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本編

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「ん……」

目が覚めた時、一瞬意識が混濁。あれ、私いつの間に寝ちゃったんだっけ?ボンヤリ記憶を辿って、ああ、そっか、サリーちゃんに連れてこられる途中馬車の中で意識を奪われたんだっけって思い出す。

寝転がってるところは固い石畳……ではなく中々質の良いベッドだ。でも両手縛られてて自力じゃ起き上がれないな。

一先ずあたりの様子を伺ってみる。部屋に人の気配はない。窓はなくて扉は出入り口の一つきりかな。って何だかアドベンチャーゲームの探索パートみたいになってるけど気にしない!

んー縄切るのに魔法使ったら検知されそうだし……一先ず縄緩まないかなぁってモゾモゾ体動かしてたら、唯一の扉が開いた。私咄嗟に寝たフリ。

「起きてるんだろ?」

く、バレてるし……渋々目を開くと、とんでもない美人が私を見下ろしていた。

「シアさん……どうして」

「ねえアンジェリカ、君は知ってる?伝承によると巫女は杖も詠唱もなく自在に魔法を操れたのだそうだよ」

シアさんはふっと目を細めた。

「ただの伝承だと思っていたのに……まさかそれを目の当たりにするとは、ね」

全部見られてたんだ。隔離されてたのに?

「あの隔離結界はシアさんが?」

「そうだよ」

あっさり認めるんかい!

「君は強力な魔力を込めたシャンデリアごと破壊した。見事だったよ。その上マチルダまで救って命を落としかけるとは、ね」

「夢中でしたから、あの時の事はよく覚えていません」

「うん、命を削る君の魔力の輝きは忘れられない。とても……とても美しかった」

シアさんは熱のこもった目でうっとりと私を見てる。

「役目なんて忘れて、僕は初めて心から君が欲しいと思ったよ」

役目?シアさんも駒の一つに過ぎないってこと?

「王太子様にはマチルダさんがいるではありませんか」

シアさんは無言で微笑すると、ベッドの端に腰かけて私の髪を一房掬った。

「ねえ、アンジェリカ。グレンシュフォンティエルのこと好きなの?」

私は言葉に詰まる。全く好みじゃないし、正直ムカつくことも多い。でも桜木杏梨だった私の事もあっさり受け入れてくれて、いつの間にか結婚する事が当たり前みたいになってる。
あれ、私グレンと結婚すること、全然イヤじゃない──

「まあどちらにしても真の巫女と分かった以上、君は殺せないしアイツを選ばせるわけにはいかないんだけどね」

シアさん今サラッと私への殺意明かしましたね!

「私を殺そうとした人なんか選べる筈ありません」

「立場上仕方なかったんだ。どうか許して欲しい」

自分を殺そうとした人間をそんな簡単に許せるヤツいるかー!?
睨む私にシアさんはくっと口の端を吊り上げた。
笑っているけど笑ってない目が恐ろしいってマチルダちゃんが言ってたけど、凄い分かる。表情は笑ってるけど、この人は私を冷静に品定めしてる。
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