勇者置き去りの案内人

雪蟻

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第3章

☆保護者、弱点を突かれる

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ミアを連れて帰ったあとは、なかなか大変な時間だった。
というか、ギルドが半壊した。
ギルマス強いじゃないですか、焦りましたよ。
そんな大騒動も、10年も経てば終わるもので、今は、リリアやミアと共に、強くなりすぎちゃった魔物を間引きしております。
魔力の消費と再生のサイクルを加速させておりますので、私は無限に魔法が撃てます。
どんな敵も余裕ですね。
無限に撃てますからね。
「君か、この世界の魔王というのは、随分と可愛らしい子供だとは思わなかったが、仕方ない、死ぬといい」
振り下ろされるは、刀ですね。
そんな棒を振るように使っても切れませんよ。
なんてことを思いつつ必死に避けますが、ええ、当たったら死にます。
「なんで避けるの?」
とリリアに確認を取っているミアに安心しつつ、避け続けます。
さすがは傍観者の神。
私の弱点をよく知っております。
唯一、私が好きに扱えない循環が、体内を巡る血液の循環です。
これに関してだけ、私は瞬時に循環させてしまう。
例えば毒物を摂取したなら、その場で全身に回る。
例えば怪我をしたなら、その後に訪れる変化の最後が瞬時に訪れる。
例えば、今みたいに、腕を切り落とされれば、そこから失う血液の最大量が一瞬でなくなる。
つまり、即死する。

「あっ」
そんな言葉と共に私即死です。
やってしまいましたね、ちょっと油断してしまいました。

「良いのか? お主が望むなら、あやつらは生き返るが」
私が死んだあと、あっさりとリリアとミアは殺されました。
まぁ、あれだけ慌てていれば、そうなることでしょう。
高々、1人やられた程度で取り乱すとはいけませんね。
そして今、私は威厳のある老人のような声を出す神と呼ばれる存在に救い上げられております。
「なぜ生き返らせる必要が? あの子たちは、死んだ。それだけです」
あの場を逃げさえすれば、死なずに済んだのを自ら台無しにしただけである。
「人の心が宿ったとばかり思っておったのだがな」
「リリアの母である自覚はありますし、そのように生きてきましたが、私はスキルです。それによって生まれた意思ある存在なだけ、こうして、神の真似事ができる程度には稀有な存在ではあるのでしょうが、それだけなのです」
私はできることをした、そのために全力を尽くした、心とやらを尽くした。
その結果なら、曲げてはならない。
「神にはならんのか?」
「嫌ですよ、面倒です。私はリリィとしてこれからも存在するだけです」
スキルとして、リリィとして、願わくば冒険者のような生活を永遠と続けていきたい。
「そうか、ならばある世界を攻略してくるとよかろう。作ったはいいが、管理もできずゴミ箱のようになっておるでな」
「面白そうですね、さっそく向かいます」
循環は神の権能になっているそうなので、預けていくことにする。
「ところでなのだが、なぜ年端もいかぬ少女の姿をとるのだ? 元となったリリーシャとやらは、もう少し女性らしい姿であったと記憶しておるが?」
「この姿の女を伴侶にしたがる物好きはいないでしょう? 欲情する変態はいるかもしれませんが、愛し、共に生きることを望む阿呆はいないはずです。母にも妻にもなるつもりはありませんからね、庇護対象となりやすい姿の方が好都合です」

番だと選ばれてしまえば見た目など些細なものであるのだがな。

とこの時、言われていたそうですが、聞こえていなかった私は、向かう世界で面倒なことになって頭を抱えることになったのでした。
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