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第2話・傷だらけのローラ

【かあさんの子守唄】

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時は流れて…

1982年8月27日の夜7時過ぎであった。

ところ変わって、宮崎市橘通《みやざきたちばなどお》り西にある居酒屋にて…

テーブル席に、ママと友人の女(デートクラブ嬢)が座っていた。

テーブルに、枝豆と冷や奴とエビチリが並んでいた。

8月19日の夜遅くに松山市で女《ホステス》が殺された事件が発生した…

それから数日後に女《ホステス》の遺体が松山市米野町《しないこめのまち》の山林で発見された…

ママは、事件当日に女《ホステス》とトラブルを起こした。

ママは、その前にも似たようなトラブルを起こした。

ママは、友人のコに対して『このままでは破滅してしまう…』と言うた。

ママから話を聞いた友人のコは、ものすごく困った声で言うた。

「きょうこちゃん。」
「なによぅ~」
「過去に起こしたもめごとをこのままにしていいの?」
「えっ?」
「えっ?じゃないでしょあんた…先週の木曜日の夜に松山《マッチャマ》でホステスが殺された事件が発生した…亡くなったホステスの同僚のウクダカナコが特別手配されたのは聞いたけど、他に思い当たるフシはあるの?」
「思い当たるフシはあると聞かれても分からないわよ~」

友人のコは、より厳しい声でママに言うた。

「あんた、この頃生活態度が悪いみたいね…きょうこちゃん!!」
「なによぅ~」
「テレビに映っている番組を見なさいよ!!」

友人のコは、ママに対して店内にあるテレビを見なさいと言うた。

店内にあるナショナルα2000の18型のカラーテレビに宮崎放送が映っていた。

この時間は(セールス枠放送で)『それは秘密です』が放送されていた。

テレビの画面に、涙のご対面のコーナーが映っていた。

画面には、実の母親を探している40代後半の男性が大きく映っていた。

その横にいる司会の桂小金治さんが、男性の秘密さんの生い立ちなどを説明していた。

ママは、ぼんやりとした表情でテレビを見つめていた。

友人のコは、怒った声でママに言うた。

「きょうこちゃん!!」
「なによぅ~」
「きょうこちゃんは、あれみてなんとも思わないの!?」
「なんとも思わないのって?」
「テレビの画面に映っている男性がよーくんだったらどうするの!?」
「えっ?」

友人のコは、のみかけのビールをごくごくとのみほしたあと怒った声でママに言うた。

「きょうこちゃんは、よーくんがママに会いたいと言うてもよーくんの求めには一切応じないのね!!」
「なんで怒っているのよ~」
「もうすぐあれが始まるわよ!!」
「あれって?」
「テレビを見なさいよ!!」

このあと、涙のご対面が始まる予定であった。

司会の桂小金治さんが『お母さまどうぞ!!』と叫んだ。

右の登場口のカーテンがひらいたと同時に、童謡『かあさんの歌』が流れた。

(母親以外のご対面の時の曲は『赤とんぼ』である)

同時に、男性の秘密さんが会いたかったお母さまがステージにいる秘密さんのもとに行った。

再会を果たした母子は、ワーワーと泣いていた。

テレビを見ているママは、ぼんやりとした表情を浮かべながら『なんなの?』とつぶやいた。

またところ変わって、店舗のトイレにて…

(ブクブク…バシャ!!)

ママは、洗面所の流しに水をためた状態で顔を水につけていた。

たまっている水から顔をあげた時に、水が勢いよく散った。

鏡に写っているママの顔がびちょびちょに濡れていた。

ぼんやりとした表情を浮かべているママは、考え事をしていた。

そんな時であった。

(ガチャ…)

トイレの中に、トレンチコートを着た刑事たち10人がママのもとにやって来た。

この時、捜査一課長のワッペンをつけた刑事がママに声をかけた。

「お取り込み中のところすみませんけれど…」
「えっ?」
「愛媛県警の松山東警察署《ひがししょ》ですが…8月19日の夜遅くに発生したホステス殺人事件のことで…任意の事情聴取に応じていただけますか?」
「えええー!!」

刑事たちから任意の事情聴取に応じるようにと言われたママは、すっとんきょうな声をあげた。

なんで…

なんでアタシがケーサツに行かなきゃいかんのよ…

助けて…

よーくん助けて…

よーくん助けて!!
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