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序章

師匠直伝講義

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「それじゃお願いね」
「魔法と魔力を用いた攻撃の違いから始めましょう」
師匠に、ハイエルフだからこそ、覚えておくといいとの事でしたからね。
しっかりと覚えておりますので、教えることも簡単です。

「まず、魔法というのは、このように、計算式を作り上げて答えを用意してあげることで発動します」
虚空に魔法で、簡単な数式を書いて見せます。
発動する魔法をイメージする事は大事ですからね。
「詠唱とかが、数式の部分ってことね」
「その通りです。これには、どうしても適性が必要です。言ってしまえば、数式は、特別な紙とペンがないと書き記せない。と思って頂けると助かります」

そう、魔法を構築するための数式になる部分は、適性がなくても理解できるのです。
しかし、その数式を正しく使うためには、才能がいるのです。
なので、特別な紙とペンが必要なのだと思う方がいいのです。
苛立ちが増えますからね。

「そして、魔力を用いた攻撃の説明に入ります。こちらは、コツさえ掴めれば、誰でも使えます」
「どっちも魔法だと思ってただけで、それは分かるんだけど、燃費が悪くない?」
いいえ、それはまだ使いこなせていないだけです。
魔法の方が色々な過程があるため、魔力を余分に使いますが、それがないので消費は本来少ないのです。

「魔法に関しての適性があると、魔力と言うのは、感覚で理解できますので楽なのですけど、その適性がない場合、余計な力を使ってしまうんですよ。ルルだって今のように身体を動かせるようになるまで、余計な力を入れてしまっていたでしょう?」
「慣れって事ね。でも、何度も使ってるけど、上手くならなかったわよ?」
努力家ほど、この魔力を使うを身につけるのが難しいのです。
なんせ、練習法が違うので。

「では、ルル。遊びますよ、魔力でこんな風に球体を作ってください」
「え、こ、こう?」
球体にはなってますけど、ブレてますね。
それじゃダメです。

「ブレてますよ、こんな風にちゃんとした球体を作るんです」
目の前まで持ってきて、違いを見せてみました。
完成形が見えていると、上達が早いと聞きましたからね。
師匠からですけど。

「難しいわね、何か気をつけるべきことはあるかしら」
「無理をしない、大きいのが難しいなら小さくする。逆に小さいのが難しいのなら、不格好でも大きくしていいです」
これに関しては、個人差がありますので、やりやすい方にしてもらわないと無駄になるんですよね。
無理すると、込めた魔力が炸裂しますからね。
師匠は何度も炸裂させて覚えたらしいですけど。

「ルル、48回です」
「適性ないって、改めて理解したわ」
揺らぎのない球体を作るまでに、ルルが炸裂させた回数ですよ。
私がいるので、魔力が周辺に飛び散らずに済んでますけどね。
魔法に関しては、私は種族による優位性がかなりあるので余裕です。
鳥が空を飛べるのと同じです。

「私の師匠は、数えるのが嫌になるぐらい炸裂させたらしいですから、ルルは優秀ですよ」
「褒めてくれてる内容なのに、なんで殺気出すのよ」
師匠より優秀だなんて、ムカつくじゃないですか。

「まぁ、冗談はさておき、そこまで出来るようになれば、今までよりスムーズに魔力を纏えますよ」
「ありがと、ただ、そのね?」
はて?
何かありましたかね、流石に人ならざるものを見る目は魔法に近いので、ルルが取得するのはほぼ無理ですけれど。

「なんです?」
「何で、私には優しいの? ハイエルフって興味無いことには、とことん興味無いはずよね?」
そうですね、ルルになら、こういう事をしてもいいと思いますけど、他の同僚とやらに、教えてやるつもりはありませんね。
ルルが教えるのは構いませんが。

「ルルの魔力の波長が心地よいからです。穢れていない、綺麗な魔力です。人間のそれがこんなにも綺麗なのは珍しいですよ。私とも良く合うので、癒されます。なので、気に入っております」
「て事は、そうじゃなくなったら、私も皆と同じ扱いかー」
いいえ、もし、魔力が穢れるようなことがあれば、その原因を排除しますとも。

「もう変わることはないですよ。仮に変わったとして、癒される存在だったという事が変わるわけじゃないので、興味を失うことはありませんよ」

それから、5年の間、色んなことを教え、教わりつつ過ごし、私は契約期間を終えて、去りました。

「あっ、ルル。これ御守りです。1回だけ、危機回避できるかもしれません。期待せずに、肌身離さず持っててください」
「期待しちゃいけないのに、肌身離さず持ってないといけないのね、分かったわ」
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