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本編

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「セレスちゃん友達だからぶっちゃけるけどさ、私これまでの記憶ないんだ」

馬車の中、渋々殿下の隣に座らされて、向かいにはセレスちゃん。まあ殿下の仏頂面見てるより可愛いセレスちゃん見てるほうが幸せだからいっか。

「そんな……!」

「だから前の私とは全然違うでしょ?」

そもそもアンジェリカ中の人知らないけど……まあ絶対性格違うよね。

「全く違うな」

横から殿下がブスッと口を挟んだ。

「そもそもそんな下品ではなかったし、お前は俺しか見えていなかったではないか」

「へー」

「俺を何より優先して、近付く女には嫌がらせの限りを尽くしていたな」

好きになったもん負けって言うけどさ、これアンジェリカ完敗だよね。しかも嫌がらせ?そういうの一番嫌いなんだけどなあ……ああ、きっとこんな男だから雑に扱われて自分に自信持てなかったんだろな。嫌がらせは許せないけど、ちょっとアンジェリカにも同情しちゃったよ。

「まあ私こんなんなっちゃったし、殿下に相応しい人なんて他に沢山いるっしょ」

はははって笑うと、殿下鬼の形相でセレスちゃん真っ青になっちゃった。全くか弱いセレスちゃんヒビらせんな!選んでもらえなかったらどうしてくれんだっ!(私が困るだろがっ!)仕方ない、取り敢えず話題を変えよう。

「あ、それでさ、どっかいいお店知らない殿下?」

「なん……だと?」

「やー記憶ないからこの街のことも良く知らないんだよね、はははっ」

「お前……よくもそんな雑に俺を誘ったな」

「ごめんごめん。でも殿下ほどの男ともなればイイお店の10軒や100軒余裕でしょ?」

「……いいだろう。お前、高くつくぞ」

うわー殿下すんごい悪い顔して笑ってる。背筋ゾワってしたけどセレスちゃんもいるしさ、もうここは任すしかないじゃん?

「分かった……お金なら(アンジェリカの)実家多分お金持ちだし……大丈夫、うん」

「金……ね」

ちょっとおおお!殿下ってこんな性格だったの!?私ドSとは相性悪いんですけど!?イチイチ凄んだように見てくんな!この陰険モヤシ!
やー何かさ、得体の知れない闇を感じるんだよね、この男。内心ビビってる自分を悟られたくなくてグッと睨み返すと、殿下にふんって鼻で笑われた。くっそー!
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