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第10話・長い夜

【恋し浜】

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さて、その頃であった。

またところ変わって、大阪西成《にしなり》の萩の茶屋にある公園にて…

公園のベンチにボロボロの服装になったゆらさんがベンチに座っていた。

いとが亡くなった翌日から日本全国(沖縄県以外)のあちらこちらを放浪していたゆらさんは、生きる気力をなくしたようだ。

今日は何月何日だろうか…

今、どのあたりにいるのか…

分からなくなったわ…

そんな中で、ゆらさんは2011年3月11日に生じた出来事を思い出した。

あの日、ゆらさんは気仙沼のイオンにいた。

ゆらさんは、いとが亡くなった翌日から(沖縄県以外の)日本全国各地で暮らしている友人宅を転々としながら暮らしていた。

バイト・パートはしたけど、どれも長続きせずにすぐにやめた。

その後、鹿折唐桑《ししおりからくわ》にあるスナックで働いていた。

この時、ゆらさんは店のチーママになった。

チーママになって、人生これからだと言うときにあの厄災に見舞われた。

ゆらさんは、ママから頼まれてイオンの食品売り場に来た。

厄災は、買い物をしている最中に生じた。

時計のはりは昼2時46分をさしていた。

(カタカタカタ…ゴトゴト…ドスーン!!ドスーン!!ドスーン!!グォーン!!バキバキ…)

突然、大地が大きく張り裂ける音がとどろいた。

店内が大パニックにおちいった。

午後2時57分頃であった。

ゆらさんは、バッグを持って2階にある家電売り場へ行った。

この時、テレビの画面にNHK総合テレビのニュースが映っていた。

東北・関東を中心に、日本全国の広範囲で大きな規模の地震が発生した。

岩手・宮城・福島の3県の沿岸に大津波警報…

関東沿岸に津波警報…

そして、広範囲の沿岸に津波注意報が発令された。

テレビの画面に津波の到達予想時刻が表示されていた。

画面の右上に『スマトラ大地震級・すぐにげて!!』が表示されていた。

大津波警報が発令された沿岸の予想される津波の高さは巨大と出ていた。

男性アナウンサーがものすごく怒った声で『スマトラ大地震の時に発生した大津波をいま一度思い出して下さい!!命を守るために一刻も早く高いところへ逃げて下さい!!』と伝えていた。

大変だ!!

早く屋上の駐車場に逃げないと…

灼熱地獄になってしまう!!

ゆらさんは、屋上の駐車場へ急いで逃げた。

ところ変わって、屋上の駐車場にて…

駐車場に大勢の人たちが集まっていた。

この時、避難してきた人たちが『何だあれは!!海が激しい炎をあげながらこっちに来るぞ!!』とさけんでいた。

その時であった。

(ゴーゴーゴー!!ドドドドド!!バリバリバリ!!ドカーン!!ザザザザザザ!!)

気仙沼市内《しないちゅうしんぶ》に、より激しい炎を伴った巨大津波が押し寄せた。

イオンの一階の駐車場にも巨大津波が流れ込んだ。

この時、駐車中に止めていたたくさんの乗用車が燃え出した。

避難してきた人々は、よりし烈な悲鳴をあげていた。

ゆらさんは、その場にしゃがみ込んだあと震えまくった。

助けて…

おとーちゃん…

ゆりねーちゃん…

ゆかねーちゃん…

ゆいねーちゃん…

ゆなねーちゃん…

ゆみねーちゃん…

ゆき…

おかーちゃん…

ゆらさんは、遠く離れている大番頭《おおばんと》はんたちとゆりさんたちきょうだいといとを呼びつづけた。

この時、ゆらさんは堺区《さかい》の家にいた時のことを思い出した。

毎回、食事どきにゆかさんとゆらさんはドカバキの大ゲンカを起こしていた。

その時の様子が脳裏によみがえった。

「なんやねんゆかねーちゃんのわからず屋!!」
「やかましいドアホ!!」

ゆかさんとゆらさんは、家の中がめちゃくちゃになるまでドカバキの大ゲンカを起こした。

あの時、なんでゆかねーちゃんとドカバキの大ゲンカを起こしたのか…

分からない…

(ゴオー!!)

この時であった。

一階の駐車場とその周辺のエリアが大津波による大火で灼熱地獄と化した。

たいへんだ…

このままだと、死んでしまう…

おとーちゃん…

おねーちゃんたち…

助けて!!

またところ変わって、大阪西成《にしなり》の公園にて…

ボロボロの姿のゆらさんは、星空を見つめながらつぶやいた。

おとーちゃん…

おかーちゃん…

ゆりねーちゃん…

ゆかねーちゃん…

ゆいねーちゃん…

ゆなねーちゃん…

ゆみねーちゃん…

ゆき…

ホンマにかんにんや…

ダメになったうちを許して…

星空を見つめながらつぶやいていたゆらさんは、大つぶの涙をたくさん流した。

その頃であった。

哲人《てつと》は、東日本大震災の巨大津波で壊滅した陸前高田の市街地《ちゅうしんぶ》をフラフラと歩いていた。

またその頃であった。

公則《まさのり》は、デリシャン株を取得するためにマリンホールディングスの石頭のCEOにジカダンパンしていたがうまく行かずに苦しんでいた。

公則《まさのり》は、ゆみさんからだまされていることにまだ気がついていなかった。

ええかげんに気がついてよね(ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…)
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