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第二章

変なのが増えたひととき

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「私は、剣は持ちません。刺突剣ならまだしも、あなたは重すぎます」
「むー!」
むーでは、ありませんよ。
まったく、そもそも、勇者と契約しているでしょう。
私は、勇者ではありません。

「待ってくれ、俺を選んでくれたんじゃないのか」
「あぁ?」
態度悪いですね、この精霊。

「そこな獣人のメス。集中力が切れております。番う気なら、そんな致命的な隙に繋がるような行動は慎みなさい。そんなだからCランクなのです。自分の父親を超えるぐらいの意気込みを見せなさい。未熟者」
「つ、番うとか、そんなつもりじゃ」
何を恥ずかしがっているのですか、することは済ませているでしょうに、戦士として名高い獣人のメスを正面から挑戦して、力を認めさせた人間のオスが、父親のくせに、覇気が足りませんね。

「大体、弱すぎて話にならないからと、ハイエルフである私に、修行させられていることを恥じなさい。私は魔法による徹底した殲滅がメインなのです。もののついでのような近接戦を突破できないとは、盾役が聞いて呆れる」
決闘の後、精霊王から頼まれたのは、期限付きの指導。
弱すぎて、また勇者を変えるなどになれば、世界のバランスが崩れるとのことでしたので、仕方なく、足りないものを容赦なく突き付けるというやり方ですが。

「リジェ様、覚悟!」
「どこの世界に、自分を押し売りしてくる聖剣がいますか、殺気を込めてまで、契約の魔法を使うだなんてバカバカしいことはやめなさい」
それもこれも、人間のオスが弱過ぎるからです。
試しに使ってやれば諦めるだろうと、軽く振っていたのですが、扱いが格段に違うと、かえって本気にさせてしまい、もはや、無理矢理にでもという勢いで、契約のための印を私に刻もうと、毎日のように襲いかかってくるのです。
主を決めたはずの、聖剣の精霊がです。

それこれも、人間のオスの扱い方がなっていないせいです。
剣の手入れが雑、扱い方も雑、力任せに素振りすることを鍛錬とのたまう始末。
剣に宿る精霊としては、不満があることでしょう。
あげくに、私から指摘しても、治る気配がない。
よくよく観察してみれば、手入れは、獣人のメスがやっておりましたね。
どうやら、このオスは、世話されるのが当たり前過ぎて、自身の使う物すら、誰かに管理を任せていたようです。
それ故に、獣人のメスが甲斐甲斐しく手入れしていたようですが、まだまだ、スカウトとしても未熟な腕では、手入れは完璧とは程遠い。
本来なら、短剣がメインなのですから仕方ないことでしょう。

「人間のオス。手入れの仕方も覚えられないのなら、専門の者を雇いなさい。オススメはギルドで聞くといいでしょう。奴隷は、勇者が持つには相応しくありませんので、正式なポーターや、鍛冶師などを募集なさい。それと、剣技に関しては、適任をこちらで用意しました。実力は人間としては、申し分ないことでしょう。そろそろ、私もこの国にいる理由がなくなりますので、もう当てにしないでくださいね」
剣聖なら、変な癖のついた人間でも矯正できるでしょう。

「そして、獣人のメス。技術は教えた通りです。道具に頼りすぎていた部分は矯正できました。しかし、まだ弱いので過信せぬよう、人間のオスを支えなさい。それが一番強くなれる道でしょう」
「はい、お姉様!」
私は、あなたより年下です。
妙に懐かれたとは、思っておりましたが、なんですかお姉様とは。
自称妹などいりませんよ。
「やかましい、自称妹。不甲斐ない情報が流れてくるようなら、覚悟しておきなさい」
「もちろんです、お姉様! お姉様の妹として恥じぬよう、日々精進致します!」
いえ、ほんと、なんで懐かれましたかね?

「待つんだ、ラディア、その方は君の姉では──」
「あぁ?」
よく手入れしてあげてるからか、聖剣とも仲良くなった影響で、口が悪くなってますよ、自称妹。
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