真実の牡丹

相川美葉

文字の大きさ
上 下
27 / 31
特別章、月夜の願い

生き神の女性

しおりを挟む
 オレが守る山に、一人の女性が連れて来られた。
女性というには若く、少女というには大人びている、、、そんな子だった。
女性はオレに気付いた子だろう。そして神職によって『生き神』と崇められたということは火を見るより明らかだった。
 山に招かれた女性の名はマヨイと言った。背中まで伸びた黒髪に華奢な体を包んだ巫女服は彼女を一段と綺麗にする。
「お初にお目にかかります、マヨイと申します。この度は大変、名誉なお役目を仰せつかりました。どうぞ、よろしくお願い致します」
「、、、」
 頭を下げて静かにそう言うマヨイに、初めは可哀想な子だと思っていた。神職はマヨイを殺し、いずれ神へと仕立て上げる。
頭を上げ、オレを見る。赤みがかった瞳に映るのは希望か、絶望か、、、果たしてどちらだろうか?
「貴方が、月峰様ですか?」
「、、、ああ」
「この地を守ってくださり、ありがとうございます」
「、、、」
そうして、マヨイとオレの生活が始まった訳だが―――。
「マヨイ、、、お前はこのままで良いのか?」
「え?」
 聞けば村に夫がいるらしく、腹には子供が宿っていると言うのだ。
「、、、大丈夫です。あの人は私の自慢の旦那様ですし、この子もきっと元気に産まれてきます」
「そうか、、、」
 マヨイの朝は思ったより遅い。
何度声をかけても中々起きる気配がない。気が付けば自分で起きているが、、、。
生き神の子はオレの言葉をキき、それを神託として村の者を導く、、、呆れる程変わらない生き神と神職の関係。
「ありがとうございます生き神様。どうかこの村を末永くお守りください」
「、、、はい」
「、、、、、、」
上辺だけの感謝の言葉。どうせ儀式が行われたらじきにマヨイのことも忘れるだろうに、、、。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

高級娼婦×騎士

歌龍吟伶
恋愛
娼婦と騎士の、体から始まるお話。 全3話の短編です。 全話に性的な表現、性描写あり。 他所で知人限定公開していましたが、サービス終了との事でこちらに移しました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

紫の桜

れぐまき
恋愛
紫の源氏物語の世界に紫の上として転移した大学講師の前世はやっぱり紫の上…? 前世に戻ってきた彼女はいったいどんな道を歩むのか 物語と前世に悩みながらも今世こそは幸せになろうともがく女性の物語 注)昔個人サイトに掲載していました 番外編も別に投稿してるので良ければそちらもどうぞ

大好きな幼馴染と結婚した夜

clayclay
恋愛
架空の国、アーケディア国でのお話。幼馴染との初めての夜。 前作の両親から生まれたエイミーと、その幼馴染のお話です。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する

真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。

処理中です...