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第1話・遠くへ行きたい
【遠くへ行きたい】
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時は、1971年9月21日の朝8時50分頃のことであった…
場所は、愛媛県今治市旭町にある建材店の倉庫がある敷地にて…
空は、どす黒い雲におおわれている…
この日は、日本の東の海上で台風から変わった温帯低気圧から伸びている前線が東日本から西日本の太平洋側に停滞しているところに南から湿気をふくんだ風が流れ込んでいたので、大気が非常に不安定な状態になっていた。
そんな中で、深刻な事件が発生した。
「ふざけるなよクソガキ!!オドレははぐいたらしいからぶっ殺してやる!!」
倉庫の敷地内で、20代前半の男の怒鳴り声が響き渡っている…
怒鳴り声の主は、私・コリントイワマツヨシタカグラマシーの実の父親・ラクシュイワマツヨリイエスルタン(24歳)である…
実父は、経営者のどら息子が発した言葉にブチ切れたので、怒鳴り声をあげている…
原因は、配達に行くトラックに乗って行くことでトラブルが発生した…
経営者のどら息子は、実父に『言うことを聞け。』と言うた。
しかし、実父はどら息子からグロウされたと怒っている…
湿った南風が吹いている中で、実父とどら息子が怒号をあげていた。
「オドレクソガキ!!もういっぺん言うてみろ!!」
「わしは言うことを聞けと言うただけだ!!ここで働かせてもらっている以上は言うことを聞け!!」
「オドレ!!ぶっ殺してやる!!」
(ドカッ!!)
どら息子を体当たりで倒した実父は、シツヨウに殴るけるの暴行を加えた…
周囲にいた男性従業員さんたちは、実父に殺されることが恐いので、止めることができなかった…
どら息子をボコボコにどつきまわした実父は、フォークリフトに置いていた大きめのバールで、どら息子の背中を強烈に殴りつけた。
そして、従業員さん数人に対してもバールで殴り付けて大ケガを負わせた。
その後、実父は足早に逃走した。
「コラー!!逃げるのか!!」
「戻ってこい!!」
職場放棄をした実父の耳に、従業員さんたちの声は届いていない…
建材店から逃げだした実父は、近くの金具屋の角を右に回って、中学校の通用門の三差路から複数のルートを走って今治桟橋へ向かった。
(ビュービュービュービュー…ゴロゴロ…)
湿った南風が強く吹いていたのと同時に、雷が鳴っている…
湿った南風が吹いている中、実父は必死になって走り続けた。
「ハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハア…」
それから20分後…
建材店から逃げてきた実父は、今治桟橋の青ビル(港湾ビル)に到着した…
実父は、ビル内の待合室にあるコインロッカーに収納していたキャリーバッグを取り出した。
その後、身障者用のトイレで着替えをした…
(ゴロゴロゴロゴロ…ポツポツ…ドザーッ、ドザーッ…)
実父がトイレで着替えをしている時であった…
雷が鳴ったのと同時に、ポツポツと雨粒が落ち出した。
それから数秒後、雨は非常に激しい音を立てて降りだした。
トイレで着替えを終えた実父は、キャリーバッグを持ってロータリーにあるバス乗り場へ向かった。
この時、雨はさらに激しい音を立てて降っていた…
早く逃げたい…
この街から一刻も早く逃げたい…
実父は、ソワソワとした表情で腕時計と待合所のかべにかかっている時刻表をひっきりなしにみつめている…
その時であった…
(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)
遠くで、けたたましいサイレン音が鳴り響いている…
けたたましいサイレン音を聞いた実父は、より激しい動揺に襲われた…
(ウーウーウーウーウーウーウーウー…ピーポーピーポーピーポーピーポー…)
しばらくして、消防車とパトカーと救急車のけたたましいサイレンも一緒に鳴り響いた…
つづいて、その付近にある美須賀の消防団の詰め所から出動した消防車のサイレン音が鳴り響いた…
今治の中央消防署のけたたましいサイレン音は、鳴り止むことなく鳴り響いた…
実父は、一刻でも早く逃げたいので、気持ちがソワソワしている。
それから1分後に、バス乗り場に大型バスが到着した。
実父は、キャリーバッグを持って乗り場に到着した大型バスに乗り込んだ…
バスに乗り込んだ実父は、窓をカーテンでおおったあと、イスに座った。
そして、ひざの上に載せたキャリーバッグを抱きしめながら身をひそめている。
実父が乗っている川之江行きの特急バスは、非常に激しい雨が降る中を定刻通りに出発した…
実父がバスに乗り込んだ頃であった…
地獄絵と化した建材店の敷地内に、怒号と叫び声が響いている。
経営者のどら息子は、ボロボロに傷ついた状態でうつ伏せになっている…
複数の従業員さんたちは、ひどい大けがを負っている。
消防隊員たちと消防団員たちが負傷者の応急措置に取り組んでいる。
2人の従業員さんが脳ザショウを起こして危険な状態におちいった…
事件現場には、愛媛県警のパトカーと今治市の中央消防署の消防車と救急車と日吉と美須賀の消防団の消防車がたくさん停まっている。
キンパクした空気が、地区にはりつめている…
「ああ…(どら息子)ちゃん…」
インテリのメガネをかけている目つきの悪い経営者の奥さまは、呼吸が止まったどら息子に必死に呼びかけている。
キンリンの住民のみなさまは、冷めた目つきでヒソヒソと話している…
サイテーね…
奥さまは一体、なにを考えとんかしら…
こんな時だけオヤヅラするなんて…
どーかしているわよ…
経営者のどら息子は、実父からシツヨウに暴行を受けた直後に亡くなった…
経営者の奥さまは、より激しい叫び声をあげて泣いた。
(ドザーッ、ドザーッ、ドザーッ…)
さて、その頃であった…
実父は、川之江行きの特急バスに乗って、あてのない旅に出た…
特急バスは、このあと大洋デパート前(本町角)~今治センター(今治バスセンター)~旭町…の順で停まる…
途中の大洋デパート前と今治センターのバス乗り場で、大勢のお客さまがバスに乗り込んでいた関係で、停車時間が少し伸びた…
バスは、二番目に停車した今治センターの乗り場を数分遅れて出発したあと、市役所の前にあるラウンドアバウト(ロータリー)の交差点を左折して、旭町の大通りへ入る…
(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!バリバリバリバリバリバリバリ!!ドザーッ!!ドザーッ!!)
この時、より激しい雷鳴がとどろいた。
それと同時に、雨の降り方がし烈になった…
実父が乗っているバスは、し烈な雨が降る中を走っている…
バスは、今治センターを出発してから1分後に事件現場の建材店を通過した…
それから2分後、バスは蒼社川にかかる橋を越えて市街地から抜けた。
その直後であった…
(ドザーッ、ドザーッ、ドザーッ…ゴゴゴゴ…)
橋の下を流れている川が、不気味な音を立てて流れていた。
川にかかる橋げたがミシミシと音を立てていた…
(ミシミシミシミシミシミシ…グニャッ…)
橋は、濁流によって大きくねじれた。
その直後、付近の道路が通行止めになった。
その頃、実父が乗っているバスは鳥生の国道を通っていた…
地区のところどころで浸水が起こっていた。
この時、バスが水没しそうになった…
実父は、頓田川の橋を越えるまでの間、キャリーバッグを抱きしめておびえまくっていた…
それから20分後、実父が乗っているバスは、今治市から三芳町(西条市)に入った…
実父は、追っ手がいないことを確認してから窓のカーテンをあけた…
雨は、まだ非常に激しい音を立てて断続的に降っている。
周囲の景色がよく見えないので、どの辺りにいるのか分からない…
今、どの辺りを走っているのか…
雨が非常に激しい音を立てて降っているので…
外の様子が…
よくわからない…
(ドザーッ、ドザーッ、ドザーッ…)
時は、午後1時過ぎのことであった…
ところ変わって、越智郡玉川町の鈍川温泉郷にて…
温泉街からうんと離れた料亭で、恐ろしい事件が発生した。
この付近でも、雷を伴って1時間に80ミリ以上のし烈な雨が降っていた…
おそろしい事件は、料亭内の大広間で発生した。
この時、結婚披露宴が執りおこなわれる予定であった。
しかし、新郎さんがやくざがらみのもめ事を起こしていたことが原因で、おめでたい宴はシュラバと化した。
やくざの男たち50人が大広間に押しかけて来た。
(ズドーン!!ズドーン!!ギャーッ!!)
料亭内の大広間で、やくざの男がハッポウした拳銃の銃声と親族たちのけたたましい悲鳴が響いた。
そんな中で、純白の文金高島田姿の花嫁さんが50人の子守女さんたちに守られて料亭から出てきた。
彼女は、50人の子守女さんたちと一緒に現場から300メートル先に停車している白のニッサンキャラバン(ワゴン車)へ向かった…
花嫁さんは、私の実母のきょうこ(26歳)である。
実母は、胎内に私・イワマツを宿している。
「時間がないわよ!!急いで!!」
ワゴン車に乗っている女性は、花嫁姿の実母を守っている子守女さんたちに呼びかける。
子守女さんたちに呼びかけている女性は、波止浜の母子保護施設の施設長さんの里崎眞規子(28歳)である。
実母は、子守女さんたちの助けを借りてワゴン車に乗り込む。
「大丈夫?」
「くすんくすんくすん…」
ワゴン車に乗り込んだ実母は、施設長さんに抱きついてくすんくすんくすんと泣いている。
(ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!)
この時、遠くでより強烈なブザー音が聞こえた。
玉川ダムのダム湖の上流で、一気に200ミリのし烈な雨が降った。
ブザー音は、ダムが緊急操作開始を知らせる合図である。
この時、実母と施設長さんが乗っているワゴン車の前に停まっている黒のニッサンパッカードの後ろの席の窓から、焼きソバヘアで黒のサングラスの男が顔を出して、子守女さんたちに呼びかけた。
男は、南予の喜多郡の薬問屋『溝端屋』の番頭はん・竹宮豊国である。
「早く出発するぞ!!のらんかい!!」
子守女さんたちは、実母と施設長さんが乗っているワゴン車の後ろに停まっている5台のワゴン車に分乗した…
その後、ワゴン車6台は先導車につづいて事件現場から出発した…
車7台は、鈍川温泉郷から出発したあと国道317号線から県道北条玉川線を経由して北条市側へ抜けたあと、国道196号線を通って松山市内へと向かった…
さて、その頃であった…
実父が乗っている川之江行きの特急バスは、国道11号線を東へ向けて走っている。
国道11号線沿いの停車するバス停は、小松町役場前と氷見だけで、氷見を出たあとは西条登り道までそのまま走る。
し烈な雨は、大明神川を過ぎた頃におさまった。
しかし、西条市に入った辺りで再び雷を伴った非常に激しい雨が降りだした。
バスは、加茂川橋を越えて常心交差点を左折したあと、国鉄予讃本線の下のアンダーパスへ向かった…
アンダーパスに雨水が少したまっていたが、バスはそのまま水たまりを通過した…
実父は、ぼんやりとした表情で西条市内の街並みをながめている。
バスは、西条登り道~西条駅前~横黒~西条車庫~住友病院前~別子大丸前~登り道~元塚~市役所前~国鉄新居浜駅~東城と停車した。
その間も、非常に激しい雨が降っていた。
バスは、新居浜市の東城交差点を左折して再び国道11号線に入った。
それから数分後…
(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ドザーッ、ドザーッ…ゴーッ、ゴーッ)
この時、規模の大きな雷鳴がとどろいた。
それと同時に、1時間に100ミリを超すし烈な雨が降りだした。
さらにその上に、非常に強いやまじ風が吹き付けた。
この時、バスが横転しそうになっていた…
バスの中にいるは実父は、非常に激しい雨の音とやまじ風が強く吹き付ける音にひどくおびえていた。
時は、午後2時過ぎのことであった…
実父が乗っている特急バスは、大王製紙の工場群が建ち並んでいる通りを走行していた…
バスが川之江の中心地に着いた時、雨は上がった…
実父は、キャリーバッグを持って港通りのバス停でバスを降りた…
バスを降りた実父は、とぼとぼとした足取りで雨上がりの歩道を歩く。
車道は、松山や高松方面へ向かっているたくさんの自動車がせわしく往来している。
実父は、ときおり足を止めてぼんやりとした表情で前を見つめていた。
ここは…
どこなんだろう…
オレはまた…
職場でもめ事を起こして…
職場放棄をした…
けど…
もうええ…
オレは、ひとつの仕事に集中できない…
どこへ行っても、役に立たない…
もうあきらめよう…
もうあきらめよう…
場所は、愛媛県今治市旭町にある建材店の倉庫がある敷地にて…
空は、どす黒い雲におおわれている…
この日は、日本の東の海上で台風から変わった温帯低気圧から伸びている前線が東日本から西日本の太平洋側に停滞しているところに南から湿気をふくんだ風が流れ込んでいたので、大気が非常に不安定な状態になっていた。
そんな中で、深刻な事件が発生した。
「ふざけるなよクソガキ!!オドレははぐいたらしいからぶっ殺してやる!!」
倉庫の敷地内で、20代前半の男の怒鳴り声が響き渡っている…
怒鳴り声の主は、私・コリントイワマツヨシタカグラマシーの実の父親・ラクシュイワマツヨリイエスルタン(24歳)である…
実父は、経営者のどら息子が発した言葉にブチ切れたので、怒鳴り声をあげている…
原因は、配達に行くトラックに乗って行くことでトラブルが発生した…
経営者のどら息子は、実父に『言うことを聞け。』と言うた。
しかし、実父はどら息子からグロウされたと怒っている…
湿った南風が吹いている中で、実父とどら息子が怒号をあげていた。
「オドレクソガキ!!もういっぺん言うてみろ!!」
「わしは言うことを聞けと言うただけだ!!ここで働かせてもらっている以上は言うことを聞け!!」
「オドレ!!ぶっ殺してやる!!」
(ドカッ!!)
どら息子を体当たりで倒した実父は、シツヨウに殴るけるの暴行を加えた…
周囲にいた男性従業員さんたちは、実父に殺されることが恐いので、止めることができなかった…
どら息子をボコボコにどつきまわした実父は、フォークリフトに置いていた大きめのバールで、どら息子の背中を強烈に殴りつけた。
そして、従業員さん数人に対してもバールで殴り付けて大ケガを負わせた。
その後、実父は足早に逃走した。
「コラー!!逃げるのか!!」
「戻ってこい!!」
職場放棄をした実父の耳に、従業員さんたちの声は届いていない…
建材店から逃げだした実父は、近くの金具屋の角を右に回って、中学校の通用門の三差路から複数のルートを走って今治桟橋へ向かった。
(ビュービュービュービュー…ゴロゴロ…)
湿った南風が強く吹いていたのと同時に、雷が鳴っている…
湿った南風が吹いている中、実父は必死になって走り続けた。
「ハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハア…」
それから20分後…
建材店から逃げてきた実父は、今治桟橋の青ビル(港湾ビル)に到着した…
実父は、ビル内の待合室にあるコインロッカーに収納していたキャリーバッグを取り出した。
その後、身障者用のトイレで着替えをした…
(ゴロゴロゴロゴロ…ポツポツ…ドザーッ、ドザーッ…)
実父がトイレで着替えをしている時であった…
雷が鳴ったのと同時に、ポツポツと雨粒が落ち出した。
それから数秒後、雨は非常に激しい音を立てて降りだした。
トイレで着替えを終えた実父は、キャリーバッグを持ってロータリーにあるバス乗り場へ向かった。
この時、雨はさらに激しい音を立てて降っていた…
早く逃げたい…
この街から一刻も早く逃げたい…
実父は、ソワソワとした表情で腕時計と待合所のかべにかかっている時刻表をひっきりなしにみつめている…
その時であった…
(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)
遠くで、けたたましいサイレン音が鳴り響いている…
けたたましいサイレン音を聞いた実父は、より激しい動揺に襲われた…
(ウーウーウーウーウーウーウーウー…ピーポーピーポーピーポーピーポー…)
しばらくして、消防車とパトカーと救急車のけたたましいサイレンも一緒に鳴り響いた…
つづいて、その付近にある美須賀の消防団の詰め所から出動した消防車のサイレン音が鳴り響いた…
今治の中央消防署のけたたましいサイレン音は、鳴り止むことなく鳴り響いた…
実父は、一刻でも早く逃げたいので、気持ちがソワソワしている。
それから1分後に、バス乗り場に大型バスが到着した。
実父は、キャリーバッグを持って乗り場に到着した大型バスに乗り込んだ…
バスに乗り込んだ実父は、窓をカーテンでおおったあと、イスに座った。
そして、ひざの上に載せたキャリーバッグを抱きしめながら身をひそめている。
実父が乗っている川之江行きの特急バスは、非常に激しい雨が降る中を定刻通りに出発した…
実父がバスに乗り込んだ頃であった…
地獄絵と化した建材店の敷地内に、怒号と叫び声が響いている。
経営者のどら息子は、ボロボロに傷ついた状態でうつ伏せになっている…
複数の従業員さんたちは、ひどい大けがを負っている。
消防隊員たちと消防団員たちが負傷者の応急措置に取り組んでいる。
2人の従業員さんが脳ザショウを起こして危険な状態におちいった…
事件現場には、愛媛県警のパトカーと今治市の中央消防署の消防車と救急車と日吉と美須賀の消防団の消防車がたくさん停まっている。
キンパクした空気が、地区にはりつめている…
「ああ…(どら息子)ちゃん…」
インテリのメガネをかけている目つきの悪い経営者の奥さまは、呼吸が止まったどら息子に必死に呼びかけている。
キンリンの住民のみなさまは、冷めた目つきでヒソヒソと話している…
サイテーね…
奥さまは一体、なにを考えとんかしら…
こんな時だけオヤヅラするなんて…
どーかしているわよ…
経営者のどら息子は、実父からシツヨウに暴行を受けた直後に亡くなった…
経営者の奥さまは、より激しい叫び声をあげて泣いた。
(ドザーッ、ドザーッ、ドザーッ…)
さて、その頃であった…
実父は、川之江行きの特急バスに乗って、あてのない旅に出た…
特急バスは、このあと大洋デパート前(本町角)~今治センター(今治バスセンター)~旭町…の順で停まる…
途中の大洋デパート前と今治センターのバス乗り場で、大勢のお客さまがバスに乗り込んでいた関係で、停車時間が少し伸びた…
バスは、二番目に停車した今治センターの乗り場を数分遅れて出発したあと、市役所の前にあるラウンドアバウト(ロータリー)の交差点を左折して、旭町の大通りへ入る…
(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!バリバリバリバリバリバリバリ!!ドザーッ!!ドザーッ!!)
この時、より激しい雷鳴がとどろいた。
それと同時に、雨の降り方がし烈になった…
実父が乗っているバスは、し烈な雨が降る中を走っている…
バスは、今治センターを出発してから1分後に事件現場の建材店を通過した…
それから2分後、バスは蒼社川にかかる橋を越えて市街地から抜けた。
その直後であった…
(ドザーッ、ドザーッ、ドザーッ…ゴゴゴゴ…)
橋の下を流れている川が、不気味な音を立てて流れていた。
川にかかる橋げたがミシミシと音を立てていた…
(ミシミシミシミシミシミシ…グニャッ…)
橋は、濁流によって大きくねじれた。
その直後、付近の道路が通行止めになった。
その頃、実父が乗っているバスは鳥生の国道を通っていた…
地区のところどころで浸水が起こっていた。
この時、バスが水没しそうになった…
実父は、頓田川の橋を越えるまでの間、キャリーバッグを抱きしめておびえまくっていた…
それから20分後、実父が乗っているバスは、今治市から三芳町(西条市)に入った…
実父は、追っ手がいないことを確認してから窓のカーテンをあけた…
雨は、まだ非常に激しい音を立てて断続的に降っている。
周囲の景色がよく見えないので、どの辺りにいるのか分からない…
今、どの辺りを走っているのか…
雨が非常に激しい音を立てて降っているので…
外の様子が…
よくわからない…
(ドザーッ、ドザーッ、ドザーッ…)
時は、午後1時過ぎのことであった…
ところ変わって、越智郡玉川町の鈍川温泉郷にて…
温泉街からうんと離れた料亭で、恐ろしい事件が発生した。
この付近でも、雷を伴って1時間に80ミリ以上のし烈な雨が降っていた…
おそろしい事件は、料亭内の大広間で発生した。
この時、結婚披露宴が執りおこなわれる予定であった。
しかし、新郎さんがやくざがらみのもめ事を起こしていたことが原因で、おめでたい宴はシュラバと化した。
やくざの男たち50人が大広間に押しかけて来た。
(ズドーン!!ズドーン!!ギャーッ!!)
料亭内の大広間で、やくざの男がハッポウした拳銃の銃声と親族たちのけたたましい悲鳴が響いた。
そんな中で、純白の文金高島田姿の花嫁さんが50人の子守女さんたちに守られて料亭から出てきた。
彼女は、50人の子守女さんたちと一緒に現場から300メートル先に停車している白のニッサンキャラバン(ワゴン車)へ向かった…
花嫁さんは、私の実母のきょうこ(26歳)である。
実母は、胎内に私・イワマツを宿している。
「時間がないわよ!!急いで!!」
ワゴン車に乗っている女性は、花嫁姿の実母を守っている子守女さんたちに呼びかける。
子守女さんたちに呼びかけている女性は、波止浜の母子保護施設の施設長さんの里崎眞規子(28歳)である。
実母は、子守女さんたちの助けを借りてワゴン車に乗り込む。
「大丈夫?」
「くすんくすんくすん…」
ワゴン車に乗り込んだ実母は、施設長さんに抱きついてくすんくすんくすんと泣いている。
(ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!)
この時、遠くでより強烈なブザー音が聞こえた。
玉川ダムのダム湖の上流で、一気に200ミリのし烈な雨が降った。
ブザー音は、ダムが緊急操作開始を知らせる合図である。
この時、実母と施設長さんが乗っているワゴン車の前に停まっている黒のニッサンパッカードの後ろの席の窓から、焼きソバヘアで黒のサングラスの男が顔を出して、子守女さんたちに呼びかけた。
男は、南予の喜多郡の薬問屋『溝端屋』の番頭はん・竹宮豊国である。
「早く出発するぞ!!のらんかい!!」
子守女さんたちは、実母と施設長さんが乗っているワゴン車の後ろに停まっている5台のワゴン車に分乗した…
その後、ワゴン車6台は先導車につづいて事件現場から出発した…
車7台は、鈍川温泉郷から出発したあと国道317号線から県道北条玉川線を経由して北条市側へ抜けたあと、国道196号線を通って松山市内へと向かった…
さて、その頃であった…
実父が乗っている川之江行きの特急バスは、国道11号線を東へ向けて走っている。
国道11号線沿いの停車するバス停は、小松町役場前と氷見だけで、氷見を出たあとは西条登り道までそのまま走る。
し烈な雨は、大明神川を過ぎた頃におさまった。
しかし、西条市に入った辺りで再び雷を伴った非常に激しい雨が降りだした。
バスは、加茂川橋を越えて常心交差点を左折したあと、国鉄予讃本線の下のアンダーパスへ向かった…
アンダーパスに雨水が少したまっていたが、バスはそのまま水たまりを通過した…
実父は、ぼんやりとした表情で西条市内の街並みをながめている。
バスは、西条登り道~西条駅前~横黒~西条車庫~住友病院前~別子大丸前~登り道~元塚~市役所前~国鉄新居浜駅~東城と停車した。
その間も、非常に激しい雨が降っていた。
バスは、新居浜市の東城交差点を左折して再び国道11号線に入った。
それから数分後…
(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ドザーッ、ドザーッ…ゴーッ、ゴーッ)
この時、規模の大きな雷鳴がとどろいた。
それと同時に、1時間に100ミリを超すし烈な雨が降りだした。
さらにその上に、非常に強いやまじ風が吹き付けた。
この時、バスが横転しそうになっていた…
バスの中にいるは実父は、非常に激しい雨の音とやまじ風が強く吹き付ける音にひどくおびえていた。
時は、午後2時過ぎのことであった…
実父が乗っている特急バスは、大王製紙の工場群が建ち並んでいる通りを走行していた…
バスが川之江の中心地に着いた時、雨は上がった…
実父は、キャリーバッグを持って港通りのバス停でバスを降りた…
バスを降りた実父は、とぼとぼとした足取りで雨上がりの歩道を歩く。
車道は、松山や高松方面へ向かっているたくさんの自動車がせわしく往来している。
実父は、ときおり足を止めてぼんやりとした表情で前を見つめていた。
ここは…
どこなんだろう…
オレはまた…
職場でもめ事を起こして…
職場放棄をした…
けど…
もうええ…
オレは、ひとつの仕事に集中できない…
どこへ行っても、役に立たない…
もうあきらめよう…
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