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「ちょっ、ちょっと待って! 侍女を呼んで──」

「もう皆下がらせた。朝からお前の世話で大変だっただろうしな」

そう言いながら、エドは私のドレスを躊躇いもなく脱がしにかかるのでした。
そして抵抗らしい抵抗も出来ないまま、あっという間にコルセットとペチコート姿にされてしまいました。

「え、エド! もう良いわ! ここからは一人で出来るから」

自らを抱きしめるようにしてエドに背を向けます。エドは背中を締め上げるコルセットの紐をすっと解くと、あらわになった背を優しくなぞりました。

ゾクっとしたくすぐったさに体が小さく跳ねます。

「エド!」

「分かった。さっき飲みそびれてたよな、水持ってくる」

そう言い残すとエドは部屋を出て行きました。ホっと一息ついてる場合ではありません。エドが戻る前にと急いで身につけているものを脱いでガウンを羽織り、逃げるようにバスルームに駆け込みました。

もう頭の中はぐちゃぐちゃです。
一先ず無心に体や頭を洗ってバスタブに身を沈めました。そこでやっと人心地着けたような気がします。

突然の再会と、一人の女性のように扱われることへの戸惑い、そしてロランへの仕打ち。あれは一体──?

3年ぶりのエド。
私を軽々と抱き上げ、すっぽりと包み込む大きな体に、全く知らない男の顔。

怖いのとは違う未知の感情に、体が、心が震えました。

「エド……」

泣きたいような胸苦しさを抱きしめるよう、私はそっと膝を抱えるのでした。








部屋に戻ると、ガウンに着替えたエドが長椅子に寝そべっていました。近付いても反応がありません。どうやら眠っているようです。

エドが持ってきてくれたのでしょう、袖机に置かれた水差しの水をグラスに注いでありがたく頂戴します。
大分喉が渇いていたようでゴクゴクと一気に飲み干してしまいました。

そしてエドに上掛けをかけて寝顔を眺めます。
長旅でさぞ疲れているのでしょう。先程は気付きませんでしたが、目の下には薄っすら隈が浮かんでいました。

まさか本当に私のデビューのために無理をして?
そうだとしたら……言葉はなくとも、エドはやっぱり優しいエドのまま。

「ありがとう……」

額に口付けると突然腰を掴まれ、気づけばエドの上に折り重なるよう抱きしめられていました。

「ビックリした……起きていたの?」

「今目が覚めた」

エドの胸に手をついて起きあがろうとしますが、びくともしません。

「エド、離して」

「嫌だ」

なお胸に強く抱き込まれて身動きができなくなりました。
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