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第一章

魔導弓

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たまには、貰ったものを使いましょうか。
魔導弓というらしいんですけど、魔力を込めると、展開して、変な杖になります。
というか、見た目は殆ど杖なんですよね。
展開後に、弓を引くようにするだけで、魔法をセットして、打ち出します。
本来は、魔力を固めただけの魔力弾を作って放つことで、魔法使いが苦手とする連射を可能にするんですよね。
でも、この魔導弓。
魔力弾じゃなくて、魔法を弾として打てるんですよね。
とんだ、破滅級の武器なので、使えないんですよね。
師匠にも、冒険者は、己の力を全て見せるべきではないと言われておりますし。

「なんて事を思いつつ、殲滅します」
「ひぃ、来るなぁ! まだ死にたくない、死にたくな……」
知りませんよ、嬉々として私をどうするかで盛り上がってたじゃないですか、しかも、ルル達にも欲情してましたよね?
こんな事にならなきゃ、楽しんでいたのにという理由なら、上手くいかなかったのだから、諦めて死んでください。

それにしても弱過ぎますね、組織の腐敗と言うのでしょう。
私の同僚の方が強いですよ。
貴族の持つ、護衛メイドの方が強いだなんて、酷い有様ですよね。
警備隊が聞いて呆れます。
性格も行動も盗賊の間違いではないでしょうか。
副隊長は強かったですけど、驕りが見えましたので、簡単でしたし。
もう面倒ですね、さっさと建物を破壊しましょうか。

「うわぁ、やべぇとこ来た」
何か来ましたね?

「おや、自ら死にに来るなんて、珍しい人間ですね?」
「おう、珍しいついでにな、見逃して欲しい奴らがいるんだ、俺の首でどうにかならんか?」
なるほど、面白い人間ですね。
ちょっとだけ興味を持ちました。

「なるほど、いいでしょう、では報酬替わりに、1つ答えてください。ランドという冒険者を知っていますか?」
「ん? よく知ってるぞ。スカウトの冒険者だろう、ソロでAランクなんて、凄まじいやつが居るもんだと、気になってたんだ。その割に、勇者パーティの足でまといだなんて言ってる奴がいてな、実績と評判がこんなに落差あるのも珍しいと思ってたんだよ」
師匠のことをちゃんと理解していますね。
良いでしょう、殺さないでおいてあげます。

「ふふふ、気に入りました。この街は消さないでおきましょう。目標をもう少し、狭めてあげます」

さて、では、役立たずだけ粛清しましょう。
まずは、領主をやっている人間のオスから始めましょう。
代わりはいくらでもいますよ。

役立たずだけを排除したので、一つだけ派手に行きましょう。

「ちょいと待ちな、嬢ちゃん」
「物騒ですね、危ないですよ」
警備隊の隊長ですね。
転移魔法の才はなさそうなので、誰かが連絡を取りましたね。

「領主殺しは、さすがに大罪にも程がある。という建前なんだが、付き合ってくれる気はあるか?」
「師匠より、そういうタイプの人間はマシな人間だと聞いておりますので、多少ならいいでしょう」
同時に構えて、同時に動く。
私は後方へと跳び、隊長は一気に踏み込んでくる。
距離だけを比べるなら私の方が少ないですけど。
充分です。

「むっ、噂に聞く、幻惑か。これはなかなか」
「こちらからも行きますよ」
まずは、全力で様子見ですね。
出し惜しみ? そのような無駄なことはしません。
実力が読めない相手は、瞬殺に限ります。
魔法を弾として放つことの利点を教えてあげましょう。

「おい待て待て、なんだよ、水平にメテオって、意味分かんねぇなその杖」
「まだ行きますよ」
6連射といきましょう。
文句を言いつつ、全て切り伏せるのも反則だと思いますけどね。

「んー、なかなか死にませんね」
「ちょっと待って、俺殺されるとこだったの?」
戦闘狂と言われる存在ですよね?
殺さないと止まってくれないでしょう。
その代わり、満足させてやっておけば、信頼に値するタイプの人間です。
師匠が言うのだから、間違いありません。

「剣に特異性は見受けられない、つまり、本人の力量。となれば、これが一番いいでしょう」
「待て待て待て、死んじゃうから! そんなの防げな、人の話聞いて」
嫌です。

「魔法に対して、全面の適性を持つ種族の真髄を見せてあげましょう。これが、全属性の合成魔法」
「満足しました! 戦闘終了だ!」
急に満足してしまうのも、戦闘狂によくあることらしいですからね。
仕方ありません。
ちょっと、ギュルンギュルン音を立てるこれは、捨てておきましょう。

「うわー! ばか! ちゃんと消せって! 街が消し飛ぶって!」
「いいじゃないですか、作り直せば」
50年もあれば戻るでしょう。

「やめろ! ハイエルフ感覚で考えるな、人間にとっての50年は、長ぇって!」
「そういえばそうですね、方向性を変えて樹でも生やしましょう。創生、世界樹」
あっ、魔力込めすぎました。
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