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本編
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──翌日。
私はシアさんに謁見の間ってとこに連れて行かれた。ここは公式に王様と会える場所らしい。
王様っていうからさ、トランプのキングみたいに髭たっぷりの威圧感ぱない人想像してたんだけど、な、なんか……影うっす!小柄で気弱そうなオジサンがニコニコ私を見てた。グレンはお母様似なのかな……
「久しぶりだねアンジェリカ」
白目になりかけた私、ハッとしてカーテシーする。
「陛下、お会い出来て光栄です」
「うんうん、すっかり綺麗になって」
いや私は全く記憶ないし初対面なんですけどね。王様のちょっと後ろにはアニエステ妃。正妃じゃないから隣には座れないみたいだ。
「王太子よ、話というのは?」
「陛下、アンジェリカと私の婚約を認めて頂きたくお願いに上がりました」
王様はうん?って首傾げる。
「アンジェリカはグレンシュフォンティエルの婚約者であろう。まさかアンジェリカたっての希望なのかな?」
王様は私の方を見た。私が口を開きかけたその時、バーンっておっきな音立てて扉が開いた。騎士達が止めるのも聞かないでズカズカ入ってくる不遜な男──
「グレンシュフォンティエル、王の御前で不敬であるぞ!」
アニエステ妃は怒り隠さず鬼の形相です。こ、こええええ!
「父上、急ぎ故お許しを」
グレンは涼しい顔で優雅に一礼する。
「まあ良いだろう。どうしたのだグレンよ」
「先日の私の侍女の不審死についてですが、アニエステ妃の関与が明らかになりました」
「ほう……」
気弱そうなおじさん……もとい王様がチラッとアニエステ妃を横目で見た。アニエステ妃はピクピクとこめかみに青筋立ててます。怖いなんてもんじゃないっす。
「侍女はアニエステ妃子飼いの男爵家の娘で、自身の身に何かあった場合に、とこんなものを遺していました」
グレンは胸元から掌大の水晶みたいなものを出すと、すっと頭上に掲げた。そしたらさ、等身大の女性の立体映像が現れたんだ。
「まさかっ!」
アニエステ妃分かりやすく動揺してます。映像の女性は暗い表情のまま淡々と語り出した。
「もしもの事態に備えてこれを残します。私はヒートン男爵家の娘リリーと申します。姉のサリーと共にアニエステ妃に差し出されて、今日まで手足となり働いて参りました。これから私はセオドシア殿下暗殺未遂をでっち上げるため、グレンシュフォンティエル殿下所蔵の壺を魔力をこめて窓から投げ落とします。失敗しても成功しても、きっと私はアニエステ妃に消される定めでしょう。家のため、と心を殺して務めて参りましたが、ただただ虚しさが込み上げます」
「私はこんな女は知らない!虚言をでっち上げるのか!不遜な!グレンシュフォンティエルを捕らえよ!」
グレンは騎士達に視線だけで指示する。よく統制されてるなぁ。彼らは暴れるアニエステ妃の腕を両脇から掴んで抑えつけた。
「私がこれからどのような死に方をするにせよ、アニエステ妃の手によるものと断言させて頂きます。もう私は……娘を平気で売り渡すような家などどうでも良いのです。サリー姉さん、私を守るためあなたは取り返しのつかない犠牲を払った……ごめんなさい、あなたに何の恩返しもできないまま私、消されてしまう……姉さんは被害者です。裁かれるべきはアニエステ妃ただお一人。これを見た方はどうかグレンシュフォンティエル殿下に──」
そこでぶつっと映像が消えた。この重苦しい空気も読めずにアニエステ妃ただ一人がギャンギャン喚いてる。
「あ、あれは……」
王様の側に控えてた身なりのいいおじさんが、アニエステ妃を見るなり固まった。ああああ!目紅く光ってる!
「グレン、許す」
王様は疲れた顔をしながら目を伏せた。グレンはアニエステ妃の側に寄ると、杖で床をトンと叩いた。
そしたらアニエステ妃の居る床一面に魔法陣?みたいなのがパァっと青く光った。
「い、いやああああああ!!」
光が縄みたいにアニエステ妃を縛り上げて、アニエステ妃は苦しそうに叫ぶことしかできないみたいだ。
私以上の汚い罵声マシーンになったアニエステ妃は騎士達に担がれてどこかに連行されてった。
私はシアさんに謁見の間ってとこに連れて行かれた。ここは公式に王様と会える場所らしい。
王様っていうからさ、トランプのキングみたいに髭たっぷりの威圧感ぱない人想像してたんだけど、な、なんか……影うっす!小柄で気弱そうなオジサンがニコニコ私を見てた。グレンはお母様似なのかな……
「久しぶりだねアンジェリカ」
白目になりかけた私、ハッとしてカーテシーする。
「陛下、お会い出来て光栄です」
「うんうん、すっかり綺麗になって」
いや私は全く記憶ないし初対面なんですけどね。王様のちょっと後ろにはアニエステ妃。正妃じゃないから隣には座れないみたいだ。
「王太子よ、話というのは?」
「陛下、アンジェリカと私の婚約を認めて頂きたくお願いに上がりました」
王様はうん?って首傾げる。
「アンジェリカはグレンシュフォンティエルの婚約者であろう。まさかアンジェリカたっての希望なのかな?」
王様は私の方を見た。私が口を開きかけたその時、バーンっておっきな音立てて扉が開いた。騎士達が止めるのも聞かないでズカズカ入ってくる不遜な男──
「グレンシュフォンティエル、王の御前で不敬であるぞ!」
アニエステ妃は怒り隠さず鬼の形相です。こ、こええええ!
「父上、急ぎ故お許しを」
グレンは涼しい顔で優雅に一礼する。
「まあ良いだろう。どうしたのだグレンよ」
「先日の私の侍女の不審死についてですが、アニエステ妃の関与が明らかになりました」
「ほう……」
気弱そうなおじさん……もとい王様がチラッとアニエステ妃を横目で見た。アニエステ妃はピクピクとこめかみに青筋立ててます。怖いなんてもんじゃないっす。
「侍女はアニエステ妃子飼いの男爵家の娘で、自身の身に何かあった場合に、とこんなものを遺していました」
グレンは胸元から掌大の水晶みたいなものを出すと、すっと頭上に掲げた。そしたらさ、等身大の女性の立体映像が現れたんだ。
「まさかっ!」
アニエステ妃分かりやすく動揺してます。映像の女性は暗い表情のまま淡々と語り出した。
「もしもの事態に備えてこれを残します。私はヒートン男爵家の娘リリーと申します。姉のサリーと共にアニエステ妃に差し出されて、今日まで手足となり働いて参りました。これから私はセオドシア殿下暗殺未遂をでっち上げるため、グレンシュフォンティエル殿下所蔵の壺を魔力をこめて窓から投げ落とします。失敗しても成功しても、きっと私はアニエステ妃に消される定めでしょう。家のため、と心を殺して務めて参りましたが、ただただ虚しさが込み上げます」
「私はこんな女は知らない!虚言をでっち上げるのか!不遜な!グレンシュフォンティエルを捕らえよ!」
グレンは騎士達に視線だけで指示する。よく統制されてるなぁ。彼らは暴れるアニエステ妃の腕を両脇から掴んで抑えつけた。
「私がこれからどのような死に方をするにせよ、アニエステ妃の手によるものと断言させて頂きます。もう私は……娘を平気で売り渡すような家などどうでも良いのです。サリー姉さん、私を守るためあなたは取り返しのつかない犠牲を払った……ごめんなさい、あなたに何の恩返しもできないまま私、消されてしまう……姉さんは被害者です。裁かれるべきはアニエステ妃ただお一人。これを見た方はどうかグレンシュフォンティエル殿下に──」
そこでぶつっと映像が消えた。この重苦しい空気も読めずにアニエステ妃ただ一人がギャンギャン喚いてる。
「あ、あれは……」
王様の側に控えてた身なりのいいおじさんが、アニエステ妃を見るなり固まった。ああああ!目紅く光ってる!
「グレン、許す」
王様は疲れた顔をしながら目を伏せた。グレンはアニエステ妃の側に寄ると、杖で床をトンと叩いた。
そしたらアニエステ妃の居る床一面に魔法陣?みたいなのがパァっと青く光った。
「い、いやああああああ!!」
光が縄みたいにアニエステ妃を縛り上げて、アニエステ妃は苦しそうに叫ぶことしかできないみたいだ。
私以上の汚い罵声マシーンになったアニエステ妃は騎士達に担がれてどこかに連行されてった。
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