はじまり

天鳥そら

文字の大きさ
上 下
104 / 159

第二部 はじまりは美しい17

しおりを挟む
~忘れえぬ記憶~ 


「驚いたわ」 

「僕もだ」 

自然に歌が途切れるまで歌ってから、二人は顔を見合わせました。 
お互い驚きの表情を隠せません。 

「歌を習ったことは?」 

「ないよ。君は?」 

私もよと口の中で呟いて、じっとリクの顔をみつめました。 
リクの瞳の奥を覗き込むようにみつめていると、 
ふと何かが頭の中をよぎりました。 

  (大丈夫、必ず迎えに行くから) 

この言葉だけが、風が吹き抜けるように駆け抜けていきました。 
それと、同時に誰かの顔が浮かんだのですが、あまりに 
一瞬のできごとだったので、わからなくなってしまいました。 

もう一度、頭の中に浮かんだ映像を捕まえようと 
こめかみに手をあてて考えます。 
それでもやっぱりわかりません。 

とても懐かしい大切な記憶だったように思えるのですが、 
ただの気のせいのようにも思えました。 

「そろそろ、はいろうか」 

お腹すいたし、と笑って手を差し出されて、ルエラはリクの手を取ります。 
そのあたたかい手の感触が、知っているような気がしました。 

心臓がドキドキと音をたて、何かが体の奥から飛び出してきそうな気がします。 
だんだん、そんなことを考える自分が少しおかしくなりました。 
ただの気にしすぎだと思い、ルエラは頭から不思議な感覚を振り払います。 

「そうね、私もお腹ぺこぺこだわ」 

くすりと笑い、もう昇りきった太陽を背にして、 
屋敷の中へと入りました。 

薄闇を振り払い、青々と繁った森を明るく照らします。 
金の木漏れ日が降り注ぎ、爽やかな優しい風が吹き始めました。 



つづく 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...