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第二章

リスタート

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「受付嬢さんの動きも、ある程度慣れてきましたわ」
「身体的なスペックが上がりましたからね、むしろ、ある程度でしかないのなら、問題です」

頭をぐしゃっとやられてから、わたくしは、ある問いをされた。
王妃となる未来と、またあの災厄を見る未来の分岐点で、わたくしは、弓を引けるかを。
正確には、楽しい楽しい理想の幻想を歩んだ後に、選ばされた。
悩まなかったと言うと嘘になりますけれど、わたくしは、もう一度弓を引き、国を滅ぼしましたわ。
あの時の決意を、なかったことにしたくなくて。
かくして、わたくしは蘇ることとなりましたの。
ちなみに、聖女様のお連れの荷物は、覚悟がなかったそうで、潰れて死んでおりました。

深淵の精霊。
冥界すらも、その1部でしかないとされる深淵の頂点にいるのがそれですの。
受付嬢さんいわく、名前はアビーと言うらしいですわ。
可愛らしい少女の姿をしておりますが、人では無いので、彼女が気に入らなければ、国が消えてもおかしくないでしょう。
本来なら、災厄の化身と扱われるような存在ですが、受付嬢さんのことを気に入ったようで、積極的に人を害する様なことはしないそうです。
ただ、気に入らないことが起きれば、その力を持って片付けますので前回のような惨状になるわけです。

「スペックは上がっても、扱えるわけではありませんわ、所詮はちょっとだけ才能があっただけの人間ですもの」

────────────────────
世界を壊しかねない力を持つ存在。

冥界の王との契約者。
それは、生きているものに対し、死を与える存在。
究極のところ、生きていれば確実に殺せる存在。
生物がいなくなれば、当然世界は崩壊する。

魅了の悪魔。
それは、言葉を理解できるものを堕とす存在。
もし破滅を心から願う者が、それであったなら、世界は間違いなく崩壊する。

精霊。
それは、自然と共にある意思ある力。
気まぐれに振るわれる力は、時に世界を変える程の影響力を持つ。

深淵の精霊。
それは、他の精霊と違い、深淵を統べる者。
それの気分次第で、世界は崩壊する。

何故、これほどまでに、世界を崩壊させる力を持つ者が存在しているのか、そこには必ず、意味がある。

「と言うのが、私が聖女として派遣されてきた中で得たものです。お姉様」
「貴女の姉になったつもりはありませんけれど、確かに何かしらの意図を感じますわね。本来なら、何度も世界が、いえ、違いますわね。わたくし達、人間が生き残れているはずがありませんわ」

世界の疑問に気づく2人は、それでも、交わらない。

「では、お姉様。私は教会に戻ります。追放されたら、拾ってください」
「わたくしが生きているかも分かりませんのに、確約できませんわ」
かくして、2人の少女が、世界に挑む。
それぞれのやり方で……
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