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第二部 はじまりは美しい17
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~忘れえぬ記憶~
「驚いたわ」
「僕もだ」
自然に歌が途切れるまで歌ってから、二人は顔を見合わせました。
お互い驚きの表情を隠せません。
「歌を習ったことは?」
「ないよ。君は?」
私もよと口の中で呟いて、じっとリクの顔をみつめました。
リクの瞳の奥を覗き込むようにみつめていると、
ふと何かが頭の中をよぎりました。
(大丈夫、必ず迎えに行くから)
この言葉だけが、風が吹き抜けるように駆け抜けていきました。
それと、同時に誰かの顔が浮かんだのですが、あまりに
一瞬のできごとだったので、わからなくなってしまいました。
もう一度、頭の中に浮かんだ映像を捕まえようと
こめかみに手をあてて考えます。
それでもやっぱりわかりません。
とても懐かしい大切な記憶だったように思えるのですが、
ただの気のせいのようにも思えました。
「そろそろ、はいろうか」
お腹すいたし、と笑って手を差し出されて、ルエラはリクの手を取ります。
そのあたたかい手の感触が、知っているような気がしました。
心臓がドキドキと音をたて、何かが体の奥から飛び出してきそうな気がします。
だんだん、そんなことを考える自分が少しおかしくなりました。
ただの気にしすぎだと思い、ルエラは頭から不思議な感覚を振り払います。
「そうね、私もお腹ぺこぺこだわ」
くすりと笑い、もう昇りきった太陽を背にして、
屋敷の中へと入りました。
薄闇を振り払い、青々と繁った森を明るく照らします。
金の木漏れ日が降り注ぎ、爽やかな優しい風が吹き始めました。
つづく
「驚いたわ」
「僕もだ」
自然に歌が途切れるまで歌ってから、二人は顔を見合わせました。
お互い驚きの表情を隠せません。
「歌を習ったことは?」
「ないよ。君は?」
私もよと口の中で呟いて、じっとリクの顔をみつめました。
リクの瞳の奥を覗き込むようにみつめていると、
ふと何かが頭の中をよぎりました。
(大丈夫、必ず迎えに行くから)
この言葉だけが、風が吹き抜けるように駆け抜けていきました。
それと、同時に誰かの顔が浮かんだのですが、あまりに
一瞬のできごとだったので、わからなくなってしまいました。
もう一度、頭の中に浮かんだ映像を捕まえようと
こめかみに手をあてて考えます。
それでもやっぱりわかりません。
とても懐かしい大切な記憶だったように思えるのですが、
ただの気のせいのようにも思えました。
「そろそろ、はいろうか」
お腹すいたし、と笑って手を差し出されて、ルエラはリクの手を取ります。
そのあたたかい手の感触が、知っているような気がしました。
心臓がドキドキと音をたて、何かが体の奥から飛び出してきそうな気がします。
だんだん、そんなことを考える自分が少しおかしくなりました。
ただの気にしすぎだと思い、ルエラは頭から不思議な感覚を振り払います。
「そうね、私もお腹ぺこぺこだわ」
くすりと笑い、もう昇りきった太陽を背にして、
屋敷の中へと入りました。
薄闇を振り払い、青々と繁った森を明るく照らします。
金の木漏れ日が降り注ぎ、爽やかな優しい風が吹き始めました。
つづく
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