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第2話・傷だらけのローラ

【イルカに乗った少年】

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それから私は、1981年夏までの間勤勉ひとすじ激まじめの暮らしを送った。

その間、私と同い年のコたちは結婚して個々の家庭を持った…

就職した会社で、大きなお仕事を任された…

同期で一番に課長に昇進した…

…の暮らしを送っていたと思う。

しかし、私は1981年7月末に突然放り出されたあと過酷な日々を送った。

イワマツの財産一式と仕事に必要な資格と修士博士号の証書とアメリカ三軍の大尉までの位の証書は大番頭《おおばんと》はんたち連帯後見人たち3000万人の預かりとなっている…

あれがないと仕事ができない…

あれがないと生きていくことができない…

私は、突然放り出されたあの日から大番頭《おおばんと》はんたちを探し回った。

長崎・熊本・鹿児島・宮崎・大分・山口・高知…でカラオケ流しをしながら大番頭《おおばんと》はんたちを探し回った。

しかし、大番頭《おおばんと》はんたちは見つからなかった。

街のあちらこちらを回って、住民のみなさまにたずねた…

あるいは、大番頭《おおばんと》はんのご家族の家に電話するなどして行方をたずねた…

そうした涙ぐましい努力もむなしく、大番頭《おおばんと》はんたちを見つけることができなかった。

これは一体なんだ…

私は…

なんのために、あちらこちらを歩き回ったのか…

時の経過とともに、だんだんむなしくなった。

『カラオケ流しをしていた時、女の子たちにモテモテだったのじゃないの?』…と言う人がいるけど、それは違うと思う。

カラオケイベントに飛び入りで参加してたのきんトリオの歌や西城秀樹さんの歌や城みちるさんの歌で『イルカに乗った少年』を歌っていた時に会場にいた若い女の子たちからおひねりをたくさんいただいた。

たしかに、若い女の子たちからキャーキャー言われたけどモテモテではなかった。

イベント会場で若い女の子たちからおひねりをたくさんいただいた…

それを宿泊代《やどだい》などに充てるなどして暮らした…

最初の4ヶ月はよかったけど、時の経過とともに『オレ、こんなところでなにやってんだろうか?』と思うようになった。

カラオケイベントで飛び入り参加がむずかしくなると、バーやスナックでカラオケ流しをするようになった。

前にも書いたと思うけど、バーやスナックやキャバレーでカラオケ流しをする時にギターを持った流しのニイチャンの得意先があったりヤクザのナワバリになっている場所があることを話した。

下手したら、他の流しのニイチャンとトラブったりヤクザにからまれるおそれもあった。

だから、その点は厳重に注意した。

………

しかし、1982年1月8日に広島市で客引《ポンビキ》にだまされた事件を機にカラオケ流しをやめたと同時にまた旅に出た。

時は、1982年1月11日の深夜であった。

今治市中心部で大規模な爆発事件が発生した時、私は東予市《にゅうがわ》にいた。

遠くから響いた爆発音とラジオからひっきりなしに流れた二段階チャイムに恐怖を感じた私は、宇賀神社の公園から出たあと横町のバス停の近くにあったナイトショップいしづちへ行った。

そこで店の人から売れ残りのお弁当とサントリー缶ビールとブルボン羽衣あられと亀田の柿の種をいただいた。

話は、私がナイトショップを出たあと再び旅に出たところから始まる。

時は、深夜3時過ぎであった。

私は、せとうちバスの周桑営業所のすぐ近くにあるラブホテルにいた。

ラブホテルの部屋にひとりでいる私は、ナイトショップの店の人からいただいたから揚げ弁当をさかなにサントリー缶ビールをのんでいた。

部屋のテレビの画面は、ホテルの有料チャンネルで放映されているにっかつポルノロマン映画が映っていたが、イヤになったから電源を切った。

なんやねんもう…

日本の恋愛ドラマはこの程度か…

(ゴクゴク…)

私は、のみかけの缶ビールを一気にのみほしたあと大きくため息をついた。

ナイトショップの店の人が『お前、嫁はいらんのか?』と言うたけど、それはどう言うことや…

結婚しない人間は犯罪者か!?

…………

ますますむなしくなったワ…

私は、ものすごくむなしい表情を浮かべながら食べかけのから揚げ弁当を食べた。
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