上 下
68 / 77
本編

66

しおりを挟む
──翌日。
私はシアさんに謁見の間ってとこに連れて行かれた。ここは公式に王様と会える場所らしい。

王様っていうからさ、トランプのキングみたいに髭たっぷりの威圧感ぱない人想像してたんだけど、な、なんか……影うっす!小柄で気弱そうなオジサンがニコニコ私を見てた。グレンはお母様似なのかな……

「久しぶりだねアンジェリカ」

白目になりかけた私、ハッとしてカーテシーする。

「陛下、お会い出来て光栄です」

「うんうん、すっかり綺麗になって」

いや私は全く記憶ないし初対面なんですけどね。王様のちょっと後ろにはアニエステ妃。正妃じゃないから隣には座れないみたいだ。

「王太子よ、話というのは?」

「陛下、アンジェリカと私の婚約を認めて頂きたくお願いに上がりました」

王様はうん?って首傾げる。

「アンジェリカはグレンシュフォンティエルの婚約者であろう。まさかアンジェリカたっての希望なのかな?」

王様は私の方を見た。私が口を開きかけたその時、バーンっておっきな音立てて扉が開いた。騎士達が止めるのも聞かないでズカズカ入ってくる不遜な男──

「グレンシュフォンティエル、王の御前で不敬であるぞ!」

アニエステ妃は怒り隠さず鬼の形相です。こ、こええええ!

「父上、急ぎ故お許しを」

グレンは涼しい顔で優雅に一礼する。

「まあ良いだろう。どうしたのだグレンよ」

「先日の私の侍女の不審死についてですが、アニエステ妃の関与が明らかになりました」

「ほう……」

気弱そうなおじさん……もとい王様がチラッとアニエステ妃を横目で見た。アニエステ妃はピクピクとこめかみに青筋立ててます。怖いなんてもんじゃないっす。

「侍女はアニエステ妃子飼いの男爵家の娘で、自身の身に何かあった場合に、とこんなものを遺していました」

グレンは胸元から掌大の水晶みたいなものを出すと、すっと頭上に掲げた。そしたらさ、等身大の女性の立体映像が現れたんだ。

「まさかっ!」

アニエステ妃分かりやすく動揺してます。映像の女性は暗い表情のまま淡々と語り出した。

「もしもの事態に備えてこれを残します。私はヒートン男爵家の娘リリーと申します。姉のサリーと共にアニエステ妃に差し出されて、今日まで手足となり働いて参りました。これから私はセオドシア殿下暗殺未遂をでっち上げるため、グレンシュフォンティエル殿下所蔵の壺を魔力をこめて窓から投げ落とします。失敗しても成功しても、きっと私はアニエステ妃に消される定めでしょう。家のため、と心を殺して務めて参りましたが、ただただ虚しさが込み上げます」

「私はこんな女は知らない!虚言をでっち上げるのか!不遜な!グレンシュフォンティエルを捕らえよ!」

グレンは騎士達に視線だけで指示する。よく統制されてるなぁ。彼らは暴れるアニエステ妃の腕を両脇から掴んで抑えつけた。

「私がこれからどのような死に方をするにせよ、アニエステ妃の手によるものと断言させて頂きます。もう私は……娘を平気で売り渡すような家などどうでも良いのです。サリー姉さん、私を守るためあなたは取り返しのつかない犠牲を払った……ごめんなさい、あなたに何の恩返しもできないまま私、消されてしまう……姉さんは被害者です。裁かれるべきはアニエステ妃ただお一人。これを見た方はどうかグレンシュフォンティエル殿下に──」

そこでぶつっと映像が消えた。この重苦しい空気も読めずにアニエステ妃ただ一人がギャンギャン喚いてる。

「あ、あれは……」

王様の側に控えてた身なりのいいおじさんが、アニエステ妃を見るなり固まった。ああああ!目紅く光ってる!

「グレン、許す」

王様は疲れた顔をしながら目を伏せた。グレンはアニエステ妃の側に寄ると、杖で床をトンと叩いた。
そしたらアニエステ妃の居る床一面に魔法陣?みたいなのがパァっと青く光った。

「い、いやああああああ!!」

光が縄みたいにアニエステ妃を縛り上げて、アニエステ妃は苦しそうに叫ぶことしかできないみたいだ。
私以上の汚い罵声マシーンになったアニエステ妃は騎士達に担がれてどこかに連行されてった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

本気の悪役令嬢!

きゃる
恋愛
自分に何ができるだろう?  そう考えたブランカは、旅に出ます。国境沿いのブランジュの村からまずは国外へ。「海が見たい」と言ったから。 優しくイケメンの旦那様に溺愛されてイチャイチャの旅になるはずが……? いつもありがとうございますm(__)m 本編再開させます。更新は不定期ですが、よろしくお願いいたします。 書籍に該当しない部分と裏話、その他の攻略者の話、リューク視点は 『本気の悪役令嬢 another!』へ。

天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。 王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。

えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?

真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい

ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。 だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。 気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。 だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?! 平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。

姫金魚乙女の溺愛生活 〜「君を愛することはない」と言ったイケメン腹黒冷酷公爵様がなぜか私を溺愛してきます。〜

水垣するめ
恋愛
「あなたを愛することはありません」 ──私の婚約者であるノエル・ネイジュ公爵は婚約を結んだ途端そう言った。 リナリア・マリヤックは伯爵家に生まれた。 しかしリナリアが10歳の頃母が亡くなり、父のドニールが愛人のカトリーヌとその子供のローラを屋敷に迎えてからリナリアは冷遇されるようになった。 リナリアは屋敷でまるで奴隷のように働かされることとなった。 屋敷からは追い出され、屋敷の外に建っているボロボロの小屋で生活をさせられ、食事は1日に1度だけだった。 しかしリナリアはそれに耐え続け、7年が経った。 ある日マリヤック家に対して婚約の打診が来た。 それはネイジュ公爵家からのものだった。 しかしネイジュ公爵家には一番最初に婚約した女性を必ず婚約破棄する、という習慣があり一番最初の婚約者は『生贄』と呼ばれていた。 当然ローラは嫌がり、リナリアを代わりに婚約させる。 そしてリナリアは見た目だけは美しい公爵の元へと行くことになる。 名前はノエル・ネイジュ。金髪碧眼の美しい青年だった。 公爵は「あなたのことを愛することはありません」と宣言するのだが、リナリアと接しているうちに徐々に溺愛されるようになり……? ※「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...