕に愛媛県警《けんけい》の捜査一課長のワッペンを着けている刑事とグレーのスーツの若手の刑事ふたりがかおるを呼び止めた。

「あの~、すみません…」
「はい?」
「愛媛県警《けんけい》の捜査一課でございますが…」
「えっ?捜査一課?」
「はい。」

えっ…

どう言うこと?

なんでうちがケーサツに呼び止められたの?

かおるは、ものすごくコンワクした表情でつぶやいた。

捜査一課長《いっかちょう》の男性は、かおるに2枚の顔写真を見せた。

顔写真は、健一郎の両親・隆三《りゅうぞう》と八重《やえ》であった。

捜査一課長《いっかちょう》の男性は、かおるにこう言うた。

「あの~、ものすごく言いにくい話でございますが、雑賀隆三《さいかりゅうぞう》は暴力団関係者と交友関係があったことを理由に、全国に特別手配しました。」
「特別手配…健ちゃんのおとーさんが特別手配…」

捜査一課長《いっかちょう》からことの次第を聞いたかおるは、顔が真っ青になった。

健ちゃんのおとーさんが…

ボータイ法にガイトウする容疑で…

全国に特別手配された…

捜査一課長《いっかちょう》に同行していた男性の刑事は、ものすごくつらい声でかおるに言うた。

「雑賀隆三《さいかりゅうぞう》は、きのう(6月30日)を持って懲戒免職《えいきゅうついほう》しました。」
「懲戒免職《えいきゅうついほう》…」

捜査一課長《いっかちょう》は、ものすごくえらそうな声でかおるに言うた。

「雑賀隆三《ようぎしゃ》が暴力団事務所《じむしょ》のもんと交友関係があったことについては、大部分の大衆週刊誌《しゅうかんし》で報じられていることは、あんた知ってるよね。」

同行していた男性刑事も、怒った声でかおるに言うた。

「雑賀隆三《ようぎしゃ》は、組長《おやぶん》に用心棒《ケツモチ》を頼んでいた…組長《おやぶん》とナンバーツーの男から高価な腕時計《ロレックス》などをもらっていたことなども明らかになりました…その上に、新たな事件が発生しました…3日前に通町で県外から来た暴力団関係者の男3人が銃で撃たれた事件がありました…事件で使われた銃は、雑賀隆三《ようぎしゃ》は、密売人《バイニン》から拳銃《トカレフ》でした…雑賀隆三《ようぎしゃ》が密売人《バイニン》から拳銃《トカレフ》を購入している現場の写真が…明日発売の大衆週刊誌《しゅうかんし》のトップ(記事)で報じられていることが決まりました…雑賀隆三《ようぎしゃ》ひとりのせいで県警《われわれ》は大被害をこうむりました!!県警《われわれ》はメンモクをつぶされたのですよ!!」

メンモクをつぶされたと言うけど…

うちにどうしてほしいと言うのよ…

かおるは、ものすごくつらい表情でつぶやいたあと捜査一課長《いっかちょう》に言うた。

「それじゃあ、女性の方はなんの容疑で特別手配されたのですか?」

同行していた男性刑事は、怒った声でかおるに言うた。

「雑賀八重《ようぎしゃのおんな》は、県病院のチョウボに大穴をあけた容疑で全国に特別手配しました。」
「健ちゃんのおかーさんが、県病院のチョウボに大穴をあけた…」

捜査一課長《いっかちょう》は、ものすごくえらそうな声でかおるに言うた。

「雑賀八重《このおんな》の愛人は、暴力団関係者の男ですよ…他にも、数人のヤクザとも愛人関係があります…他にも、先月22日に松山市内でホステスさんが集団レイプの被害を受けて殺された事件がありました…雑賀八重《このおんな》は、実行犯11人にカネを渡すなどしていましたよ…他にも雑賀八重《このおんな》は…殺人・殺人未遂・強盗殺人など…合わせて102の容疑で全国に特別手配しました!!」
「ひゃ、102の容疑で特別手配!!」

捜査一課長《いっかちょう》からことの次第を聞いたかおるは、激しいめまいを起こして倒れそうになった。

健ちゃんがこれから幸せになろうとしている時に…

自分の両親が全国に特別手配された…

どうしよう…

健ちゃんになんて説明すればいいのよ…

捜査一課長《いっかちょう》は、しみじみした声でかおるに言うた。

「エントランスのカフェテリアにいるおふたりは、雑賀夫婦《おとことおんな》の子息《セガレ》くんと婚約者?」
「そうですけど…」

捜査一課長《いっかちょう》は、きやすい声でかおるに言うた。

「これから幸せになろうとしている時にざんねんだな~…気を落とすなよ。」

捜査一課長《いっかちょう》は、かおるの肩を気安くポンポンとたたきながら立ち去った。

同行していた男性刑事も、かおるに対して『挙式披露宴予定日は、特別警報が発令されますよ…ゴシュウショウサマ…』と言うたあとその場から立ち去った。

その際に、男性刑事は声をあげて『ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…』と嘲笑《わら》っていた。

特別警報が発令されるのでゴシュウショウサマですってどう言うことよ…

あのふたりの刑事は、健ちゃんと菜水《なみ》さんの幸せをぶち壊した…

許さない…

かおるは、全身をブルブル震わせながら怒り狂った。

(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロドスーン!!ドザー!!ドザー!!)

この時、外では雷を伴って1時間に80ミリに相当する猛烈な雨が降っていた。
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