真実の牡丹

相川美葉

文字の大きさ
上 下
8 / 31
第一章、平穏な日常

神に縋る者

しおりを挟む
 それから、拝殿に誰かが来る度に柱の陰から見ている。あの男性と話をしてみたいという感情が高ぶるなか、カタクリに真実を問いただしてみても上手くはぐらかされ話を脱線させられる。
 数週間後、拝殿にまた男性が来た。
果物や栗などを奉納し、手を合わせて子供を返して下さいと何度も願う。
「お願いします。どうか子供をお返し下さい。責任を持って育てますので、、、、どうか、子供に会うことでもお許し下さい」
それは、聞いていくうちに胸が締め付けられていく内容だった。
 行方不明になった子供に会いたい、話がしたい。それを手伝うことが出来たならきっと、カタクリも本当のことを話してくれるだろうか。

  「で、あの男の娘を探したいのか?」
夜、カタクリに言うと怪訝そうな顔をされる。
「だって、、、、可哀想だよ、、、、」一生懸命、拝殿に手を合わせて帰る男性が脳裏を過ぎる。
「もし仮に娘が見付かったとして、お前はどうするんだ」
「勿論、会わせる!」当たり前と言うように胸を張って言うと、カタクリはため息をついた。
「なら、その娘と会わせられない」
 その解答は即ち、カタクリはその子供の居場所を知っているということになる。え、その解釈で良いんだよね?
それに、男性は『子供』と言っていた。それなのにカタクリはハッキリと『娘』と言い切っている。
でもカタクリはこの社から出たことがないって言ってたし、、、、ならその子供は前に話してくれた生き神の少女ということになる。
 だけど生き神の少女はもう亡くなっているから会わせられない。でもカタクリの言い方から会おうと思えば会える、、、、どういうこと?
「あの男の妻と約束したんだ。『この子を幸せにする』って、、、だからあの男とは会わせられないよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

高級娼婦×騎士

歌龍吟伶
恋愛
娼婦と騎士の、体から始まるお話。 全3話の短編です。 全話に性的な表現、性描写あり。 他所で知人限定公開していましたが、サービス終了との事でこちらに移しました。

秘密の令嬢は敵国の王太子に溶愛(とか)される【完結】

remo
恋愛
妹の振りをしたら、本当に女の子になっちゃった!? ハイスぺ過ぎる敵国王子の溺愛から逃げられない! ライ・ハニームーン(性別男)は、双子の妹、レイ・ハニームーンを逃がすため、妹の振りをして青龍国に嫁ぐ。妹が逃げる時間を稼いだら正体を明かすつもりだったが、妹に盛られた薬で性別が変わってしまい、正体を明かせないまま青龍国の王太子であるウルフ・ブルーに溺愛される。隙を見てウルフのもとから逃げ出そうとするも、一途に自分を愛すウルフに知らず知らず惹かれていく。でも、本当はウルフをだましているという負い目があるライは、… …なんか。ひたすらイチャイチャしてる、… 読んでいただき有難うございます! 2023.02.24【完結】

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

紫の桜

れぐまき
恋愛
紫の源氏物語の世界に紫の上として転移した大学講師の前世はやっぱり紫の上…? 前世に戻ってきた彼女はいったいどんな道を歩むのか 物語と前世に悩みながらも今世こそは幸せになろうともがく女性の物語 注)昔個人サイトに掲載していました 番外編も別に投稿してるので良ければそちらもどうぞ

大好きな幼馴染と結婚した夜

clayclay
恋愛
架空の国、アーケディア国でのお話。幼馴染との初めての夜。 前作の両親から生まれたエイミーと、その幼馴染のお話です。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...