上 下
76 / 240
第8話・あんたのバラード

【あんたのバラード】

しおりを挟む
時は、12月6日の朝9時頃であった。

イワマツグループの全メンバーたちは、南《はえ》ぬ石垣空港にいた。

他の航空機との時間調整のために専用機が待機していた。

場所は、空港ターミナルビル内にある立ち食い式の八重山そば屋にて…

イワマツグループの全メンバーたちは、一杯500円の八重山そばで朝食を摂っていた。

この時、ゆきさんが店にいなかった。

ゆきさんは、電話の応対をしていたので席を外していた。

ゆきさんは、店から30歩先の場所で電話の応対をしていた。

電話は、いとからであった。

二つ折り(ケータイ)で電話の応対をしているゆきさんは、受話器ごしにいるいとに対して困った声で言うた。

「もしもしおかーちゃん、いつ帰って来るのと言われても困るわよ…ゆらねーちゃんがもめ事を起こすたびに予定変更をしいられるのはイヤやさかいに…今のうちらはゆとりがないのよ!!…おかーちゃん、うちの話を聞いてんの!?…もうええ!!」

(ガチャーン!!)

思い切りブチ切れたゆきさんは、電話をガチャーンと切ったあと二つ折りをポーチにしまった。

その後、店のカウンターに戻った。

八重山そばを食べているゆかさんは、カウンターに戻ってきたゆきさんに声をかけた。

「ゆき、早く食べなよ…そばのびちゃうわよ~」
「そないに言わんでも分かってんねん…」
「どこから電話がかかったのよ?」
「おかーちゃんよ~…ゆらねーちゃんがもめ事を起こすたびにいつになったら帰るの…と言うからうんざりよ!!」

ゆきさんは、食べかけの八重山そばを再び食べ始めた。

ゆきさんの左となりにいるゆりさんは、近くに置かれていたピィヤーシ(ピリから)の小びんを手にしたあと、味を調整した。

ゆりさんは、ピィヤーシで味を調整しながら言うた。

「おかーちゃんの心細い気持ちは分かるけど、うちらは堺市《さかい》に帰ることができんねん…そないに心細いと言うのであれば、外へ出ればええのに…ゲートボールでも社交ダンスでも生け花でもアートでも…習い事に行けば、世界が広くなるのよ…遥輝《はるき》も遥輝《はるき》でムカンシンだからますますアカンねん…」

この時、ゆりさんの左となりにいるゆなさんがゆりさんに声をかけた。

「ゆりねーちゃん、ゆりねーちゃん…ピリから入れすぎてんねん…」
「えっ?」

ゆなさんから入れすぎと言われたゆりさんは、スープをひとくちすすってみた。

「ちょうどええ味やん…」

ゆかさんは、困った声で言うた。

「ゆらはちいちゃい時から刺激物ばかりを摂っていたのよ…せやけん、キレてしまう子に育ったのよ…おかーちゃんとおとーちゃんとうちらは、ゆらに対してバランスの摂れた食事しなさいと言うたのに…ゆらは言うことをきかへんかった…おねーちゃん、ゆらは中学高校にいた時お弁当を持っていかなかったよね。」

ゆりさんは『ああ、せやったね~持って行かなかったわ…』と答えた。

ゆかさんは、ピィヤーシを少し入れたあとスープにまぜながら言うた。

「ゆらはその時、他の生徒のお弁当を分けてもろて食べていたわよ…(友だち)ちゃんのおかーちゃんが作ったお弁当はサイコーねと言うてたわ…ほんで、おかーちゃんは弁当を作るのがドヘタ…と言うてたわよ…」

ゆかさんの右ふたつとなりにいるゆみさんは、スープをひとくちすすってから言うた。

「ああ、ゆらはたしかにそない言うてたわ…ゆらはおかーちゃんが早起きして一生懸命にこしらえたお弁当のありがたみが分からないのよ!!」

ゆかさんは、怒った表情で言うた。

「ゆらは他にも悪いことをたーんとしていたわよ…他の生徒のお弁当をたかるグループのリーダーがゆらだった…お弁当をたかられた生徒に対して『遊びに行ってもいい?』などと言うた…ほんで、晩ごはんになっても家に帰らなかった…ゆらは、うちでごはんを食べるのがイヤなのよ…友だちの家にお泊りばかりしていた…ろくな勉強をしていない…家政科へ行った理由は『行きたい大学がないから…』よ…ゆらはホンマにはぐいたらしい妹よ!!」

ゆなさんは、コップに入っているミネラルウオーターをのんでから言うた。

「ゆらは、大学に行くのがそないにイヤだったのかな?」
「(ゆかさん、怒った表情で言う)その通りよ!!」

ゆかさんは、ピィヤーシをスープにかけながら言うた。

「ゆらが進学したコーコーは、4年制の付属の大学があったのよ…せやけど…ゆらは拒否して家事手伝いを選んだのよ…それからあとはドサイアクだったわよ…働きに出ても3日でやめる…ひどい場合には来て5分でやめる…と言うのがあった…なんでゆらはこなな甘ったれになったのかしらね(ブツブツ…)…」

ゆかさんは、ピィヤーシで味を調整したあと再びそばを食べ始めた。

この時、ゆなさんがゆらさんが甘ったれの性格になった原因を答えた。

「ゆらがドアホになった原因を作ったのは叔母《おば》よ…叔母《おば》がゆらに対して過度に甘やかしていたからあななドアホになったのよ…」

ゆりさんは『それは言えてるわね~』と言うたあとこう言うた。

「叔母《おば》はなにを考えているのかわからへんけど、結婚したこともないのに育児がどーのこーの…と言うてたわよ…自分の子供でもないのにゆらを過度にデキアイした…あれ、ホンマに腹たつわねぇ!!」

ゆりさんたちは、このあともあーでもないこーでもないと言いながらそばを食べていた。

ゆきさんは、話に入ることができずにコンワクしながらそばを食べていた。

(ゴーッ…)

時は、夜7時頃であった。

イワマツグループの全メンバーたちが乗り込んだ専用機が南《はえ》ぬ石垣空港から飛び立った。

専用機は、南太平洋の上空を通って目的地へ向かった。

夜8時頃であった。

私は、窓に写る星空を見ながらCDウォークマンで歌を聴いていた。

イヤホンから世良公則《せらまさのり》さんの歌で『あんたのバラード』が流れていた。

歌を聴いている私は、星空を見つめながらつぶやいた。

ゆりさんたちは、ゆらさんのどういう部分がキライなのか…

ゆらさんが性格の悪い子に育った原因は…

何なのか?

よく分からない…

それから2時間後であった。

歌を聴きながら考え事をしていた私は、知らないうちに眠りについた。

この時、ドナ姐《ねえ》はんが私のもとにやって来た。

ドナ姐《ねえ》はんは、ブランケットを私のひざにゆっくりとかけた。

ドナ姐《ねえ》はんは、小さなテーブルに置かれている世良公則&ツイストの全曲集のCDケースの中から歌詞カードを取り出したあと、子守唄で『あんたのバラード』を小声で歌っていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...