はじまり

天鳥そら

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第二部 はじまり美しい8

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~朝~


太陽が昇り、朝がきました。廊下の窓から朝日がさしこみ、 
海から吹く風で木々がざわざわと枝を揺らす音をたてます。 

まだ、目が覚めきらないぼんやりとした表情で、 
“美しいひと”のお父様が廊下を歩き、談話室へと向かいました。 

暖炉の暖かい火にあたり、ゆっくりとくつろぎたいと思ったのです。 
談話室への扉を開けようとして、中から楽しそうな笑い声が聞こえてきました。 

はて、誰だろうと首を傾げ、そっと扉を開きました。 
こそこそするつもりはなかったものの、静かに中を伺います。 

二人の若い男女が、暖炉の前で話している姿がみえました。 
二人が誰かわかった途端、一気に目が覚めて、静かに扉を閉じました。 
暖炉でくつろぐことはやめ、書斎へと向かいます。 

軽くノックをして、返事も待たずに中へと入りました。 
書斎室では、この屋敷の主人が本を読みながら、 
朝のひとときを過ごしていました。 

「君も飲むかい?」 

屋敷の主人は、ポットをかかげ、明るく笑いました。 
それでは、いただこうとホッとしたように笑い、 
主人の近くの椅子に腰をおろしました。 

「談話室にはは入れなかっただろう?」 

ティカーップに、ゆっくりお茶を注ぎます。 
新緑の葉のような優しい色合いと、みずみずしい茶の香りに 
心が和みました。 
まだ、あたたかいお茶は、カップに手をあてただけでも 
じんわりと体をあたためます。 
一口飲んで、ほっと息をつきました。 

「驚いたよ」 

ルエラがあんなに笑うなんて、思いもしなかったとぽつりと呟きました。 

「安心したかい?」 

いたずらっぽく笑う屋敷の主人をちらりとみて、 
まあ、と口ごもりました。 

なんとも複雑そうな表情の友人をみて、屋敷の主人は、 
声をあげて笑いました。 


つづく 
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