19 / 31
第三章、動き出す歯車
生き神の使命
しおりを挟む
熱が下がり、比較的軽い運動が出来るようになった頃、私は境内の掃除をしていた。カタクリは摂社と拝殿の掃除をしているので、境内には私だけということになる。
楼門を抜け、参道の方を掃除していた時、沢山の人が私を取り囲んだ。知らない人は全員、白衣に緋袴や露草色の袴を履いている。多分、神職の人達だろう。
「宗一の言っていたことは本当だったのか、、、」
「しかし何故、十五年間も見付からなかったのでしょう」
「この子が稀代の生き神様か、、、」
無意識に、一歩後ずさる。
神職達は口々に話し出すが、私は恐怖しか感じられなかった。
「さぁ生き神様。行きますよ」
誰かがそう言ったのを合図に、神職達は私の口と鼻に湿った布を押し当てた。
そしたら何だか眠たくなって、、、、、、私は意識を手放した。
目を覚ました部屋は暗かった。
四畳半の部屋は狭く、窓は外側から鍵がかけられて内側から開けることは出来ない。いきなりこんな所に連れて来られて、酷く動揺した。
部屋の中には収納箱が置かれている。中を見ても当たり前だが鍵は入っていなかった。
(此処は、、、何処だっけ)
何処か見覚えのある部屋なのだが、全く思い出せない。恐らく、小さい頃によく遊んでいた場所、、、。
誰もいない、寒い。
そんな恐怖に怯えていると、部屋に誰か入ってきた。
「お目覚めですか?生き神様」淡々とした口調の女性。私を取り囲んでいた神職の一人だった。
「あの、、、此処から出して!」
精一杯の訴えだった。きっと出してくれると思った、、、それなのに女性は首を横に振る。
「申し訳ありません生き神様。わたくしめでは出来ません」感情のない声。それだけでも怖いと感じた。
「生き神様、よくお聞きくださいませ。神と縁を結び、生き神に選ばれし者は身を捧げ、この村を守るのが定め。生き神様が身を捧げなければ月峰神様はお怒りになられ、この村を蝕まれてしまうのです」
きっとカタクリはそんなことしない。そう言いたいけど、言えなかった。
「儀式は明日に行われます。それまで此処にいて下さいませ」その言葉を残して、女性は部屋から出ていった。行灯の光が部屋をぼんやりと照らす。
寒さで体が凍りそうだった。真冬に氷水を浴びるより寒い。
(カタクリがいない所は私には寒くて耐えられないよ、、、)
寒い。
此処は寒い。
暗くて、寒い場所。
息が苦しい。
うずくまる。
寒さなんか感じないように、自分で自分を強く抱きしめて。
「助けて、、、カタクリ、、、」
呟いた言葉は、静寂の夜に溶けていった。
楼門を抜け、参道の方を掃除していた時、沢山の人が私を取り囲んだ。知らない人は全員、白衣に緋袴や露草色の袴を履いている。多分、神職の人達だろう。
「宗一の言っていたことは本当だったのか、、、」
「しかし何故、十五年間も見付からなかったのでしょう」
「この子が稀代の生き神様か、、、」
無意識に、一歩後ずさる。
神職達は口々に話し出すが、私は恐怖しか感じられなかった。
「さぁ生き神様。行きますよ」
誰かがそう言ったのを合図に、神職達は私の口と鼻に湿った布を押し当てた。
そしたら何だか眠たくなって、、、、、、私は意識を手放した。
目を覚ました部屋は暗かった。
四畳半の部屋は狭く、窓は外側から鍵がかけられて内側から開けることは出来ない。いきなりこんな所に連れて来られて、酷く動揺した。
部屋の中には収納箱が置かれている。中を見ても当たり前だが鍵は入っていなかった。
(此処は、、、何処だっけ)
何処か見覚えのある部屋なのだが、全く思い出せない。恐らく、小さい頃によく遊んでいた場所、、、。
誰もいない、寒い。
そんな恐怖に怯えていると、部屋に誰か入ってきた。
「お目覚めですか?生き神様」淡々とした口調の女性。私を取り囲んでいた神職の一人だった。
「あの、、、此処から出して!」
精一杯の訴えだった。きっと出してくれると思った、、、それなのに女性は首を横に振る。
「申し訳ありません生き神様。わたくしめでは出来ません」感情のない声。それだけでも怖いと感じた。
「生き神様、よくお聞きくださいませ。神と縁を結び、生き神に選ばれし者は身を捧げ、この村を守るのが定め。生き神様が身を捧げなければ月峰神様はお怒りになられ、この村を蝕まれてしまうのです」
きっとカタクリはそんなことしない。そう言いたいけど、言えなかった。
「儀式は明日に行われます。それまで此処にいて下さいませ」その言葉を残して、女性は部屋から出ていった。行灯の光が部屋をぼんやりと照らす。
寒さで体が凍りそうだった。真冬に氷水を浴びるより寒い。
(カタクリがいない所は私には寒くて耐えられないよ、、、)
寒い。
此処は寒い。
暗くて、寒い場所。
息が苦しい。
うずくまる。
寒さなんか感じないように、自分で自分を強く抱きしめて。
「助けて、、、カタクリ、、、」
呟いた言葉は、静寂の夜に溶けていった。
2
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる