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第二部はじまりは美しい3
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~夜明け~
明け方には、嵐もおさまり雲の切れ間から太陽の光がさしこみました。
太陽が港町を明るく照らすものの、海岸沿いはひどい有り様でした。
船は流され、建物は削られ、町の人々は疲弊しきっていました。
それでも朝はやってきます。この町にはそれほど大きくはないものの、
立派な教会がありました。
建物のてっぺんに、立派な金色の鐘がついています。
その鐘が、リンゴーン…リンゴーンと音をたてて、始まりの『刻』を知らせました。
鐘の音は、港町全体に響き渡ります。誰もが、この鐘の音を聞いて目を覚まし、
今日という1日を始めるのでした。
この鐘の音は、もちろん美しい立派なお屋敷に住む、“美しいひと”にも聞こえました。
あたたかいベッドの中で目を覚ました“美しいひと”は、
カーテンの隙間からもれる眩しい光に目を細めました。
もう、朝だなとは思いましたが、あたたかいベッドがあまりにも心地よかったので、
布団の中にもぐり込んでしまいました。
暖炉には、いつのまにか火が灯され、赤々と燃えています。
“美しいひと”の部屋を優しくゆっくりと暖炉の火は、あたためていきます。
そのことには、全く気がつかずに“美しいひと”はまた寝入ってしまいました。
夢の中へと入り込む前に、“美しいひと”はちらりと思いました。
『今日は、一体どんな1日になるかしら?』
“美しいひと”が寝ている間に、太陽は輝きを増し、どんどん空高くへと昇っていきます。
“美しいひと”をおこしにきたのでしょうか。
部屋の外からなんべんも、扉を叩く音がしました。
つづく
明け方には、嵐もおさまり雲の切れ間から太陽の光がさしこみました。
太陽が港町を明るく照らすものの、海岸沿いはひどい有り様でした。
船は流され、建物は削られ、町の人々は疲弊しきっていました。
それでも朝はやってきます。この町にはそれほど大きくはないものの、
立派な教会がありました。
建物のてっぺんに、立派な金色の鐘がついています。
その鐘が、リンゴーン…リンゴーンと音をたてて、始まりの『刻』を知らせました。
鐘の音は、港町全体に響き渡ります。誰もが、この鐘の音を聞いて目を覚まし、
今日という1日を始めるのでした。
この鐘の音は、もちろん美しい立派なお屋敷に住む、“美しいひと”にも聞こえました。
あたたかいベッドの中で目を覚ました“美しいひと”は、
カーテンの隙間からもれる眩しい光に目を細めました。
もう、朝だなとは思いましたが、あたたかいベッドがあまりにも心地よかったので、
布団の中にもぐり込んでしまいました。
暖炉には、いつのまにか火が灯され、赤々と燃えています。
“美しいひと”の部屋を優しくゆっくりと暖炉の火は、あたためていきます。
そのことには、全く気がつかずに“美しいひと”はまた寝入ってしまいました。
夢の中へと入り込む前に、“美しいひと”はちらりと思いました。
『今日は、一体どんな1日になるかしら?』
“美しいひと”が寝ている間に、太陽は輝きを増し、どんどん空高くへと昇っていきます。
“美しいひと”をおこしにきたのでしょうか。
部屋の外からなんべんも、扉を叩く音がしました。
つづく
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