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第一章
信仰は時に……
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軽い説明をして、私は街に戻りました。
ついでに、近くに待機してらした受付嬢さんに護衛を頼んでおきます。
アイリスさんの、ですけれど。
私は速やかに、どちらかだけでも片付けませんと。
────────────────
「あのー、なんで私はここで待機なんでしょうか」
「……本気で聞いてるんなら殴り飛ばします」
この受付嬢さん、めちゃくちゃ怖いんですけど。
「……エミリーさんでも、死ぬと思ってるんだろうなってことだけは分かります」
でなければ、さよならなんて言わないでしょうし。
「この街には、魅了の悪魔がいます」
魅了の悪魔、確か生まれ持ってしまった洗脳の魔法をコントロール出来ない人間のことですね。
意図せず周りを洗脳してしまうので、討伐対象になることもあると聞きます。
ただ、本人に悪意があるものなら、自身の力に気付き、コントロールして力を利用するため、実は問題となりません。
つまり、魅了の悪魔は総じて神職者に多いのです。
特に、信仰心と信念の強い方に。
「それと特殊個体のリッチとどのような関係が?」
「信仰というのは、時に怪物を産むんですよ」
なんの事か説明を求めようとした時に、それは起きた。
いや、起きたというのは語弊があるだろう。
「引き取って貰えますか、ゴミですけれど」
何をされたのかだけはよく分かるそれは、変わり果てたエミリーさんで、ゴミと言い放ったそれは、大聖女と呼ばれる化け物だった。
「大聖女様が自ら運ばれるとは、ありがたく頂戴致します」
「良い判断です。それは我らが仕えし、神ハデス様を不敬にも害なそうとした為、浄化の儀を行い、その魂を捧げてもらいました。抜け殻たるそれに罪はありませんがゴミです。燃やして捨てることをオススメします」
その身を汚し尽くしたかのような状態にしておいて、浄化ですか?
こんなのが、大聖女?
感情の導くまま、私は──
目が覚めた時、私は見知らぬ部屋の天井だけを見ることが出来る状態で拘束されていた。
「危ないところだったわ。まったく、考え無しに行動しないでくれるかしら?」
あの後、私は大聖女に殴りかかろうとする前に意識を落とされ、受付嬢さんの持っていた転移の指輪であの場を後にして、暴れないようにと拘束して放置されたらしい。
「エミリーさんは」
「死んでますよ。体液まみれでしたから、街中の男達に浄化の儀とやらをされたのでしょう。それが終わった後に、リッチに殺されたようです。逆ならまだ良かったでしょうけど」
何で、そんなことに……
「これは、私の失態でもあります。まさか、大聖女様が魅了の悪魔だったとは思いませんでした。彼女が、自分と同じ魅了の悪魔を各地に派遣しているのでしょう。大聖女様が信仰しているのは、裁きの使者、ハデスですから」
裁きの使者? そんなものがなんですか。
冥王の契約者のエミリーさんが負けるようなことは無いはずです。
「エミリー様は、冥王の契約者の中でも特殊な方で、冥王の力を持っているわけではなく、その都度借り受ける形です。街中が魅了の悪魔の洗脳に落ちているとは分かっても、まさか複数の魅了の悪魔に、信仰を手にしたリッチを相手取る事になるとは思ってなかったのでしょう。ましてや、1人は大聖女です。彼女の聖域と支援魔法を敵に回して勝てるほどの力を借り受けていなかったのでしょう。エミリー様は、事前にどの程度の力を借りるか指定しないといけませんから」
街中が大聖女様の為の空間になっている中での、戦闘行為は、強制的に産み出された信仰という名の盾の前に押し潰されたと言うことですか。
「それじゃあ、あの街は1つの要塞みたいな事になってて、手が出せないって事じゃないですか! そんなことって……」
「いいえ、あの街は消えます。エミリー様はその命を落としましたから、本物の冥王が動きますので」
エミリー様は、死後、その魂と肉体を余すことなく捧げると冥王と呼ばれる死神に盟約を交わしたのだから。
そう告げられた言葉を理解する間もなく、リンカナーンと言う街は跡形もなく消え去った。
ついでに、近くに待機してらした受付嬢さんに護衛を頼んでおきます。
アイリスさんの、ですけれど。
私は速やかに、どちらかだけでも片付けませんと。
────────────────
「あのー、なんで私はここで待機なんでしょうか」
「……本気で聞いてるんなら殴り飛ばします」
この受付嬢さん、めちゃくちゃ怖いんですけど。
「……エミリーさんでも、死ぬと思ってるんだろうなってことだけは分かります」
でなければ、さよならなんて言わないでしょうし。
「この街には、魅了の悪魔がいます」
魅了の悪魔、確か生まれ持ってしまった洗脳の魔法をコントロール出来ない人間のことですね。
意図せず周りを洗脳してしまうので、討伐対象になることもあると聞きます。
ただ、本人に悪意があるものなら、自身の力に気付き、コントロールして力を利用するため、実は問題となりません。
つまり、魅了の悪魔は総じて神職者に多いのです。
特に、信仰心と信念の強い方に。
「それと特殊個体のリッチとどのような関係が?」
「信仰というのは、時に怪物を産むんですよ」
なんの事か説明を求めようとした時に、それは起きた。
いや、起きたというのは語弊があるだろう。
「引き取って貰えますか、ゴミですけれど」
何をされたのかだけはよく分かるそれは、変わり果てたエミリーさんで、ゴミと言い放ったそれは、大聖女と呼ばれる化け物だった。
「大聖女様が自ら運ばれるとは、ありがたく頂戴致します」
「良い判断です。それは我らが仕えし、神ハデス様を不敬にも害なそうとした為、浄化の儀を行い、その魂を捧げてもらいました。抜け殻たるそれに罪はありませんがゴミです。燃やして捨てることをオススメします」
その身を汚し尽くしたかのような状態にしておいて、浄化ですか?
こんなのが、大聖女?
感情の導くまま、私は──
目が覚めた時、私は見知らぬ部屋の天井だけを見ることが出来る状態で拘束されていた。
「危ないところだったわ。まったく、考え無しに行動しないでくれるかしら?」
あの後、私は大聖女に殴りかかろうとする前に意識を落とされ、受付嬢さんの持っていた転移の指輪であの場を後にして、暴れないようにと拘束して放置されたらしい。
「エミリーさんは」
「死んでますよ。体液まみれでしたから、街中の男達に浄化の儀とやらをされたのでしょう。それが終わった後に、リッチに殺されたようです。逆ならまだ良かったでしょうけど」
何で、そんなことに……
「これは、私の失態でもあります。まさか、大聖女様が魅了の悪魔だったとは思いませんでした。彼女が、自分と同じ魅了の悪魔を各地に派遣しているのでしょう。大聖女様が信仰しているのは、裁きの使者、ハデスですから」
裁きの使者? そんなものがなんですか。
冥王の契約者のエミリーさんが負けるようなことは無いはずです。
「エミリー様は、冥王の契約者の中でも特殊な方で、冥王の力を持っているわけではなく、その都度借り受ける形です。街中が魅了の悪魔の洗脳に落ちているとは分かっても、まさか複数の魅了の悪魔に、信仰を手にしたリッチを相手取る事になるとは思ってなかったのでしょう。ましてや、1人は大聖女です。彼女の聖域と支援魔法を敵に回して勝てるほどの力を借り受けていなかったのでしょう。エミリー様は、事前にどの程度の力を借りるか指定しないといけませんから」
街中が大聖女様の為の空間になっている中での、戦闘行為は、強制的に産み出された信仰という名の盾の前に押し潰されたと言うことですか。
「それじゃあ、あの街は1つの要塞みたいな事になってて、手が出せないって事じゃないですか! そんなことって……」
「いいえ、あの街は消えます。エミリー様はその命を落としましたから、本物の冥王が動きますので」
エミリー様は、死後、その魂と肉体を余すことなく捧げると冥王と呼ばれる死神に盟約を交わしたのだから。
そう告げられた言葉を理解する間もなく、リンカナーンと言う街は跡形もなく消え去った。
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