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本編

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「待っ……」

天井に向かって伸ばした手を誰かに掴まれた。

「アンジェリカ」

「え、グレン?」

何でここに居るの?不思議そうに見てると、グレンはぐっと眉を顰めた。

「見舞いに来たんだ。体調はどうだ?」

薬が効いたのかな、そういえば関節痛は消えてた。大分熱は下がったみたいだ。

「大分良くなったみたい。ありがとう、あんまりここに居ると伝染っちゃうよ?」

「お前とは鍛え方が違うからな」

グレンは鼻で笑うと冷えたタオルで私の顔を拭い出した。

「王子様のすることじゃ無いよ」

「身分なんて関係ないだろ。したいからしてるだけだ」

何か不機嫌そうだけど私を心配してるのは伝わってきた。心が弱ってるからかな、素直に嬉しいや。

「ありがとう、冷たくて気持ちいい」

目を閉じるとグレンの手が止まった。もっとやって欲しくておねだりするようにグレンを見上げる。そしたらグレン、ふって優しく笑ったんだ。何だこれ幻かな。

「いつもそれだけ素直なら可愛げがあるのにな」

「可愛げなんてママのお腹の中に忘れてきたよ」

「ああ、そうだな。その方がお前らしい」

私らしい、か。当たり前みたいにグレンは言う。不思議だな。グレンに肯定されればされるほどこの世界でのアンジェリカとしての現実感が増していく気がした。
私のままでいい。
私らしい。
そうか、グレンは今の私を受け入れてくれてるんだ。いともあっさりと。きっと熱で心が弱ってるせいだね。私ホントに涙が出そうなくらい嬉しくってさ、グレンに抱きついちゃったんだ。首に腕回してすがる様にさ。グレンはビックリしてたけど、怒ったり拒否なんてしないで私の頭撫でてくれた。私不思議なくらい安心して、気付いたらそのまま寝ちゃってた。






何だろう、凄くあったかくて良い匂い。言葉にするのは難しいんだけど、ずっと嗅いでたい位好きな匂いだ。

「あったかぃ……」

暖かくて良い匂いで幸せだなぁ。スリスリって頬擦りしたら、ぐって抱きしめられた。ん?抱き締め?
半覚醒状態で目開けたら、目の前には肌蹴た胸板。マッチョじゃないけど程よく筋肉のついた中々キレイな胸板だなあ。ボンヤリしながらサワサワ筋肉撫でると、

「くすぐったい」

ん?トロトロ顔上げると、グレンの顔どアップ。

「グレン?」

「何だ」

「ここ私のベッド?」

「そうだ」

「何で一緒に寝てるの?」

グレンははぁってでっかい溜息ついた。

「何も覚えてないのか?お前が離してくれなかったんだ、仕方ないだろ」

マジか……熱で相当頭おかしくなってたんだな……

「そっかごめんね。でも何も……致してないよね?」

「致して欲しかったのか?」

「ないです、やめて下さい」

「ふん……もう少し寝てろ。夜中高熱が出たんだからな」

そういうとグレンは私をすぽっと抱きすくめた。力入らないし悔しいけどグレンの良い匂いにクラクラする。病気の時くらいは甘えても良いよね?良いことにした。

「グレン」

「何だ」

「あったかい」

グレンが頭撫でてくれた。たまにはこういうの良いね。頭撫でられるのって何か気持ちいいな。そういえば昨日も頭撫でられてるうちに寝ちゃってたんだっけ。あーダメだ、また、寝ちゃ……う……
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